グッド・ニュース

この600ページ近くある本をどう紹介しようか。
非常に例が豊富で読み応えがあり、面白かった。

グッド・ニュース—持続可能な社会はもう始まっている
グッド・ニュース—持続可能な社会はもう始まっているDavid Suzuki Holly Dressel 中小路 佳代子

おすすめ平均
stars環境問題の解決はこれしかない
stars主役交代!
stars持続可能な社会のために
stars世の中の明るい面をみる。

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ふつう、環境の話と言えば悪い(バッド)ニュースと相場が決まっています。そのことが、世界中の人々の間に広がってしまったあきらめや絶望感と密接に関係しているでしょう。〜中略〜よくよく目を凝らし、耳をすませば、世界には多くの良い(グッド)ニュースがあって、数々の深刻な問題を解決に導く道筋を指し示してくれている。答えはそこにある。

やっぱり抽象的な話より具体的な話を読みたいと個人的に思う。

本書で紹介するプログラムや方法論は、きわめて多岐にわたり柔軟性に富んでいるが、その全体を一語で表すとしたら「謙虚」ということになるだろう。

これは確かに感じた。この星に住まわせてもらってる感じ。

ホワイト・ドッグ・カフェ
「レストランを始めて最初の五年間は、事業の経営しかしませんでしたよ。そうせざるを得ませんでしたから。疲れきってベッドに倒れ込んでいました。」

そもそも事業自体が大変だから、こうだよな。

「お金持ちになりたいのではないですから。それには全く興味がないですね。お金を目の前に差し出されても、心は動きません。もちろん貧しいのは嫌ですけど。ただ、もうこれ以上の物は必要ないなというところに達したということです。子どもたちに残すために莫大な富を築こうなどという気もまったくありません。」
「私が本当に信じているのは、良い事業というのは競争的ではなく協力的である、という考え方です。」

競争ではなく、共創なのかな。大切なことは何なのかを考えるのが大事。

この夫妻は、木々に覆われたポートランド郊外で質素な平屋建ての家に30年間ずっと住み続けている。彼らが一年間にこの家から出すゴミは、ゴミ袋2つ分にも満たない。そして小型車を一台だけ持ち、新しい服はめったに買わない。三人の子どもたちの弁当は手作りのサンドイッチとクッキーで、それを包んであるパラフィン紙は、何度も繰り返し使われた。

一年でゴミ袋2つってすごい。似非エコな人々もこれくらいの
心構えを持ってやってくれるといいなあと思ったりする。

「富とは」とコーテンは語り始めた。「私たちのニーズに応え、不足を満たすということに真の価値をもっているもののことです。つまり、地球の自然がもつ生産システムや、工場、家、農場、店、交通・通信設備といった物質的なもの、さらに私たちを支えるモノやサービスを生産するために働く人々こそが富なのです。」

ポール・グレアムの文章で見かけたな。「ハッカーと画家」にある。

Wealth is the fundamental thing. Wealth is stuff we want: food, clothes, houses, cars, gadgets, travel to interesting places, and so on. You can have wealth without having money. If you had a magic machine that could on command make you a car or cook you dinner or do your laundry, or do anything else you wanted, you wouldn't need money. Whereas if you were in the middle of Antarctica, where there is nothing to buy, it wouldn't matter how much money you had.

How to Make Wealth

先日自分が書いた記事は、ポール・グレアムの受け売りか。

「かつては商売を円滑に進めるための手段だったお金が、個人や社会の一生の目的を決めるようになると、経済システムが病に冒されるのです」。コーテンによると、システムが病に冒されたかどうかを見分けるのは比較的簡単だという。「金融資産と金融取引が実質資産の生産高の成長を上回るペースで増加するようになったら、それは世界経済が病気になりかけているという明らかな証拠です」

排出権取引とか知財資産価値とか、そもそも金融って。。。
(まあいろいろメリットがあるのもわかるんだけど)

ある友人はよく、現代社会のことを『みかけはディズニー、味はコーラ、臭いをかぐと胸が悪くなる』と表現します。うわべだけにこだわる、下品で気の滅入るような社会なのに、まるで新しくて刺激的なものであるかのように見せかけているのです。

この喩えはちょっと面白かった。

セイボリーは、新たな成長が見られず、再生もされないと思われる場所では、発芽した草は、捕食動物が牛を襲おうとした地点にだけ根付く可能性があることを発見した。パニック状態に陥ったヌーやアンテロープが、一斉に背中を丸めて、蹄で地面を激しくかき上げ、枯れた草を剥ぎ取って踏みつけることによって、土をほぐすのだ。その場所は、発芽した草を受け入れ、新たに降った雨を吸い込んで再生が可能になる。

この考え方がすごく面白い。肉食動物と草食動物と草が、どれも依存しあってる。
自然ってうまくできてるんだなあと思った。

長い年月の間に生物相がつくり上げたものが、私たちが好きだけれどもよく理解していないものだった場合、一見したところ役に立ちそうにない部分を切り捨ててしまうとしたら、それは愚か者でなくて何であろう。すべての歯車をとっておくことこそ、聡明な修理をするためにまず心がけなければならないことだ。
—アルド・レオポルド(生物学者)

物事は細かく分割した方がわかりやすいけど、全体をみなくてはわからないものも
たくさんあるわけで、全体を意識することの大切さを再認識させられた。
役に立たないと断定することなんて、そうそう簡単にできるもんじゃない。


貧しいとか豊かとか、いいとか悪いとか、GDPで何でもわかるわけじゃない。
自給自足していれば、全然お金が回らなくてもそれなりにうまくやっていける。
物事を一つの側面からではなく多面的にみることが大事なんだろう。
そんなふうに考えるための材料を豊富に含んだこの本は、なかなかいいと思う。
これを鵜呑みにするのもどうかと思うんだけど、一つの考え方として。