クアラルンプール二日目

特に何も予定はなかったのでのんびり起きて、ホテルの一階に入っていたWhite Coffeeで朝食。

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Ipoh Hor Funも美味しかった。

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とりあえずクアラルンプールのビアバーでビールでも飲もうかということで、軽く場所を確認して行ってみた。

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12時まで開店しないとのことなのでその周辺を見て歩く。

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こういう古い建物と新しい建物が混在した様子がとても都市らしくて良い。

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oBike発見。初回は普通に使えたけど、2回目以降はbluetoothの接続がうまくいかないのか解錠できず断念。

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とりあえず最初は乗れたので、どこか行こうと思って自転車に乗っていたらタワーに着いた。

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上まで上がると景色がすばらしい。360度撮影して満足。

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丁度よい時間になったので、ビール屋さんへ。ベルギーの蜂蜜ビール。

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ナシゴレン

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ビールをもう一杯。

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最後に店内に入ったら、なかなか雰囲気良い感じ。

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Grabでホテルまで戻り、バスターミナルへ。

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無駄にとてもきれい

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往路と似たようなインターチェンジっぽいところで晩御飯

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またしても国境越えで3時間位かかり、やっぱりこのルートはないなあという思いを新たにした。そんなわけで、週末クアラルンプールの旅終了。Miku Expo Malaysiaに行けて満足。

クアラルンプール初日・Miku Expo Malaysia

初音ミクのイベントがマレーシアであると知り、週末ならちょっと行って来れそうだなと思ってチケットを購入した。今年で10周年を迎えるボーカロイド初音ミクについては、自分の出身地である札幌のクリプトン・フューチャー・メディアが手がけているということもあって名前は知っていたが、ほとんど聞いたことがなかったし、あまり関心もなかった。1年前までは。

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7時ゴールデンマイルコンプレックス発のバスに乗る。バスは3列シートでまあまあ広いけど電源やWiFiはない。この辺は会社によりけりなんだと思う。Causewayの国境ではなくSecond linkの国境から出国した。土曜の朝ということもありわりと渋滞していて、出入国でも待たされたので、マレーシアに入国したときは既に10時近かった。Yong Pengというパーキングエリアっぽいところで30分休憩したのち、再度出発。

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シンガポールローミングSIMを使おうと思っていたのだが、バスで移動中とか人混みとかネットにつながらないことが多かった。中国や日本からシンガポールローミングしたときは快適だったので、何か条件が違うのかも。いまいち原因が特定できてないけれども、ローミングの際に使用されるMycellって会社のインフラの問題か、自分の環境に何らかの通信制限があるのか、そのへんのところを要調査。そんなわけで、今回のバスをWiFi使えるバスにしたら良かったかもと思っている。

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クアラルンプールに到着した時間は既に15時近かった。もう物販がはじまって、その他いくつかイベントも開催されているようだった。その前にホテルにチェックイン。ホテルはバスターミナルから徒歩圏内の場所に取ったので、距離的には全然遠くないのだが、クアラルンプールは極めて車社会で道路が広く、道路を渡る手段が限られていて、歩道橋と歩道橋をつないでいくゲームみたいになる。でも最初はそんなこと知らなくて、地図見て最短距離を突っ切ろうとして阻まれてしまうのだった。こういう経験はよくある。だいたいいつも初めていく都市でも頭に方位磁針のようなベクトルが思い浮かんでいて、最終的にそっちの方向なんだから直進みたいに地図を見なくても正しい方向に進めるんだけど、川とか工事現場とか巨大施設とか道路とかに阻まれる。一度行けば脳内地図が更新されて大丈夫になるんだけど、こういう人が歩ける道が限定されている所を初見でクリアするのはなかなか大変。

宿にチェックインして、Grab予約して、現地に向かった。シンガポールアカウントでも問題なく使えるけど、Grab payという決済手段が使えなくなっているので、現金で払った。ちなみにどこでも同じだけど、ピックアップポイントがわかりやすい方がタクシーがつかまりやすい。

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現地では既に店がいくつか出ていたが、許可を取らずに勝手に販売していたものと思われる。マレーシア商売やる気ないかと思ったけど、案外商魂たくましい。そして会場の正規のものを扱っているところに着いた。Tシャツはいくつか売り切れていたが、キンブレ(キングブレード)はあったので購入。

