見晴らしのいい場所

今から一年前は就職活動をしながらいろいろ考えていた時期である。
大学院で研究をしていたわけだからエンジニアという職種が
無難といえば無難だし、まあ普通はそうだろうと思っていた。
でも仕事としてそれはおもしろいのかとか、低価格でしか売れず
利益があまりでないものを扱っても今後苦しいんじゃないかとか
いろいろ考えていた。そんなときにこの文章を読んだ。
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20050407/p1

ある若い友人は、このことを考え抜いた挙げ句に、自らがかなりのギークでありながらも、ITとは関係のない、激しい変化の少ない手堅いリアル産業に職を得て安定した収入とゆっくりとしたキャリア形成の道を確保し、供給者として「Cheap Revolution」に巻き込まれていくのを避け、「Cheap Revolution」を消費者としてエンジョイすることにした(「Cheap Revolution」のいいとこ取りをすることにした)、と僕に言った。人それぞれ下す決断はまちまちだが、そう説明されると確かにグーの音も出ず、一つの見識だなぁと思ったのである。

それまでにこの視点はなかったけど指摘されてみると非常にしっくりきた。
ネット好きなのは特に説明の必要がないほどだし、ネット界隈で動きが激しくて
非常に面白そうということは一応理解しているんだけど、別にその中で激しい
競争にさらされながら仕事をするのはいかがなものかと感じてしまう。


法律を学んで知的財産という分野でキャリアを積んでいけば、まあまあ楽しく
ローリスク・ミドルリターン程度にはもっていけるんじゃないかと思っている。
ここでいうリスクの定義を一言ですると「転職力」。会社でレイオフに遭ったり
会社が消滅してもやっていけるだけのスキルがあれば、ローリスクと考えている。
これならそれほどチープ革命の被害を受けないだろうし、エンジョイできそうである。


この程度のことしか考えずにサインして、あさってから入社するわけだが
シリコンバレーツアーで自分が無意識のうちに重視していたことに
気付かされた。「見晴らしのいい場所」である。おそらく自分が最も
重視していたことはこれだと思った。情報が入ってきて、全体の流れを
ちゃんと見ることができる場所、それが「見晴らしのいい場所」だと
解釈している。ニッチな研究にはまり込んで視野が狭くなることを
恐れていたし、ベンチャーで目先のことに頭が一杯になったら
それはそれで楽しいかもしれないけど見晴らしが悪くなってしまう気がした。
大きくて動きは鈍いかもしれないけど、世界に展開した会社ならきっと見晴らしが
いいだろう。最先端のテクノロジーを権利化する特許ならなおさら。


見晴らしがいい場所にぼーっと突っ立っているだけでは意味がないので
さっさときっちりバリューを出せるようになろうと思った。大切なのは結果だから。