変化の最前線にいることの価値

近頃「戦争請負会社」を読んでいて、ちょっと考えさせられた箇所があった。

MPRI社は利益率が高く競争力のある成長会社で、同社にかなう訓練会社はないし、その業務は我々の製品と補完的です。さらにそのうえ、同社は国防業務における二つの明らかな変化の最前線(the forefront of dynamics)に位置しています。米国軍隊は多くの機能を民営化し、増大する活動費や維持費の予算を減らして、拡大する一方の国家安全保障のニーズと、軍隊の人員削減を補おうとしているのです。MPRI社は変化する政治環境がある種の業務への需要を増大させているなかで、国際的最前線でも活発に活動しています・・・・・・こうした事業は拡大する傾向があり、他の機会につながっているのです。

ちなみにMPRIというのは、米軍の退役将校を大量に抱える軍事コンサルティング企業で「一平方フィート当たり将軍の数は、ここのほうがペンタゴンより上だ」と幹部が言っている会社。この会社をL3という会社が買収するときに、その理由として言ったことが上で引用した部分。the forefront of dynamicsにいること自体を評価していて、ちょっと新鮮な気がした。
自分が関わる業界という意味でも、地理的な意味でも、場所というのは、思った以上に重要なのかもしれない。the right position at the right timeとかa great vantage pointとかいう言葉もあるわけで、世の中が目まぐるしく動いているのに自分は・・・という焦りは否定できないし、そろそろコンフォートゾーンじゃないところへ行こうかと思う。

30歳すぎて、40歳すぎて、専門領域である程度自分のプレゼンスもできて、プライドも生まれ、仕事もあって、勉強しないで仕事すればその分一年にこのくらい稼げる、みたいな状況になったら、なかなかもう一回勉強しに戻るということができません。 20代の、まだ失うものが全くないとき

「自分の力と時代の力」講演録(JTPAシリコンバレー・カンファレンス2009年3月21日) - My Life Between Silicon Valley and Japan

というのは、今じゃないかと思うので、会社を辞めて8月からシンガポールの大学院に行くことにした。大学に受かるかどうかわからない状態で会社を辞めると言ってから3ヶ月(長かった)。Intellectual Property managementのコースから合格の知らせが来たので行けるみたい。(エッセイの添削してくれたEditage, アレンジしてくれた坂東さん(id:keitabando), その後チェックしてくれた後藤さん、ありがとうございます。)シリコンバレーツアーで出会った先行部隊は、試用期間を乗り越えて現地でたくましくsurviveしているみたいで頼もしい限りである。

これからは自分の目で見て、自分の肌で感じたことをベースに、単なる分析、分解論を越えて語れ、それを引き起こせる人の時代になる。

「大人たちにほめられるような馬鹿にはなりたくない」 - ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Being between Neuroscience and Marketing

全然先が見えないこの状況で、収入もなくなってどうするんだろう、と思わなくもないけど、それほど不安はない。まあどうでもいいかとなげやりになっている気がしないでもない。あんまり先のことをかっちりと決めてもしょうがないし、別に死ぬわけじゃないし、風邪をひかずにいろいろ楽しんでいけたらいいと思う。マンションも車も要らないし、他人の目も気にしないし、いざとなれば一日5ドルくらいまで生活水準を落とせるとか考えたらリスクなんてないし、人間けっこう自由になれるんだな、と思った。その自由になった2年間を生かすも殺すも自分次第ということは常に頭に入れておこう。発展するアジアの金融の中心地で、知的財産がどう金融と絡んでいくのか。open innovationとclosed innovationをどう使い分けていくのか。インドと中国のfrugal innovationは、どういう方向に進んでいくのか。super cruncherがbig dataを使ってどんな変化を起こしているのか。変化の最前線で自分にできることを考え、あとは行動するのみである。