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いまいち色の規則性がよくわからない。でも今回コンサートで実際に使ってみて、徐々に手際よく色を変えられるようになった。慣れって大事だな。

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ちなみにVRゲームが展示してあったり、等身大のドールが置いてあったり、小さいながらもいろいろ頑張っているのが感じられた。

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行列に並んで、会場入りして、コンサートである。19時から前座のようなマレーシアの人たちのステージがあって、20時から初音ミクコンサート。最初のラップの人たちはよくわかんなかったけど、2番目の女性ボーカルの方はなかなか良い感じ。その間で場をつなぐ人はなかなかプロフェッショナルな感じだった。

そしてMikuExpoである。自分が座ったのは正面の後方のカテゴリ1なのだが、正直言って驚いた。ステージの上でミクさん(やはりここはさん付けすべきだろう)が走り回っているわけで。前の2組の人たちと同様に、ステージを上で自在に動き回っていて、ああここにも21世紀がやってきていると感じた。当日の映像が公開されていた。


Hatsune Miku Expo 2017 in Malaysia【Full Live Concert】in Kuala Lumpur at Axiata Arena【720pHD】

千本桜から始まるこのコンサート、バックバンドも当然プロフェッショナルでとにかくかっこいい。マレーシアでみんなそんなに訓練されていないからかキンブレの色や動きは日本と比べてバラバラなんだろうけど、それでもそれなりの一体感があって、とても貴重な体験ができた。ミクカラーというと、髪の毛のような薄い黄緑なのか、ネギみたいなやや濃い黄緑なのか、けっこうバラけるのだが、それはそれで見ていて面白い。クリプトンの他のボカロキャラクターも出てくるのだが、鏡音リン・レンで異様に盛り上がって、現地での人気が伝わってきた。

個人的に感慨深かったのはJust be friends by 巡音ルカ。元々この曲のコンサートをYoutube動画を見て、なんでこの人達投影映像にこんなに盛り上がっているんだろうと疑問に思ったのだが、実際にコンサートを体験するとそんな疑問は一瞬で氷解する。ピンクは一色しかないのでみんな同じピンクにしてキンブレを振る。下からすくい上げるように振ったり、上から前後に振ったり、左右に振ったり。ステージには人がいるし、ぎこちなさとは無縁の軽やかな足取りで完璧な歌と振り付けを披露する。バックバンドもかっこいいし、とにかく完成度が高い。ここに来るまでにどれほど多くの人が関わったのか、曲を作り、調教をし、3Dモデルをつくり、振り付けをし、そして会場で最高な状態で見せるようにする。想像しただけで感謝の念が禁じ得ない。

www.youtube.com

もう一曲選ぶとすれば、アンコールでかかった「歌に形はないけれど」が良かった。この1年間、元々はVRMikulusを始めて、twitterでミク廃の方々をfollowし始めて、ああなんてこの人達は幸せそうなんだろうと日々感じていた。Mikulusの中で大画面でボカロ曲を聞くと妙なシンクロ感があって最高なので病みつきになったりして、最初は抵抗のあったボカロ曲に耳が慣れていった。少しずつ少しずつ耳がボカロ耳になっていったので楽しめたのかもしれない。

初めて参加したコンサートだが、作り手のこだわりが非常に感じられるとても良いものだった。投影映像なので、一瞬で服が変わったり人が入れ替わったりするのもとても面白い。それに合わせて訓練された人々が色を切り替えて棒を振るわけである。人間のコンサートではできない表現や体験がここにはあった。

帰りはなかなかタクシーがつかまらなかったが、駅まで歩いて電車で2駅だったのでわりとすんなり帰ってこれた。ちなみに日本から来ている大量のミク廃の方々は2次会で街に繰り出していたようである。

ともかく、このMiku Expo Malaysiaとても満足したので、またコンサートに行きたい。Youtubeの映像で見るのと全くの別物なので、これは行かなきゃわかんないと正直思う。

ジョン・ハンケ 世界をめぐる冒険

初めてGoogle Earthを体験したとき、夢中になって色んな場所を見に行ったことを覚えている。そんなGoogle Earth(買収前の名称はKeyhole)を開発し、その後Ingressを作った人の本なので、是非読みたいと思って買った。序文からして既に期待させるものがある。

この本が、新しい目で世界を見る、ちいさなインスピレーションになりますように。そして、それがあなたに、外に出て、近所やおとずれた土地の隠された街かどを探索したり、旅路での新たな出会いをもたらしてくれたらと願っています。

