英語で物理

MITのWalter Lewin先生の講義が非常に面白い。
これは、その体を張った物理学の講義のプロモーションビデオである。

WIRED VISIONの記事で元々知ってたが、今日プロモーションビデオを見つけた。
MIT「熱血物理学教授」の講義ビデオが大人気 | WIRED VISION
http://wiredvision.jp/news/200801/2008010921.html
MIT OpenCourseWareといって、講義のビデオも公開されている。
素晴らしいと思ったり、あとで見るとか思ったりするのは簡単だ。
でも面白いと言って、その場限りで終わってしまうのはあまりにももったいないと思う。
ブームみたいに一時的に盛り上がるだけなのは、あまり好きじゃない。
もっと深く掘り下げてじっくりやるのが好き。球面はやや泥沼にはまり気味だけど。
上っ面の理解じゃなくて、ちゃんと掘り下げようと思う今日この頃。


能書きはそのくらいでいいか。古典力学、電磁気学、振動と波の3つが公開されている。
さっき古典力学の一回目を見てみたのだが、非常に面白かった。
MIT OpenCourseWare | Physics | 8.01 Physics I: Classical Mechanics, Fall 1999 | Video Lectures | detail
http://ocw.mit.edu/OcwWeb/Physics/8-01Physics-IFall1999/VideoLectures/detail/Video-Segment-Index-for-L-1.htm
何分頃に何をするかってのは、けっこう丁寧に書いてあるので便利。
基本的に理論からある程度の予測をして、それから実験して、誤差の範囲に収まったってスタイル。
これぞ物理学という感じで、非常に見ていて気持ちいい。

自然界に見られる現象には、人間の恣意的な解釈に依らない普遍的な法則があると考え、自然界の現象とその性質を、物質とその間に働く相互作用によって理解すること(力学的理解)、および物質をより基本的な要素に還元して理解すること(原子論的理解)を目的とする。

物理学 - Wikipedia

自然界の現象ありきなので、あまり抽象的な方向にはいかず
数学と違って、エンジニアリングに近いんじゃないかと思う。


では、簡単に古典力学一回目の感想を書いてみよう。
物理では、非常に小さなものから、非常に大きなものまで扱う。10の45乗の範囲。
The fundamental units are length, time and mass.
ということで、長さL[m]、時間T[sec]、質量M[kg]が挙げられている。MKS系か。
続いてThe powers of tenの映像を紹介してる。これは10の40乗の範囲。
http://micro.magnet.fsu.edu/primer/java/scienceopticsu/powersof10/
天の川から、10倍、10倍ってどんどん拡大していくのが面白い。
物理って本当に大きなものから小さなものまでやるとわかる。
今度は、さっきの3つの基本単位を使って、速度、体積、密度、加速度を表す。
ここまではまあけっこう普通だな。で、次が重要。

  • 不確実性

A measurement is meaningless without knowledge of its uncertainty.
測定には誤差がつきものだから、誤差の範囲は明確にしよう。
人は、立ってるときと横になってるときで、身長が違うのか?という仮説のもとに実験。
一人目の協力者の背が高すぎて、測定できなかったのが面白かった。
実際にはっきりと差が出ていたのが興味深い。やってみるって大事だな。

  • 哺乳類の大きさはなぜその大きさなのか(鯨は考えられてなさげ)

ガリレオ・ガリレイの疑問に基づくお話。さっそく最初に話してた単位を使う。
話がきっちりつながっていて、非常にうまいと思った。
体の大きさ(S)というのは、支えるための大腿骨(femur)の長さ(l)に比例して
体重(m)は、体積に依存するから、体の大きさ(S)の3乗に比例して、大腿骨の長さ(l)の3乗に比例する。
圧力は、体重/面積なので、体重(m)/大腿骨の厚さ(d)の2乗に比例する。
圧力かけ過ぎると壊れちゃうので、mはdの2乗に比例する。
以上より、dの2乗は、lの3乗に比例する。よってdはlの2分の3乗に比例する。
これよりd/lは√lに比例する。大腿骨の厚さ/長さは、長さの平方根に比例する。
簡単な式変形だけでここまでできるのが面白い。で、ここから測定開始。
いろいろな骨を持ってきて、長さと厚さを測って、グラフにプロット。
まさか象の骨まで持ってくるとは思わなかった。この人すごすぎる。
ねずみと象を比較したら、理論に近い値が出て、一件落着。この気持ちよくわかる。

  • 次元の計算、自由落下の実験

落下にかかる時間は、質量、高さ、重力加速度と何らかの関係があるかもと仮定して、
計算して、時間tは、高さhの1/2乗に比例するというところまで導いて、測定。
3メートルと1.5メートルの高さから落として、かかる時間の比を予想して測定。
誤差の範囲に収まったーって感じ。ワンパターンといえばワンパターン。
最後に解説として、落下時間は、ここでは質量に関係しないとしたけど、
厳密に言えば、違うよって話をしてる。まあ古典力学なので。


中身としてはMITといえども高校物理。日本の高校物理がんばってる。
でも誤差の大切さをきっちり説明したり、理論と実験を合わせてやるのは
やっぱりMITさすがだと思った。見てて非常に楽しいし。
あと、懇切丁寧なのを非常に感じる。大学院を出た自分が見るからかも。
第2回以降ものんびりと見ていきたい。