第40回The Economist読む隊

なんとなく一段落したので(といってもまだまだだけど)書こう。気が向いたので先日のエコ隊のレポートを書くことにする。3月に始めて40回目のようだ。毎週やるとけっこうな回数になるんだな。

一つ目の記事:パネットーネ

http://www.economist.com/businessfinance/displaystory.cfm?story_id=15065541
イタリアのクリスマスのお菓子、パネットーネ。イタリア(人口6000万弱)国内で4000万個の消費が見込まれている。そのパネットーネだが、BBCの料理番組を20年間担当して、英国中に絶大なる影響力を持つDeliaさんが、Delia’s Classic Christmasという番組でパネットーネを使ったクリスマストライフルというお菓子のレシピを紹介したことやその他諸々の影響で需要が急激に伸びているようだ。
この需要に応えようとイタリアのパネットーネ製造業者が頑張っている。老舗なとこは、ちょっと詰め込んで頑張ればいいみたいだけど、Bauliみたいなハイテクをガンガン取り入れたところは、今シーズンで1200万個も作るから根本的なところから見直す必要がある。正社員800人なのに、パネットーネの製造ライン用に季節労働者を最大1200人雇って対応。今年はネスレからMotta, Alemagnaという2つのパネットーネブランドを買収したし、無添加で5ヶ月保存できるパネットーネが8ユーロ(老舗のは30ユーロ)で買えてしまうので、今後のBauliのパネットーネに請うご期待、といったところか。
お菓子の話は、作りながらやった方が理解を促進させるんじゃないかと思ったり思わなかったりしたので、改善の余地あり。

二つ目の記事:寂しさは伝染るんです

http://www.economist.com/sciencetechnology/displaystory.cfm?story_id=15063920

Framingham研究は,第二次世界大戦終了後の間もない1948年,心血管合併症増加への対応を検討するため,米国公衆衛生局のNational Heart Instituteは米国北部の住民28000人の町,Framingham市(Massachusetts州)において大規模前向き研究(Thomas Dawber監修)を企画し,その開始を決定した。当時の同研究の決定は,現在においても高い先見性を示したものと評価される。

Framingham����

このFramingham市の研究データのなかの付随的な情報、住人の人間関係やアンケートが別の分野の研究者の目に留まるとこういう研究がされますよ、という話。そもそも心臓血管関連の病気の調査をするのが目的で、たまたま引っ越した場合などに対応できるように家族構成や人間関係のデータを取っていて、それからたまたま一週間に何日くらい寂しい気持ちになりますか?というアンケートを取っていた時期があって、今回それらを組み合わせてみた人がいたというのが面白い。
マッピングしてみると、寂しがり屋さん(週に3日以上寂しさを感じる人)が何カ所かに集まっているのがわかる。今回は、たまたま気が向いたので読んでみた論文によると、寂しがり屋さんが集まるのは前からわかっていて、その理由として3つの仮説があるとのこと。(これに関してはエコノミストの記事には書いてなかった。)

  1. 寂しさは伝染るんです
  2. 類は友を呼ぶ
  3. 環境が寂しさをつくる

ちなみに今回の結果は、寂しさが3次の隔たりまで伝わっていると見られるので、1番目の仮説がいいんじゃないのって言ってる。条件付確率で考えて、ある人物が寂しがり屋さんかどうかを考えるときに、その人の知り合いに寂しがり屋さんがいることで確率はどう変化するかという話。直でつながるときは、平均より50%も上がって、友人の友人みたいに2次的になると25%、3次だと10%上がるとのこと。著者の一人が公開している情報によると、時間的な変化も見ているみたい。
その後考察において、寂しさが伝わるのは、寂しがり屋さんが、他人に対して冷たく接するからじゃないの?という仮説が挙げられている。寂しくなって冷たく接して、また友達をなくすスパイラル。この研究によると、男性よりも女性の方が寂しさは伝わりやすく、家族よりも友人の方が寂しさは伝わりやすいとのこと。女性の方が冷たくされたときにダメージを受けやすいし、家族関係よりも友人関係の方がabandonするコストが低いからじゃないかと著者らは考えているみたい。で、これは第一歩に過ぎなくて、寂しさが伝わりにくい公共政策とか都市計画とかできないのかなと考えて、他の都市の調査もしているとのこと。
そこから公共政策まで持っていく応用力がすごいと思う。研究費を集めたり、アテンションを集めたりするのに長けている印象を受けた。それからやはり興味深いのは、データが全然想定されていなかった使い方をされている点である。ここ2,3ヶ月くらいサイエンス・コモンズ翻訳プロジェクトに関わっているというか、翻訳したり翻訳チェックしたりで、翻訳全件に目を通しているのだが、今回の研究って、サイエンス・コモンズのデータ共有プロジェクトがまさに期待していることじゃないかと思った。データを公開するときって、同じ時代に生きる人で使う人を考えるかもしれないけど、こうして数十年後に全然想定されてなかった使い方がされるのも非常に面白いと思う。人間が想像できる範囲なんて非常に限定的なわけで、データをきっちり取って置いて次の世代に渡してみるというのもなかなか興味深いと、今回の実例を通して感じた。CC0ってゲノムの分野をイメージしやすいけど、こういう分野でも面白いかもしれない。

三つ目の記事:今週の政治

http://www.economist.com/displaystory.cfm?story_id=15089285
一言だけ突っ込んでおくと、Morales’s democracyかな。どの辺がどんな風にdemocracyなのかと小一時間(略)(懐かしい表現)。

40回やってみた感想

よくここまで続いたな。近所に住んでいて集まりやすいというのが要因として大きいわけだけど、それにしても良く続いていると思う。成功したプロジェクトには、本気でプロジェクトに関わっている人間がいる、という話を聞いたことがあるが、今回のケースにもけっこう当てはまる気がした。一人でもやるし、他の人が入ってくれると幅が広がって楽しくなるからいいねと思って始めたことなので、個人的にわりとプライオリティ高めだったし、

正直に言います。
めちゃくちゃ楽しいですこの集まり。
どのくらい楽しいかというと、一週間これだけを楽しみに生活しているくらい楽しいです。

The Economist読む隊まとめ2009年3月号 - 科学と非科学の迷宮

ここまで嵌ってくれる人を呼び込めたのも大きかった。はてなグループで議事録を集めようと言って、速攻作ってくれたので、それが淡々と現在まで続いている。やる気というよくわからないエネルギーは物事を推進する力なんだなと改めて思った。楽しみながら予習ができるというのも、なかなか重要なポイントかと思う。はてなブックマークで他の人と予習をシェアすると、こっちも早くやらないとという気分になってくるし、これは一人ではできない。効用として一番大きいのは、この雑誌に対する抵抗がほとんどなくなったことだろうか。今後エコ隊がどう変わっていくのか、どう変えていくのか、まだ全然考えていないけど、楽しみながら他の人の視点が得られたらいいなと思う。