iPS細胞研究の展望と課題(3)

では3回目。

山中伸弥教授の講演

元々は外科医だったけど、医者としてどうにもならない患者を目の当たりにして
研究者となったらしい。奈良先端技術大学で研究室を持ったとのこと。

  • 無限に増やせる
  • いろいろなものに変えられる

そういう細胞を見つけようというのがテーマ。
ES細胞は受精卵から作るけど、患者自身の受精卵から作るのは難しいので
自身の細胞に因子を加えてES細胞と同じものを作る。
ジョン・ガードン教授とイアン・ウィルムット教授の研究のおかげで
そういうことを可能にする因子があると示されたので、
時計を巻き戻す因子を探す研究に取りかかった。
4つの因子を同時に入れるとiPS細胞ができると判明。
外科医なので、マウスよりも人間で成功させたい。
同じ4因子でできた。今は、3因子でいいことがわかったとのこと。
見た目はESもiPSも区別がつかないらしい。
分化を調べるため、頬の細胞から心臓を作ってみた。
皮膚の細胞から大量にいろいろなものができる。


再生医療に期待されがちだが、

  • 病気の解明
  • より効果の高い薬

こっちの方が先らしい。
無菌状態で作らないといけないし

  • 作るのに1ヶ月
  • 増やすのに1ヶ月
  • 分化させるのに1ヶ月

と3ヶ月もかかる。細胞バンクが必要かもとのこと。
昔は好奇心だけでよかったけど、今は知財を考えなくてはいけない。
発表した瞬間から追いかけてくるので、マウスのiPSを発表する前から
ヒトのiPSをやっていた。発表がかなり遅くなったらしい。

この研究は、多くの若いメンバーの努力の結果できたもの。
多くの人の役に立ちたいという純粋な気持ちでできたもの。
だから、金儲けの道具にしてはいけない。

という山中先生の講演。遺伝子組み換えの特許は
スタンフォード大学関連の企業におさえられているし、
知的財産が思った以上に切実なんだとわかった。
研究に使う分には、特許されてても全然関係ないし、
人を治療する方法は特許されないけど、
医薬品、医療機器などは、特許になるので、
その結果、お金がかかるようになるというのはあり得る。
この人は、科学者である前に、患者を助けたい医師なんだ。
直接講演を聞くことで、気持ちが伝わってきた気がする。
あとは、パネルディスカッション。
あまり興味がなかったことでも、イベントに行くと
いろいろ関心を持つきっかけになるから、非常にいいと思う。