Face value : Iliad's warriorについて

先月のThe EconomistのFace valueにフランスの通信会社Iliadの創業者が取り上げられていたのだが、記事のタイトル"Iliad's warrior"の意図が正直言ってよくわからなかった。
http://www.economist.com/people/displaystory.cfm?story_id=14402214
ホメロスイリアスと通信会社Iliadをかけているのはわかるけど、本文にそれ以上のつながりが見いだせなかったので、あんまり関係なさげと書いたら、師匠からそれはどうなのかという指摘され、記事から読み取れる関連性を指導していただいたので、整理しておくことにする。


イリアスというのは、叙事詩のタイトルだけど、トルコ側の難攻不落の城の名称でもある。アカイア人(ギリシャ側)が海を渡って何度も攻めて、陥落させることになる。この難攻不落の城が、フランスの通信業界を牛耳っているBig 3(Orange、SFR、Bouygues Telecom)を指すだろうとことはわかる。それに対してトリプルプレイの格安プランで攻め込むXavier Niel率いるIliadは、孫正義ソフトバンクっぽくもあるけど、叙事詩イリアスで言えば、アカイア人だろう。長髪な風貌もなんとなくアカイア人っぽい気がする。
Xavier Nielを取り上げた記事ならアカイアの戦士じゃないの?なんでイリアスの戦士なの?というのが最初に読んだときに感想。そもそもなんでこの会社はIliadって縁起悪そうな名前をつけたんだろう。難攻不落の会社にするんだって感じなんだろうか。
そういうわけで対応関係がいまいちすっきりとせず、本文とイリアスはあんまり関係なさそうに感じた。今思うと確かに浅い読み方である。イリアスの戦士を「イリアスを守る戦士」としか見てなかったけど、「叙事詩イリアスに出てくる戦士」、「イリアスをめぐる戦争に関わる戦士」とすると、ギリシャ側もトルコ側も含まれるのですっきり読める。不思議に思うことは重要であるが、些末なところにこだわりすぎたか。
それから、イリアスという物語は、人間の戦争に神々がいろいろと介入してくる話であり、フランス通信業界もまた然りではなかろうかという示唆を受けた。

こうやって、神様へのお祈りを欠かさないというのも、この物語に欠かせない要素。
けっこう神様が単純なので、祈るとだいたい命を守ってくれるのである。
ずるいといえばずるいけど、この物語ではそういうルールなんだろう。

イリアス 下 - technophobia

イリアス単体では一応読めていただけに、これに気づかなかったのはけっこう悔しい。フランスビジネスの現人神についての背景知識が欠けているな。このあたりを考えながら記事を読み返してみると、違った視点から楽しめそうだ。