シティボーイズに見る労力と価値

最近いくつかモンティパイソンのスケッチを見た影響だと思うが、ずいぶん前に買ったシティボーイズのDVDを見たくなったので見てみた。
シティボーイズDVD-BOX RETROSPECTIVE-CITYBOYS LIVE! [BOX1]
B00009SF4V
ここに出てくる「自己破産の日」というやつが特に面白かった。自己破産申請する人(きたろう)が、弁護士(大竹まこと)と喫茶店で話していて、もう贅沢はしませんね、と念を押されているのに、謎の物売り(斉木しげる)にいろいろ売りつけられてしまう話である。破産者は、弁護士が席を外している間に「元値100万円の灰皿が10円」「鑑定書付」を買ってしまい、それを知った弁護士に咎められるところまでが前半。後半のビデオがあった。
http://video.nifty.com/cs/catalog/video_metadata/catalog_090510198281_1.htm?nwsThough=1
普通に見ているだけでも面白かったが、よくよく考えてみるとけっこう深いネタな気がする。いろいろなどうでもいい商品を買いたい衝動に駆られているのを見るのも面白いのだが、個人的には商品自体とその見せ方が興味深かった。以下ネタバレになるけど、バラさないと何もかけないのでバラすことにしよう。

  • 元値100万円の灰皿(鑑定書付)

10円。鑑定書だけでも25円するとのこと。

一回入れれば一生使える。とにかく巨大。

  • 瓶蓋ジャム、瓶蓋蓋ジャム(パン付き)

瓶の蓋に付いたジャムをこそいでこそいでこそいで作ったジャム。ジャムの蓋120個から1つできる。11000円。この瓶蓋ジャムの蓋120個からできるのが瓶蓋蓋ジャム。11200円。

  • あと一筆で使い切れるボールペン

100円。ひらがなは大体大丈夫だけど、「ほ」は途中でなくなるかも。あと一回で使い切れる100円ライター、あと一回で使い切れるメンタームも販売中。

  • 20年間磨きに磨いた棒

毎日欠かさず20年間磨きに磨いた棒。20万円。
一つ一つが実に象徴的な気がする。単に安いからという理由で買うことはないし、元値は参考にならないし、鑑定書が付いてるからなんなんだ。一生使えるなんてのも別に今一生分買わなくていい。瓶蓋と瓶蓋蓋の差が200円というのは実にうまいな。あと一回シリーズは物自体ではなく体験を売っているんだな。棒は、労力と価値が全然リンクしない例として興味深い。どれも他のところでは売っていないレア物だけど、(人によるけど)不要なモノばかり。レアであることを買うべき理由にしてはいけないのがよくわかる。だってそれ自体は全然価値と関係ないんだから。別にこういうものを買いたい人が買うのはどうでもいいと思う。単に自分が買い物をするときになぜそれが必要なのかを改めて考えてみると、これらの例は面白い気がする。


あんまり書くといろいろと語弊がありそうだけど、これって商品だけじゃなくて人間にも当てはまりそうだな。労働市場でこんな志願者に飛びついてはいけない、みたいな感じ。前の会社でこんなにお金を貰っていて、学歴という鑑定書がついていて、しかも格安。でもいらないものにお金を払うことはない。せっせと自分磨きに励んで、20年間磨きに磨いた棒にはなりたくないな。人生に無駄はないとは言うけれど、それは後からうまくconnecting dotsをできた人にしか言えないこと。何がいいとかはっきり言うことはできないけど、短期的に見て、長期的に見て、自分らしい価値が出せればいいと思う。