Ingressはまさにゲームの力で引きこもりが外で楽しく遊べるものだったりするので、その思想の一端をこの本から垣間見ることができてよかった。

このまま将来どうなるのかわからないゲーム会社で働くか、高額の報酬を求めて転職するか。

言いかえるなら、好きなことをするか、いい暮らしをするために好きでもない仕事を選ぶか、です。

よく言われる言葉だけど、誰しもどこかでこういう岐路に立つのかもしれない。

彼らはKeyholeの技術がもたらしうるものについて思案し、興味深く思ってくれました。

わたしたちは「世界中の情報を整理する」ことをミッションとするグーグルとのミーティング、そしてKeyhole社内での議論をかさねていきました。

こうしてみるとGoogleのミッションにとても良くマッチしている。

それにしてもgoogle mapよりもgoogle earthの方が先だったのはすっかり忘れていた。

そののち、1年ほど経ったころ、グーグルは、デンマーク人のラスムッセン兄弟が開発したマッピング技術を買収します。

のちのグーグルマップにつながるテクノロジーです。

あのぬるぬる動くインターフェースがなかったらスマートフォンはこんなに普及していなかったかもしれない。

道路標識や信号が破壊されたあとで、ヘリコプターによる救助活動をおこなっていたレスキュー隊からは「グーグルアースが救助を待つひとびとの正確な位置を示してくれたおかげで、彼らを救うことができました。ありがとう」というメッセージをもらいました。

綺麗事に聞こえるかもしれないけど、自分もこういう形で直接貢献できることをしたいと感じた。

この経験をとおして「わたしたちの仕事はたんなるお金儲けではなく、世界に貢献できるものなのだ」と考えるようになったのです。

ハリケーンカトリーナをめぐるGeoチームの行動は、フィル・ジャクソンの行っていたcontinuous pull 高い目標を掲げることがチームを結束させ、パフォーマンスを最大化する―の重要性を強く思い起こさせるものでした。

pushではなく絶えずpullなのだというのは、並行して読んでいる9プリンシプルズという本の内容にも通じるものがある。

序文の話にも通じるが、人々が外に出て動き回るという点で一貫している。

つまり、この世界をよくするためには、ひとびとがもっと外に出て動きまわり、人間同士がつながり、そしてひとびとがそれぞれ、身のまわりにどんなものがあるのかをよく知ればいいのです。

このモバイルならではのアプリという視点は大事だなと思った。

スマートフォンが登場してしばらくのあいだは、ブラウザやメールをはじめ、PC用のアプリケーションをスマホに載せただけのようなものが大半でした。

はじめからあたらしいモバイル端末向けに作られたものであり、「モバイルならでは」「そのデバイスならでは」と感じさせるアプリでなくてはならないのです。

やはり位置情報だったり、決済がその場で完結することだったりするのだろう。今あるものを前提として、次のステップがあるように思えてならない。

MMO体験、すなわちソーシャルなチームをつくり、協力してゲームをプレイすることを、現実世界に持ち出したのです。

The World Is The Game 世界がゲームの舞台である

Move to Play 動いて遊ぶ

Social 現実世界の友情をつくる

Urban Exploration 新たな視点から街を見る

「新しい目で、新しい世界を見る」

なんとなく思っていたものがきちんと言語化されていてすばらしい。ジオキャッシングとか代替現実ゲームとか昔からいろいろあるけど、これだけスマホの性能が上がり通信インフラが整いバッテリ稼働時間が伸びると一気に可能性が広がるわけで、今後もいろいろなアプローチができそうな気がする。技術的に次のステップはゴーグル型のARMRになんだろうな。

エージェントたちには、バーチャルに遠隔地の情報を知るだけでなく、実際に足を使って、身のまわりのことを感じてもらいたいのです。

その認知や行動に、変化をもたらしたい。

バーチャルな空間を変化させるのではなく、現実をもっと心惹かれるものに、もっとミステリアスに変化させたいのです。

 

実際のところゲームと現実の境界は既に溶け合っている気がしなくもない。Ingressでポータルを素早く見つけることに慣れると、現実の世界でもシェア自転車があっさり見つけられるようになる。この2つの行為にそれほど大きな差異はないように思う。

