話すウェブ

The Economistの記事3本目。読み書きできない人のためのウェブ。
A web of sound: Talk about that | The Economist
http://www.economist.com/sciencetechnology/displaystory.cfm?story_id=13855374
インターネットというのは素晴らしいんだけど、読み書きできる人とできない人の間の差を広げている。そこでIBMインドリサーチラボのGuruduth Banavarらは、読み書きできない人でもwebsiteを作れるようなシステムを考案した。HTMLみたいなvoice extensible markup languageとして知られるものに基づくシステムである。これを使えば、声だけでwebsiteを作ったり操作したりできる。
発展途上国では、コンピュータよりも携帯電話の方が普及していて、多くの銀行業務や送金サービスが携帯電話で行われているのだが、もっと携帯電話を活用して、声のサイトを従来のサーバ上において、従来のwebsiteのように動作させたいと思っている。現地の人が通常使用するように設計して、移動病院が村に次いつ来るかとか、マーケットの米の値段とか、どの井戸で水を引けるのかとかをポータルサイトから使えるようにするとのこと。電話をかけてつなぎ、声とボタン入力で音声メッセージを聞く。
コールセンターと違うのは、コンテンツを登録できるところ。コメントを録音することで、それを他の人が聞ける。最近追加されたものとか、最も良く聞かれているものとかでソートも可能だ。まだ実験段階だけど、素人でも10分くらいで使い方を学んで、自分の声のサイトをつくることができるようになるだろう。
大工とか原付三輪車の運転手とかが、自分のサービスの宣伝をしたり、仕事を受けたりできる。こういう携帯電話は大体共有のものなので、いつも持っているわけではないけど、不在時に仕事を受けることもできる。普通のサイトと同じように、リンクしたり、進んだり、戻ったりできるのだが、これはhttpではなくhtsp(hyperspeech transfer protocol)で実現されている。
携帯電話市場が最も急速に成長している国の一つであるインドは、この計画を実行するにふさわしい。12億人の人口の3分の1以上が携帯電話を持っているが、大抵友人や家族と共有している。そんなわけで、IBMはこのトライアルとインドの何カ所かで行っている。
あと、通話料の問題があるが、これについてはいろいろと検討しているとのこと。公共サービスは、フリーダイヤルでやったり、補助金をだしたりするし、商業サイトは、トランザクションの何%かを課金する予定だとのこと。視覚に訴える広告よりも音声広告の方が回避しにくいので、広告収入も見込めるんじゃないかとのこと。

感想

フィリピンではたくさんの人が英語を話せるのに、つづりがわからなくて検索エンジンが使えないという話を先日聞いた。読み書きができることと、話せることってのは違うんだな、文字って偉大だな、なんてことを思った。識字率が低い国は、まだまだたくさんあるようだ。
http://www.unicef.or.jp/library/toukei_2006/m_dat5.pdf
識字率を上げる試みは試みとして継続するとして、文字が読めなくても使えるものを作ろうという発想が面白い。問題を解決する手段として、多面的に取り組んで見るのは効果的だろう。それからインドの人口がいつの間にか12億人ってことに驚いた。メディアが一対多から多対多に変化してきて、みんなでコンテンツを作って、みんなで消費し始めたら、良くも悪くもインパクトが大きそうで楽しくなりそうだな。技術により生活が大きく変わるのは、非常に興味深いものがある。いい面も悪い面もあるけれど、それらをひっくるめて螺旋を描きながら進ませて行けたらいいと思う。