宇宙創成

何かを学ぼうと思ったときにその歴史を学ぶことは、一見遠回りのようで
案外確実な近道なのかもしれない。この本を読んでそんなことを感じた。
宇宙創成〈上〉 (新潮文庫) (文庫)
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簡単なことであれば、結論からちょっとだけ遡るだけで大体把握できるが、
「宇宙創成」という大きなテーマになってくると、そんなアプローチでは全く
わかる気がしない。そんなわけで、古代ギリシャまで遡って、そこから順々に
この分野の発展を追っていくことを丁寧にやっているこの本が、非常に楽しめた。


コペルニクスが地動説を唱え、ティコ・ブラーエが精度の高い測定を行い、ケプラーが計算により楕円軌道であることを突き止め、ガリレオが望遠鏡で証拠を見いだす。
天動説をひっくり返すのがどれほど大変だったかよくわかる。
どこまで行っても仮説を立てて検証するというプロセスなしではありえない。
宇宙は静的なのか、それとも動的なのか。アインシュタインが必要とした宇宙定数。
それにより生じる一種の反重力効果。断片的な知識が、歴史を辿ることでつながり合う。
遠く離れた星までの距離をどうやって測るのか、ビッグバンから5分間に何があったか。
理論と実験の両面から次々に展開するストーリーに非常に惹きつけられた。


しかし、個人的にサイモン・シンの本で最も好きなのは、人物描写である。
科学者一人一人が実に生き生きしていて、好奇心旺盛で、読んでいて楽しい。
特にジョージ・ガモフが面白かった。いつも他人をおちょくっていて笑える。
大勢の人が必死に取り組んだ結果が現在につながっていると改めて認識させられた。

大切なのは、問いを発するのを止めないことです。好奇心にはそれ自体として存在理由があるのです。永遠や、生命や、実在の驚くべき構造のことを考えるとき、人は畏怖の念を抱かずにはいられません。日々、そんな不思議をほんの少しでも理解しようと努めるならば、それで十分なのです。by アインシュタイン

とにかく面白いし、前提知識なしで読めるので、非常にお薦めの本である。