国際シンポジウム レッシグ教授の講演など

では昨日の続きを。レッシグ教授の講演については
http://www.atmarkit.co.jp/news/200603/28/lessig.htmlhttp://www.itmedia.co.jp/news/articles/0603/27/news075.html
この二つで軽くまとめてあるけど、もうちょっと補足をしようと思う。

ブッシュ大統領とブレア英首相が愛を語り合うビデオクリップだ。

この映像は
http://www.atmo.se/zino.aspx?articleID=399
このread my lips の Bush/Blair love duetから見ることができる。
唇の動きまできっちり考えられていて完成度は非常に高い。
4年くらい前からネットを使っている人には別にあまり目新しく
ないような気がする。ここのサイトのフラッシュとか
http://www1.neweb.ne.jp/wb/soutou/http://ware.web.infoseek.co.jp/cgi-bin/flash/f/1098963640.cgi
日本にも前からあるわけで。remixを推進するようなシステムが
あれば面白くなりそうというのは確かに感じる。


あとまとめた文章を読んでいて思ったが、ずいぶんとやわらかく
まとめているものだな。レッシグ教授はもっとずばずば言っていた気がする。
appleもamazonもRead-Onlyのコンテンツしか配信しないOld Worldだとか
Read-Writeのコンテンツでクリエイターがたくさん出てきたら面白いとか
まあそういう話をしていた。
copyrightをabolishするのではなくupdateしよう。弁護士がいなくても
問題なく機能するくらい単純にならなければいけないとのこと。
理想を言えば弁護士がいなくていいようにと何度も言って
lawerに×をつけていたのが非常に印象的だった。弁護士が非常に大きな
力を持つアメリカのシステムに対していろいろと不満がありそうな雰囲気。
creative commonsは「not a solution」だけど「necessary step」とのこと。
イヤホン配られて同時通訳だったんだけど、英語と日本語の両方が頭に
入ってきて混乱してきたからイヤホンを外して聞いてた。
残念ながら力不足で6、7割しか理解できなかったけど、非常に楽しめた。


この講演が終わったらすぐ帰ってしまう人がけっこういたが
それって非常にもったいないと思った。BBCやNHKや文部科学省の人の
話も聞けるから著作権の現状がよくわかるのに。次の講演は
うちの大学の前総長。そういえば情報系の権威だった。
90年頃から京大の電子図書館に取り組んだという。電子図書館は
何度か使ったことがあるから知っているけど、6年通ってたけど
古文書まで保存しているとは知らなかった。
どうしてそういうことをもっと大々的に広めないんだろう。
大学とか行政とかって告知がものすごく下手だと思う。
調べてみたらけっこうまともなことをしているのに認知されてない
ということが少なくない。どうにか改善できないものだろうか。
単にデータを保存しておくだけではなくて、使えるようにする
ということで、古文書についてもマウスカーソルを合わせると
現代語訳みたいなのが表示されるようにできているそうだ。
マヤ文明展で使われていたバーチャルリアリティのやつが
この人のところの成果だというのは知らなかった。
ホンジュラスの博物館にも導入されているらしい。
情報学研究科の松山先生がちょっとだけでてきて面白かった。
舞妓さんのその3D映像は講義でもう何回も見たって。


基調講演の最後はBBCのディレクターのポール・ゲルハート氏。
podcastまわりのニュースを欠かさずチェックしている自分の意見だが
世界で最もオープン化が進んでいる放送局はBBCだと思う。
規制しようという意図がほとんど見られないので非常に好感が持てる。
過去の映像コンテンツというのは公共の遺産であるからということで
1966年のワールドカップ決勝戦の映像なども公開されている。
Geo-IP restrictionでイギリス国内に限定しているみたいだけど
串させば見られるんじゃないかと思ったりする。試してないが。
http://creativearchive.bbc.co.uk/
とりあえず試験運用という形で、ニーズがあるかどうか、
法的に問題はないか、ビジネスモデルは大丈夫か
このあたりを確認して、問題がなければ世界に展開するという。
最初はBBCのお金を払ってくれているイギリス国内でやるそうだ。
非常にリミックスに対して寛容な放送局である。

国際シンポジウム 短めの講演がいくつか

基調講演の後10分程度の短い講演がいくつかあった。
NHKの取り組みについてもちゃんと話が聞けてよかった。
BBCとNHKの違いは何に起因するのか気になっていたのだが
その理由が少しわかった気がする。

