読書

ハードウェアハッカー 全体の感想

多岐にわたる分野をカバーしたこの本「ハードウェアハッカー」を読み終えてまず思ったのは、これはハードウェア版のリチャード・ストールマンの物語だということだ。著者のバニー・ファンはストールマンよりずっと若いし、あんなに頑なな態度を取らないかも…

もうすぐ絶滅するという開かれたウェブについて 続・情報共有の未来

yomoyomoさんの新しい本が出たということで買った。連載はところどころ読んでいたけれども全部読んだわけではないし、このように各章ごとに丁寧な解説付きのまとまった本が出るのはとてもありがたい。それもDRMフリーの達人出版会からである。購入者のメール…

ジョン・ハンケ 世界をめぐる冒険

初めてGoogle Earthを体験したとき、夢中になって色んな場所を見に行ったことを覚えている。そんなGoogle Earth(買収前の名称はKeyhole)を開発し、その後Ingressを作った人の本なので、是非読みたいと思って買った。序文からして既に期待させるものがある…

「ハードウェアのシリコンバレー深圳」に学ぶ

2015年と2017年に参加したニコニコ技術部深圳観察会でお世話になったJenesisの藤岡さんの本がついに出た。深圳で自ら中国人を雇って工場を経営するに至る10年間とその後に自社工場での試行錯誤の6年間の計16年間の深圳の製造業との関わりを著したとてもディ…

南極点のピアピア動画

強い推薦があったので、特に何も前提知識なく読み始めたのだが、読んでよかった。とても良い時間を過ごせた気がする。 匿名の人々が損得勘定抜きに面白がりながらいろいろやっていたらなんかすごいことになったという文化が好きな人であればまず間違いなく楽…

ロボットの時代〔決定版〕

この本も短編集なのだが、著者自身のコメントがそれぞれについていてむしろそこに価値があるような気がする。 そしてSFの主なプロットの一つはロボットの創造であり―これらはたいてい鉄でできた魂も感情もない創造物として描かれた。ここでもフランケンシュ…

われはロボット〔決定版〕

ロボットと言えばアイザック・アシモフのロボット工学の三原則が知られているが、そういえばアシモフの著作を読んだことがなかった。軽い気持ちで読んでみたら、これがまた面白くて面白くて、何度バスや電車を降り損ねそうになったことか。 「ロボット兵士の…

ロボット(岩波文庫)

今読んでいるロボット兵士の戦争という本がとてもとても面白いので、ロボットが気になりはじめた。そんなわけで「ロボット」という言葉が最初に出てきたカレル・チャペック(チェコの作家)の戯曲を読んでみた。 「人間を十年もかけて作るなんてナンセンス。…

不戦無敵の影殺師

shiumachi氏が面白いというので1巻を読んでみた。面白かったので2巻も読んだ。 「自分の強さ」を証明したい、でも「強い」だけでは食べていけない。こうした異能力者が抱える悩みに対し、本巻ではまだきれいな解決策を出せていません。 異能力者が抱える承認…

宮大工と歩く千年の古寺

宮大工というのは、国語の教科書で西岡常一という名前を見かけたくらいで全然知らないのだが、なんとなく面白そうだと思って買った本。読んだ後、困ったことにこれらの寺に行きたくなってしまった。しばらく日本に行く予定はないのだが。 私は宮大工です。縁…

村上ラヂオ

村上春樹の作品を最初に読んだのは、小学生の頃だったように思う。羊男のクリスマスという絵本だ。モコモコした着ぐるみのようなものを着た男がドーナツを手にしている絵が印象的だった。 そして中学生・高校生の頃に村上朝日堂などのエッセイを読んだ。小説…

軍事とロジスティクス

江畑謙介氏といえば、データに基づく的確な解説をする軍事評論家という印象が強い。そんな人が書いた本なら面白いだろうと思って読んでみた。 「ロジスティクス」をオックスフォード辞典で調べると、「多くの人間と装備(装置)が関与する場合に、複雑な作戦…

世界の測量 ガウスとフンボルトの物語

買ったきっかけは、この書評だったような気がする。 http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/07/post-804.html 率直な感想として、ガウスがすごく汚らしく描写されているのが気になった。実際にそうだったのかもしれないけれども、序盤から読んでいて不快…

百年たっても後悔しない仕事のやり方

ライフネット生命の出口会長に会っている友人が大量にいるのだが、なかなかお目にかかる機会がない。 ライフネット生命というより、出口社長というオヤジが凄かった (前ふり): やまもといちろうBLOG(ブログ) ただ、それ以上に、出口社長というオヤジが強…

アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ

けっこう前から本屋で見ていて気になっていた本。 それが、”アンティキテラの機械”である。現在、その破片には少なくとも30個の歯車がついており、残存する部分の表面にぎっしりと細かな門司が刻まれていることが確認されている。 ・・・ この機械はなにをす…

本の感想

読み終わった本の感想なんか書いても時間の無駄なんて感じたりしたのだが、 面白い本を読んだのならば、ささやかながらでもそれを世に広めるのが読者の務めである。— yosuke tanaka (@yosuke__) 2014, 2月 5 なんてことをふと思ったので感想を書いた。いつも…

なぜハーバード・ビジネス・スクールでは営業を教えないのか?