『イングレス』の根本にあるフィロソフィーは、忘れられた空間に人を呼びこみ、そのことによってわすれられた空間がまた栄えるように、というものです。

わたしたちが考えたアイデアは、スーパーマーケットや映画館などのポータルには、震災でうしなわれてしまったもともとの光景の写真を載せ、来訪したエージェントがありし日の石巻追体験できるようにすることでした。

「キオク(記憶)のポータル」です。

このへんは自分が360度写真や動画を撮る理由に通じるものがある。アーカイブという視点はなかなか理解されにくいけど長期的に考えてとても大事だと思っていて、その応用の見せ方をこうして提示するのはすごく良いと思った。

石巻のイベントは、日本の詩人である松尾芭蕉がやはり東北の平泉において「夏草や兵どもが夢の跡」と詠んだときに、眼下の現実と過去の栄華とを重ねあわせて見ていた体験のようなものを、テクノロジーを使ってだれにでもできるようにしたのではないかと、ある日本人に言われました。

実際に見せてしまうのがいいかどうかはなんとも言えないけど、思いを馳せるという行為に対するバリエーションはいくつかあっても良さそう。

『イングレス』は、ほんのわずかながら、一つの直線の上からことなる空間へと移動できるように、あなたを刺激する存在なのです。

いままで生きてきた日常と違うところにも、日常はあります。

過去を再発見し、未来へのヒントを、見つけることができるのです。

そしてそのことが、現在の自分を、それまでとはことなるまたあらたな視点でとらえなおすことを可能にし、いまこの瞬間への集中をうながしてくれるのです。

空間を旅するだけでなく時間を旅することがテクノロジーによって可能になったと考えると興味深い。思いを馳せるのその先から、新しい視点を手に入れる。

ポケモンGOはやったことがないのでよくわからないが、その背景となる話も出ていて興味深い。

ポケモンカンパニーの石原さんが『イングレス』の高レベルエージェントだったこともあって、話はおどろくほど早く進みました。

ファミリー向けで、だれもがたのしめる、物理的に身体を動かせるゲームが理想なのです。

ポケモンGO』はまちがいなく「ゲームには人間の行動を左右する力がある」ことを証明しました。

結論はいつも同じところに落ち着く。

follow your bliss

自分はなにによって満足するのかを心に問いかけ、自分にとってのしあわせを理解し、それにしたがいなさい、と。

あなたの頭にうかんだアイデアがすばらしいものなのかどうかをたしかめるたにには、この世の中に具現化するしかありません。

この本全体を通じて、この人は本当にユーザーが外に出て、色んな人と交流しながら楽しむ世界を求めて、そんなサービスを送り出しているのだなということが非常に伝わってきた。これってある種のオフ会に通じるところがある。普段はオンラインでkeep in touchしながら、ときどき海外のMaker Faireに遊びに行ったり、IVRPAに参加したり、時々日本に遊びに行ったりして、一緒に何かのプロジェクトをやったり、何かを企画したりして、ゲーム感覚で現実を遊ぶ。濃度は濃いほど楽しいみたいな話ではなかろうか。オンラインのゲームは一例に過ぎず、オンラインとオフラインで相乗効果が出る遊びならいいし、世界が遊び倒しがいのある楽しい場所であるということがわかればそれでいい。

そんな感じで、google earthingressの背景にあるものを垣間見るにはとても良い本だった。自分がこれらのどんなところに惹かれたのかもなんとなくわかった。ナイアンティックの今後にも期待している。

ジョン・ハンケ 世界をめぐる冒険 グーグルアースからイングレス、そしてポケモンGOへ

ジョン・ハンケ 世界をめぐる冒険 グーグルアースからイングレス、そしてポケモンGOへ

 

「ハードウェアのシリコンバレー深圳」に学ぶ

2015年と2017年に参加したニコニコ技術部深圳観察会でお世話になったJenesisの藤岡さんの本がついに出た。深圳で自ら中国人を雇って工場を経営するに至る10年間とその後に自社工場での試行錯誤の6年間の計16年間の深圳の製造業との関わりを著したとてもディープな一冊である。

「はじめに」から既にして妙にアジアの熱気が伝わってくる。

さて、それでは本論を始めよう。2001年当時の深圳は出稼ぎ労働者と中国人であふれかえっていた。いわば流れ者たちの世界だ。夜の店も多く、猥雑さと無秩序が色濃く残る世界に私は足を踏み入れた。

