その数学が戦略を決める

オアゾの丸善の一階のランキングをぼんやり眺めていたら
なかなか面白げな本があったので手に取ってみた。
立ち読みしてみるとどんどん引き込まれたので、即購入。


かなり面白かった。これは非常にお勧め。
以前別のところで感想を書いたので、転載しよう。(手抜き)

その数学が戦略を決める(絶対計算者たち)を読んでいるといろいろと考えさせられる。この本は、おおざっぱに言うと専門家よりも、データに基づく統計計算の方が「よい」結果を出すというもの。膨大なデータを分析し、相関関係がわかると、何%の確率でどうなるかがわかるらしい。その結果、チェスのチャンピオンにコンピュータが勝つみたいなことが、いろいろな分野で起きているという話。カジノで、この客はどのくらいの負けまで許容できるのかを計算して、その一歩手前で食事券を渡して機嫌を直してもらうとか、身も蓋もない話がいろいろ。映画も過去のデータをみて、脚本からどの程度の売上が見込まれるか計算したりする。

ずっと読んでいて思ったが、おそらく人間よりコンピュータの方が決断が得意だろう。私情を挟まずにいろいろと処理できる。迷いがない。だから、コンピュータの言う通りに従うオペレータがいれば、いろいろな分野である程度「儲かる」仕事はできると思う。効率の良い仕事はできるだろう。マクロに考えて、客を単に金を払う道具とみなせば、機械的に売上が見込める計算ができると思う。映画だって、人を感動させるかどうかは別にして、売上が見込まれるものを作るなら、統計分析をしたコンピュータの方が高い確率でできそうだ。楽しくないかもしれないけど、それが事実だと思う。パイロットは、飛行機の操縦が楽しいからって自分でやったりしない。コンピュータの方が確実だから、fly by wireに任せる。死なないために最も確実な方法をとるわけだから、これは切実だ。

でも、後世に残るもの、人を感動させるものは、やっぱり人の手によるものだと思う。お金を稼ぐあんまり面白くない仕事はコンピュータに任せて、採算度外視で人の手で楽しいものを作るって感じになるのかな。工場のオートメーションみたいなことが、もっと広い範囲に広がっていくような気がする。大量生産品はそれでいいけど、高級品は(職人じゃないけど)これまでのように人の手によるものになりそうだ。

銀行の融資担当者の仕事が、ただのコンピュータ入力作業になってしまったらしい。サバイブという言葉が、かなり切実なものに思えた。でも先読みして、うまく活用する側にまわれば、可能性は大きく広がりそう。変化が激しい時代だな。

その数学が戦略を決める
その数学が戦略を決めるイアン・エアーズ 山形 浩生

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