宇宙クリケット大戦争

読書感想文5つ目。銀河ヒッチハイクガイド3作目。
宇宙クリケット大戦争 (河出文庫) (文庫)
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相変わらずいろいろ無茶苦茶なSFだけど、これまで読んだ3作品の中でこれが一番よくまとまっているんじゃないのかな。論理的に物事を考えたくないときとか、突拍子もない話が読みたいときとかに、このシリーズを読むことをお勧めしておく。ストーリーを書いてもしょうがないかなと思ったので、何カ所かピックアップだけしておこう。

この宇宙に住む者を一人残らず侮辱してやるのだ。個別に、面と向かって、ひとりずつ、そして(じつは、これこそ石にかじりついても実行しようと決意したことなのだが)アルファベット順に。

不死者になって暇をもてあますと↑みたいなことを考えてしまうこともあるそうだ。

「ぼくは医者に、公徳心分泌腺に形成異常があるって言われてるんだ。それに良識繊維が先天的に欠損してるって」彼はぼやいた。「だから宇宙を救ったりしなくていいって言われてるのに」

さらっとこんなことを言ってるフォードがなかなかいい。

「このクリキット人ってさあ」〜中略〜「その、なんて言うか、全然悪いやつらじゃないんだよな。ただ運悪く、どいつもこいつもぶっ殺してやりたいって思っているだけでさ。わかるよ、おれだってそういう気分の朝があるもんな。」〜中略〜「そういうことだと、こいつらと同じ銀河系にはやっぱ生きていたくないわけだ」

ここもなかなか面白かった。「運悪く」で片付けてるところが特に。

「要点をいいたまえ」
「ロボットたちは気乗りがせんようなのです」
「なににだ」
「この戦争にです。どうもうんざりしているようでして。厭世的というか、むしろ厭宇宙的と言うべきかもしれませんが」
「結構なことではないか。宇宙を破壊するために作られたんだからな」
「そうなのですが、それが面倒だと思っているようなのです。倦怠感に襲われているというか、仕事に熱が入らないというか。要するにやる気が起きないんですな」
「何が言いたいんだね」
「つまりその、思うにロボットたちはとても気が滅入っているようで・・・・・・理由はわかりませんが」
「いったいきみはなんの話をしておるのかね」
「つまりその、先頃ちょっとした小競り合いがあったのですが、いざ戦闘となって、武器を振りあげて発射しようとすると、急に『こんなことをしてなんになる』とか『宇宙的に見て何の意味があるのだ』とか、そういう気がし始めるようなのです。なんだかだるそうだし、調子も悪そうです」
「それで、いまはなにをやってるんだ」
「その、おおむね二次方程式を解いています。それが、だれが見てもやたらにむずかしい方程式して。それでふてくされています」
「ふてくされている?」
「はい」
「ロボットがふてくされてどうするのだ」
「さあ、わたしにはなんとも」

このやりとりも個人的にけっこう斬新で面白かった。こんな感じでピックアップしてもたぶんさっぱりわからないと思うけど、読んだところで意味不明なことに違いはないので、まあいいことにする。