序盤から「Che-ez!」なんて懐かしい名前が出てきて驚いた。当時Sonyのデジタルマビカ40万画素フロッピータイプのデジカメ)を使っていた大学生の自分にとって、もっと高画質で数多くの写真をメディア交換なく保存できるトイカメラにはとても注目していたから。

外部の人間にも関わらず、NHJの製品開発を手動するという不思議な関係は約1年間にわたり続いた。こうしてついに新センサーを搭載した「Che-ez!」の次世代機が完成。画素数130万画素へと大きくレベルアップすることで、他社を上回る性能を手に入れた。

まさか藤岡さんが手がけていたとは。ちなみにこの本はディープな話もわかりやすく解説されていてよい。

「白牌」というのはノンブランドを意味する。この場合のノンブランドとは、単に無名メーカーが作ったことを意味するのではない。白紙のノートのように、後から別のブランドが書き込めるという意味だ。

・・・

こうした白牌製品にブランドを書き込む行為が「貼牌」だ。白紙に自分たちのブランドを貼り付けるというわけだ。「白牌/貼牌」を使えば、一切開発、製造することなく、簡単にメーカーになれてしまう。

「そこで私は他社と競合しない貼牌戦略を考えついた」とか、自らの経験がないと絶対書けないような話がたくさん出てきて面白い。それにしてもこれを25歳でやっていたわけで、現在あれだけ貫禄が出るのも納得である。

NHJ時代、私は日本メーカーが開発する最新部品情報を常にチェックしていた。腕時計型テレビのきっかけとなったのは、ソニーのグループ会社が開発したシリコンチューナーだ。当時としては極小の切手サイズでアナログテレビの受信を可能とする一品だ。

こうした新規性の高い部品が出ると、私はいつも「これで何が作れるか」を考えた。

イデアを思いつくだけでなく、形にするところまで遂行するところに凄みを感じる。

例えば2,500発家電では、「コンテナ発注」という方式を取り入れた。「デジタルカメラ1,000台」というような契約ではなく、「コンテナ1個分」という形式で契約するのだ。海上物流はコンテナ単位で値段が決まる。1,000台で契約したとしても、もしそれがコンテナ1つに収まらずに2つに分けたら輸送費が2倍になってしまう。

こういう合理的な考え方の例が実に具体的に書いてあってとても面白い。 

無茶ぶりされると燃えるタチなのだ。実はNHJ時代も自分のオリジナル企画商品よりも、厳しい要件での受託製造のほうが燃えるという部分はあった。

この性格が今の受託工場につながっていると思うと興味深い。自分の性格を知り、パフォーマンスを最大化するような選択をすることの大切を実感する。

公板・公模の話も興味深いが、パキスタンの携帯の話がとても面白かった。

携帯電話には1台ごとにIMEIという固有の製造番号が割り当てられている。ところがその山塞携帯は同一機種すべてに同じ製造番号が割り当てられているのだ。盗まれた携帯電話のIMEIを使って通信ネットワークに接続しないようにキャリアが設定したところ、数千台がとばっちりを受けてしまったというわけだ。

そして工場を立ち上げる藤岡さん。

運が良かったのは、起業した2011年に地デジ終了という大イベントがあったことだ。日本では地デジチューナーの在庫が払底し、作れば作るだけ売れるという特需が到来していた。「今すぐ地デジチューナーが欲しい」という注文が飛び込むと、私はすぐに中国の工場を抑えた。

このあたりは映像で見てみたい。

説得に応じてくれないというならば、残る手段は金しかない。私は銀行へと走った。下ろせるだけの金を引き出して寮に戻った。ボーナスとしてこの金を支払う。だからどうか手伝ってほしいと頼み込んだ。

BOM(Bill Of Materials、部品表)の話は見学に行ったときに聞いていたが、こうして全体像を把握してから改めてみるとどれほど重大なことなのかようやく腑に落ちた。

この電話番号付きBOMを手にして、私はようやく深圳のエコシステムの秘密を悟ったのだった。

・・・

方案公司は単に基板設計を担っているだけではなく、ガイドの役割を果たしている。本来ならばきわめて難易度の高いはずの深圳エコシステムの活用を容易なものへと変えてくれる。

