地球と一緒に頭を冷やせ!

山形浩生氏が環境問題関連で面白そうな本を訳していたな、とは前から思ってた。

「環境には何も問題がないというわけではないが、今にも地球が滅びるという宣伝をするのは良くない」という彼の意識に共感できたので、『環境危機をあおってはいけない』や『地球と一緒に頭も冷やせ!』を訳すことにしました。

洞爺湖サミット直前だからこそ読んでほしい本:『地球と一緒に頭も冷やせ!』とは?――訳者・山形浩生氏に聞く (1/2) - Business Media 誠

この辺りのインタビューを読んでみて興味を持ったので買ってみた。

地球と一緒に頭も冷やせ! 温暖化問題を問い直す
地球と一緒に頭も冷やせ! 温暖化問題を問い直す山形 浩生

おすすめ平均
stars科学的に正しいことが何かがわかる
stars環境版「反」聖戦論
stars冷静にCO2削減のCost-Benefitを論じた本
stars理想主義と現実主義
starsCO2と地球温暖化の問題を豊富なデータで分析した本

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同じ事が何度も繰り返して書いてあるけど、非常にわかりやすく面白い。

地球温暖化は本当だし人為的なものだ。それは今世紀末にかけて、人類や環境に深刻な影響を与える。とはいえ、マスコミがしょっちゅう描くような、大災厄や文明の終焉じみた特徴は一つも出てこない。

大げさにする印象操作はよくあることなので、冷静に判断することが大事。

地球温暖化に対処しようとすると、気候系の変化がとてもゆっくりしているということと、大幅な排出削減はかなりお金がかかるという二重の問題に直面する。だから、いますぐものすごいお金をかけて大規模なCO_2削減をしても、影響は小さくてどうでもいいくらいのものだし、しかもそれが起こるのはずっと将来になる。

費用対効果というのは、当たり前だけど非常に重要。

多くの人は、リスクが小さくて、大したことはできなくて、しかもお金がものすごくかかっても、やるだけやってみるべきだと言うだろう。でも、気候変動以外に重要な問題はいくらでもあるということは、絶えず忘れないようにしよう。もっとずっとよくわかっている問題で、解決策はずっと安上がりで、効果もずっとよく理解され、政策もずっと堅牢な問題だ。

この部分は特に環境マニア、エコマニアの人に読んで欲しいと思った。
効果が出ないものなんて単なる自己満足なんだから、そこを考えないと。

いちばん重要なこととして、絶対忘れてはいけないことがある。ぼくたちの最終的な目標は、温室効果ガスを減らすことや、温暖化を止めることそのものではなく、人々の暮らしや環境の質を改善することだ。

結局どうしたいのかということを考えない限り有効な策なんて出てこない。
手段と目的を取り違えてるんじゃないの?という話。非常に真っ当な意見である。
CO_2を減らすよりも、直接マラリア対策をしたり、飢餓撲滅に直接投資したり
した方が、大勢の人の生活を改善できるのだから。使うお金に限りがあるので
全てに投資することはできないから、もうちょっと使い道を考えようって話。


他にもいろいろ書いてあるけど、おおざっぱにこんな感じかな。
科学的に考えるとこういう感じだけど、別の側面も少し考えてみた。
地球温暖化を過剰に取り上げることで、そっちに目を向かわせるのは、
ある集団を団結させるために、外敵をつくる行為に似ているような気がする。
宇宙人が攻めてくるっていうよりも、自分が住む環境のことを考えようの方が
もっともらしく共通の目標になりやすい気がする。これがあるおかげで
戦争とか小競り合いとかが減っているとしたら、それは価値あることかもしれない。
たとえ嘘と誇張にまみれたいい加減な煽りだったとしても。


それから、もう一つ。単なるマネーゲームというケース。妄想の域を出ないけど、
ヨーロッパがスムーズにアジアとアメリカを押さえ込むシナリオとも考えられる。
自分が不利ならルールを変えようというカルチャーなので、それが自然かもしれない。
炭素に税金をかけて、製造業からちびちびお金をかすめ取るとか考えると
やっぱりルールを作れる人間ってのは強いなあと思ったりする。
極端なことをいえば、あまり効果のでない政策で、貧困を撲滅しないようにして
人口が増えすぎないようにして、難民流入を防ごうって人もいるかもね。
正直何考えてるかわかんないし、何も考えてないのかもしれない。


要するに、前提を疑って、いろいろ考えるのも大事なんじゃないのってことだ。
何もしないことがいいことだとは思わないけど、効果のでないことをやって
何かをやった気分になるってのはもっとよくないと思ったりする。
まあ他人のことだからどうでもいいけど。あとやっぱりルール作りが大事。