ハーバードMBA留学記

別にとっておいたわけではないが、留学なるものをしている今の自分にぴったりの本ではないかと思う。一ヶ月前にこちらに来る飛行機の中で読んだ。もちろん自炊したPDFファイルをiPadで。

ハーバードMBA留学記 資本主義の士官学校にて

ハーバードMBA留学記 資本主義の士官学校にて


自分とは全然関係の無い物語として読むのと、今後2年間をどうしていこうか考えながら読むのとでは、リアリティがぜんぜん違う。ボストンすら行ったことがない自分には著者が体験したことの背景などわかるはずもないが、人生のフェーズの一つとして何かしら共鳴するものがあったのかもしれない。場所も違えばやっていることも違うが、今の自分に当てはめて感じたことを書いてみることにする。

僕にとってprincipleは、胸や背中の筋肉のようなものだ。小さなことで少しでも、自分の信念を曲げてしまったら、どんどんその筋肉は 弱くなっていく。逆に、自分の信念を守ることで、自分が少しずつ、 少しずつ強くなっていくことができる。

近頃法律の勉強ばかりなのでその方面から考えてみる。法律家の役割は、おそらく揉め事の落とし所を見つけることだろう。揉め事のないところに法律家は要らない。そんな法律家がやってはいけないこと、それは揉め事を作り出すこと、揉め事を大きくすることではないかと思った。火消しが火をつけたり、火を大きくしては駄目だ。自分の行動が誰を幸せにするのかということは、意識しておいていいと思った。それが今の自分のprincipleかもしれない。

HBSのケースディスカッションでは、皆が全力で自分の意見をぶつけることこそ美徳とされる。以下、授業中によく聞かれる言葉。
”l disagree"
"I totally disagree”
"l strongly disagree”
"l cannot disagree more"
etc etc...
これらの発言は、個人攻撃ではなくあくまで相手の「意見」に反対しているのであり、よりよい考え力や結論を導くための不可欠なプロセスだとみなされ ている。どんなに激しくやりあってもユーモアを忘れないし、授業か終わるとけろっとしているところが気持ちよい。真っ向から反対しあうことで、同じ問題についてもさまざまな見方があり、多而的な視点で問題を考慮する姿勢が自然と実感できる。

こんなに激しいディスカッションはないけど、多少はある。そもそも判例研究を英語にするとケーススタディなわけで、類似点は少なくない。最初の頃の講義で言っていたが、「何が正しいか」は「誰がクライアントか」で決まるそうだ。試験で評価されるのは、正しい答えではなく、どれだけ多面的に考察できたかであり、その考え方を伝えるのが講義の目的とのこと。言いたいことはわかるけど、あのスピードのディスカッションはまだ正直きついものがある。おそらく自分の最も苦手なものだから、克服する良い機会なんだろう。

最近はプランド・ハップンスタンス(計画された偶然性理論)という考え方が出てきました。これはどういうことかというと、「キャリアは偶然の積み重ねで予期せぬ出来事でできる。だから、予期せぬ出来事をいかにチャンスに結び付けるかが大事。ゴールは生涯にわたって学習する、あるいは毎日をエンジョイすることで、キャリアの意思志決定をすることではない。そして必要ならチャンスを作り出す行動をする」ということで、スタンフォード大学のジョン・クランボルツ教授が提唱しています。
その行動は5つあって、1つは自分の好奇心をとどめずとことん突き詰める、あるいは自分が身につけたいスキルが伸ばせる仕事をやること。次に持続する、つまりあきらめずにやり続け、学び取ること。さらに楽観すること。そして、リスクテイクし、積極的にミスを犯せということ。最後に柔軟であり、キャリアを決めつけず、それはあくまで偶発的事象の結果と考えるということです。

定まっていない状態というのは不安なものだけれども、否定すべきことではない。この理論を知ったときそんなふうに思った。

やりたいことがあるなら、今すぐやりたまえ。私は自分が選んだ仕事が楽しくて楽しくてたまらず、毎日職場まで文字通りタップダンスをしながら行 っている by ウォーレン・バフェット

そういえばパタゴニアの創業者も同じようなことを言ってたな。

また、いかに真摯に取り組んだとしても、一つだけ、どうしても変えたくないことがあった―仕事は毎日、楽しめなくてはならない。会社に来るときはウキウキと、階段も一段飛ばしで駆け上がるようでなくてはならない。

社員をサーフィンに行かせよう - technophobia

仕事によるのかもしれないけど、嫌々やるより楽しくやったほうがいい結果がついてくると信じたい。

わずかのあいだだけでも気球に乗ることができるなら、できる限り最良の時間を過ごすべきではないだろうか?そして、どんなに忙しくても、 人生のどこかで浮世を離れ、高いところから自分か生きている世界と、そのなかで自分がどうありたいか、見つめ直す時間をつくることは、かけがえのない 体験となるのではないか?「ビジネススクールに行く価値はありますか?」。次にそう聞かれたら、こう答えよう。あなたは、気球に乗って旅してみたいと思いますか?

仕事を辞めて3ヶ月。もう十分浮世を離れた気がする。あとは、学生だからこそできる実験的な試みをしたらいいかなと思っている。まだまだ手探りだけど。

「君の話を聞いていると、どこかでまだ大手だとか名門ファームの ブランドに対するこだわりが感じられる。でも、それは考え方が違うと思う。君ほどのキャリアがあれば、もう大手ファームでのお勉強は必要ない。むしろ、1回しかない人生だからこそ、自分にしかないユニークな個性とエッジを利かした生き方をすべきではないか?君は他の人にはない才能を持っているし、起業したら絶対に成功すると思う。僕は、君の才能を花開かせたい。だから、僕と一緒に仕事をしてほしい」

自分にしかないユニークな個性とエッジを利かした生き方。様々なバックグラウンドの人に囲まれたこの環境は、自分が何者なのか考える上で有利に働きそうな気がする。
以前聞いた岩瀬氏の講演
http://d.hatena.ne.jp/pho/20071124/p1http://d.hatena.ne.jp/pho/20071125/p1http://d.hatena.ne.jp/pho/20071126/1196086761