その他、クーデターの話や職場の前で張り込みをする話など、実に密度が濃い。

そうした日本のスタートアップにアドバイスしたいのは、ハードウェアの性能は必要最小限に抑えることだ。主体であるサービス、コンテンツ、ビジネスモデル(いわゆるコト)を実現することに注力するためには、デバイスをきわめてシンプルにするべきである。スタートアップがハードウェアで差別化することは極めて困難だし、大手企業ですらモノ単体では難しいという事実は、日本のエレクトロニクスが苦境に陥っていることから明らかだ。アイディアやサービス、コンテンツ、ビジネスモデルで新規性を打ち出し、デバイスはそれを実現する手段と割り切るべきだろう。

最後のこの提言は、この著者が言うととても重みがある。

そんなわけで、非常に濃密で具体的で実用的でかつとても楽しく読めるこの本は非常におすすめである。

参考までに、過去に工場見学に行ったときの感想へのリンクを貼っておこう。

深圳のエコシステムを理解した上で、うまく活用して良い関係を築いていける人が増えていけばいいと思う。

深圳ビアフェス・メイカーフェア おまけ

何かと話題の蘭州拉麺の店があったので、朝食をここにした。

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何度食べてもパスタのような中華麺のような不思議な感じがする。

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電気街にVRコーナーがあったので少し見てみた。

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こういうぶら下げる系もあるようだ。

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試してはいないけど、がっちりした筐体のものよりも進歩を感じる。

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中国の宇宙船といえば神舟

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入り口はこんな感じ。

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そして久々に電気街。なんかきれいな店が増えたなーって感じた。

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玄関の鍵もこういうのが主流になるのかな。

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またこの店に来た

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 カメラの専門店もある。けっこう本格的。

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 こういう相変わらずの電気街をみると安心する。

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この日の午後はinsta360に今年3度目の訪問をすることになっていたので移動した。insta360 proのスペアバッテリとかGPSモジュールとかinsta360 oneの防水ケースとかをオンラインで買おうとしたら送料と関税でなんか異様に高くなってたので、ダメ元でピックアップしていいかと聞いたところ、在庫あるからOKとのこと。言ってみるものだな。ちなみにプロセスとしては、事前に在庫があることを確認した上でオンラインでorderして、オーダー番号を伝えて送料や関税を差し引いてもらい、差し引かれた額をpaypalやカードで24時間以内に払う。で、現地でピックアップ。

そんなわけでまたやってきた。早く着いたので、4月に行ったカフェでちょっと休憩。

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あれからまだ7ヶ月しか経ってないわけで、人生の加速を感じる。無事発注していたものをゲット。

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それからなぜか3日続けて小米旗艦店へ。やっぱりリュックが欲しくなったから。

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そして、華強路のmaker hotelで荷物をピックアップして、地下鉄で皇崗口岸まで行き、skylimoで香港空港へ。完全に香港素通り。途中、コンビニで買った飲むヨーグルト美味しかった。

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次にこの香港空港に来るときはe-道だ。いつ行こうかな。

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チェックインして、またフードコートのタイ料理 

f:id:pho:20171113190425j:plainそんな感じで2泊3日のビール旅終了。いろんな人に会えて、このタイミングで行けて本当に良かった。やっぱり4時間くらいで行けるのでとても気楽に行けて良い。航空券とホテル代合わせても3万円しないし小米は相変わらず安い。むしろinsta360 proのアクセサリの方が高かったかも。

深圳ビアフェス・メイカーフェア 二日目

日曜日はメイカーフェアの最終日だけど、午前中はxfactoryの見学。地下鉄7号線で茶光駅まで行き、そこからmobikeで向かった。mobike便利すぎる。

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4月に来たときはできたばかりでまだ空っぽな感じだったが、今回はとても動いている感じがした。

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ハードウェアを作っているスタートアップならここに入居したらいい。

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一人あたり月600元で入れる。今の自分の方向性を考えると、ハードウェアはメインじゃないなあなんてことを思いながら見学した。

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mobikeで移動して、昼食。

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そしてようやくメイカーフェアに到着。

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2年ぶりの深圳メイカーフェアだけど、会場が違うと全然雰囲気が違う。

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商業っぽいものはあまり目立たず、手作り感ある感じでちょっと意外だった。

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ざっと見て回ってからPETSブースのお手伝い。3日間のイベントのラスト半日だけやってきてお手伝いというのもおこがましいけど、多少なりとも貢献できたら良い。

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PETSを知ったのは4月のkickstarterのときだけど、プロモーション動画を見ても正直いまいちピンと来なかった。でも7月に西安メイカーフェアで実物を見て、たまたま1時間くらい店番をしたところ、これは奥が深いし面白いと感じた。8月の東京メイカーフェアで中の人と少し話して、11月にシンガポールで一緒に呑んだくれて、ポロシャツのサイズを聞かれて、深圳メイカーフェアに至る。