本屋で立ち読みをしていて面白かったので買った本。営業という仕事について全然よくわかっていない状態で読んだが、営業とは何かということを考えさせられた。 セールスは”おまけ”じゃない。財務や法務や経理といった仕事らしい仕事から切り離された、やっか…

謎の独立国家 ソマリランド 後編

前編に引き続き後編の紹介。 海賊の取り締まりもやれるわけがない。なにしろ、プントランド政府軍というのは、国連軍とか多国籍軍みたいなものだ。ソマリランドとかイスラム過激派といった大きな敵なら共同で出兵するが、オスマン・マハムード分分家の海賊が…

謎の独立国家 ソマリランド 前編

mhatta氏がtwitterで絶賛していたので買った本。 おいお前ら、これは猛烈にというかうんざりするほど面白いぞ!500ページ以上あったが5時間ぶっ通しで一気に読んでしまったよ:謎の独立国家ソマリランド(髙野秀行) http://t.co/GWeFpY1w2L— Masayuki Hatta…

ナウシカの飛行具、作ってみた

2007年にICCで開催されていたイベント http://pho.hatenablog.com/entry/20070218/1171789083 に行ってこのプロジェクトのことを知った。 メーヴェはドイツ語で「カモメ」を意味する、美しく白い翼を持ったナウシカの愛機です。風の谷や腐海、そして戦場の空…

カラシニコフ

3Dプリンタで銃を製造できるという話を聞いたとき、そもそも銃ってどんな構造なんだろうと思い、世界中に出回っている銃であるAK47、カラシニコフのことが気になった。そういえばそんな本があったなと思い、買って読んだところ非常に面白かった。 旧ソ連軍の…

2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する

各章をThe Economistの編集者、記者が担当して、様々な分野の今後の見通しを記した本である。どの章も一つ一つ丁寧に書いてあって、しかも自分がこれまで全然見ていなかった切り口を提示しているのが素晴らしい。 未来を予測するために、まず過去を振り返る …

本の選び方

それほど早いペースではないが、日々淡々と本を読んでいる。ひとえにiPad miniのおかげなのだが、それは今日の本題ではない。今日はどんなふうに本を選んでいるか書こうと思う。 このブログをみている人ならわかると思うが、読んでいるのはほとんどノンフィ…

高橋是清自伝 下巻

下巻は銀行家・実業家としての活動が描かれている。 これまで私は教鞭を執ったり官途についたりして主として政府の仕事に当ったのみで、実業界にはまったくはじめてでありますから、今度実業界に入るについては、どうぞ丁稚小僧から仕上げて下さい」 と申出…

高橋是清自伝 上巻

日本の特許庁を作った人、226事件で殺された人、そういえば江戸東京たてもの園に家があったな、という程度の認識しかなかったが、なんとなく興味を持ったので自伝を読んでみた。 仙台藩の高橋家の里子にやられ、アメリカに渡って、帰国して、紆余曲折を経て…

チューリングの大聖堂

エコノミストで紹介されていて気になった本。 http://www.economist.com/node/21549914 プリンストン高等研究所の歴史、そこで行われたコンピュータへの取り組みが非常に詳しく書いてある。タイトルにチューリングとあるが、主人公はフォン・ノイマンのよう…

ロシア宇宙開発史

読もうと思ったきっかけはこの書評。 http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2012091000009.html 技術の進歩というのは、アメリカや西ヨーロッパ側の視点で見ることが多いので、ロシアの宇宙開発というのは非常に新鮮でとても面白かった。ロシアの気球、ロ…

ステルス戦闘機-スカンク・ワークスの秘密

数年前に師匠が非常に面白そうに読んでいた本。もう絶版なのだが、たまたま手に入ったので読んでみた。本当に面白い本っていうのは、誰かに勧めたりせずにただひたすら楽しむものなんだろうな。ここに感想を書くので、それを見て興味を持った人は読むといい…

物語 シンガポールの歴史 後編

シンガポールの教育制度。 すべての生徒は小学校四年終了時に、全国統一試験を受け、成績にしたがって五年と六年時は三つのコースに分かれる。小学校終了時には、これも全国統一試験の小学校卒業試験(PSLE)があり、一定の成績に達しなかった生徒は、技術専…

物語 シンガポールの歴史 中編

もう前回何を書いたか覚えてないが、続きを書いていく。 東南アジア各地で独立運動が盛り上がるなかで、1945年9月5日にイギリス軍や植民地政府関係者がシンガポールの土を踏むと、住民はイギリス国旗を振って歓迎する。 これがシンガポールのちょっと変わっ…