ちゃんとしたハイビジョン番組が送られるのか、改ざんされないのか、
クリエイターはコンテンツを切り刻まれたくないんじゃないか

こういうこういう発言がちょっと新鮮だった。改変するのを
許してしまうと、NHKというブランドが傷つけられるかもしれない
という恐怖感みたいなものが感じられる。B-CASカードも
番組内容をHackされるのを恐れているため取り付けたみたい。
確かに電波の中継地点に入り込むより、ネットの放送を
改ざんする方が技術的に楽そうな気がするけどそんなことを
考えているとは思わなかった。あと、NHKもアーカイブを公開
していないわけじゃないそうだ。ただしネットでは見られない。
各放送局に行けば古い映像が見ることができるとのこと。
http://www.nhk.or.jp/nhk-archives/
プロジェクトXとか見られる模様。


あと台湾のアニメ関係の大学の偉い人がきて、いろいろ映像を
見せていた。日本にいんすぱいあされたとか言っているものは
鳥山明の漫画そのまんまだったので笑えた。
文部科学省の人もなんかいろいろ話をしていた。

行政は後追いになってしまう

という言葉が聞けたので、立場は違うけどみんないろいろと
がんばっているんだと感じた。実際に話を聞いてみるのはよい。


国立情報学研究所の曽根原教授の話がこの短めの講演の中で
もっとも興味深かった。ライフサイクルを考慮して
コンテンツを管理するという考え方である。
最初は無償で提供されるけど、ある程度ダウンロード
され始めるとスクランブルがかかったりしてお金を
支払わないと見られなくなるという仕組み。
人気が出てくればお金を払ってでも見たい人が増えてくる
だろうから、簡単な小額課金のシステムができれば
こういうことができるんじゃないかということ。
徐々に人気がなくなってきたらまた無償で公開される
ようになるというのが面白い。予測市場的な仕組みが
多少取り入れられているような気がする。

国際シンポジウム パネルディスカッション

なんかJASRACの人もNHKの人も見に来ているみたいなので
率直な感想をちゃんと最後まで書こうかと思う。


パネルディスカッションが一番面白かった。
かなり前の方に座っていたので、パネリストの様子が
はっきりわかるのだが、レッシグ教授はかなりいらいら
していたんじゃないだろうか。後半ずっと足をがたがた
させていた。「ぜんぜんわかっちゃいない」とでも言いたげな
表情だった。実際のところどうなのか知らないけど
午前中のクリエイティブコモンズとは大違いだったのは確か。


おそらく原因はNHKの「放送コンテンツの権利保護と使い勝手の向上」
のあたりだろう。これは学校内などで自由にコンテンツを
利用できるようにする代わりにCASカードで認証などをするという
コンセプトである。その鍵などは利用者に意識させないように
するとは言っていたが、実際のところどこまでそうなるか。
それ以前にそもそもリミックスさせる気がないよな。
一生懸命考えた結果なんだろうけど。ある程度の数のクリエイター
というかリミックスをやるひとが出てくるためには、その何十倍
の人がそれをできる環境になる必要があるんじゃないかと思う。
何かができる環境だとしても、その中でエネルギーを費やして
何かをクリエイトするのはほんのわずかしかいないわけで
少しでも作品を増やしたいなら、できる環境の人を増やすしか
ないだろうと思うけど、どうやらそうする気はないらしい。
そもそも複雑すぎるし。


レッシグ教授は著作権の縛りが強ければマーケットは小さいが
縛りがゆるくなればマーケットが大きくなるとか言ってた。
テーブルを指差して、このテーブルを使おうとするたびにいちいち
許可を求めなくちゃいけないなんてことはno senseだとか。
テクノロジーでがちがちに固めないで、もっとシンプルな
システムじゃないと意味がないみたいなことを言ってたと思う。
激しく意訳か誤訳かしている気がしないでもないけど。


NHKとしてもBBCのようにオープンにしてやることに敬意を表するそうだ。

国民の共有資産であるコンテンツをオープンにしたい

というようなことは言っていたので、別に対立しているわけじゃない。
民業への圧迫と指摘される可能性もあるし、出演者との契約が
初回の放送と何度かの再放送に限定されているので、昔のコンテンツを
ネットで配信するにはそういう契約を全部見直さなければならず
あまり現実的ではないということ。ここまで説明してもらうと
なかなか苦しい立場であるということはうかがえる。4月からには
間に合わないだろうけど、10月からの放送に対して、出演者との
権利関係を見直してみて、ネット配信できるようにしてみたら
いいんじゃないかと思ったりする。いきなり全部できるわけないんだから
少しずつ取り組んでいったらいいんじゃないだろうか。