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大学生のときに家庭教師や塾講師をやっていた頃も思ったけど、人が一生懸命考えてわかったって表情が変わる瞬間を見るのがなかなか心地よい。あと自分でルールを作れるゲームというのは自由度が高くて面白いと思う。

終了後、また小米之家に行き、白石洲へ。ちょっと新規開拓しようかなと思って、mobikeで直行するのではなくいつもと違うルートをのんびり歩いてみた。

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屋台エリアはなかなか魅力的。路地裏はもっと魅力的。

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もうこの怪しげな雰囲気がすごくいい。

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これは漬物屋さんだろうか。京都に錦市場をちょっと思い出した。

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この酒屋さんがものすごく気になった。様々な種類の白酒を瓶で保管して上に蓋をしているようだ。この手作り感あふれる雰囲気が最高に良い。白酒の知識をもう少し身につけてから再訪することにする。

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ここは豆腐っぽい。

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見た目がすごくわさびっぽいものがあったけど、さすがにそれはないか。

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路地を抜けた正面はこんな感じ。ここから5分も歩けばクラフトビールエリア。

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そんなわけで、白石洲駅からPeko Brewingまでの道のりも、ちょっと寄り道したら楽しい。

深圳ビアフェス・メイカーフェア 初日

ちょっとビールを飲みに深圳に行ってきたのでその記録。土曜の朝に出発して、月曜日の夜に戻ってくるという比較的のんびりしたプランである。

朝9時過ぎの飛行機で昼過ぎに香港に着いて、skylimo乗り場へ。100香港ドル

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いつものようにstarhubのhappy roamで通信は無問題だし、お金は前回余った香港ドルがあるので両替なし。中国元は事前にwechatに入れてもらってきた。現金も多少ある。深圳通も当然あるわけで、準備らしい準備はどんどん不要になるのがありがたい。

皇崗口岸で国境を越えて、地下鉄に乗り、電気街を通過して紅嶺北駅に向かった。駅前でmobikeを拾って、Halo広場のビアフェスに到着。

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中国各地からクラフトビールが集まるイベントである。

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 なんか見慣れた人がいた。ここでTシャツを購入。

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なんかいろいろ飲んだ。

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これは北京のクラフトビール。こういうアジアなデザインもかっこいい。

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出展者がまったり動画を撮影しているような緩さが良い。

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支払いは当然wechat payment

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美味しいのは美味しいけど、酒作ってる場所でまったり飲むことと比べるとこういうイベントは混雑してるしいまいち落ち着かないのでなんだかなあと感じてしまう。自分が求めているのは量でも種類の豊富さでもなく、空間であり体験なんだなあと思った。

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まあでも情熱を持ってビールを作っている人々が集まるイベントは貴重だし、ご機嫌に酔っ払うビールクズを見ているのは良いものだ。そんなところで切り上げて、電気街のホテルにチェックイン。予約したのはQuchuang Hotelなんだけど、住所の場所に行ったらMaker Hotel(趣创酒店)だった。

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なんかとてもまとも。一泊4500円。ウォシュレットがない以外は日本のトイレと遜色ないわけで、現場に行かない外野は一生妄想と評論してろとしか言いようがない。

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そして小米之家。正直、もう科学館駅のイオンの小米には行かなくていいなと思ってしまった。

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そして白石洲のPeko Brewingでの飲み会に買ったばかりのPekoのTシャツを来て参加。


Meetup at Peko brewing

いつもオンラインで見かけている人が大集合していて色々と感覚が麻痺していたし、とても楽しかったし、とても貴重なひとときを過ごせたように思う。4月の深圳観察会のメンバーも半分近く来ていたのではなかろうか。あまり他人のことを言えないが、ほんとみんな気軽に深圳に来るんだな。来るたびに何か新しいことが起きているレジャーランド深圳。これだけの濃い人々を集める場所の力というのもの強く感じた。

そんな勢いがある深圳でなんとなくほっとするこの白石洲がとても好きだ。4月になんとなく深圳・クラフトビールで検索して見つけたこの店だけど、行けば複数回飲みに行く圧倒的なホーム感ある場所となっている。そんな場所を見つけられたのはとても幸運だと思う。