模倣品は悪なのか?

近頃Trade Mark(商標)の講義を連続して受けていて、なかなか興味深いやりとりがあったので記録しておこう。
シンガポールは中国系の人が多いけど、長い間英国の統治下にあったので英国に大きく影響されている。そういうわけでサッカーといえばプレミアリーグで、講義中に「アーセナル(Arsenal)のファンの人、手を挙げて」「マンチェスターユナイテッドのファンの人、手を挙げて」みたいなことが聞かれたりする。ここで聞かれた理由は、許可なくアーセナルのグッズを販売する業者に対してアーセナルが訴訟を起こしたケースが講義で取り上げられたから。被告は、ライセンスを受けずにアーセナルのロゴを貼り付けてグッズを販売し、アーセナルの許可は取ってませんと表示していたらしい。
模倣品の問題点の一つは、消費者が間違って買ってしまって、authorizeされたものが売れなくなってしまうことである。しかし、許可をとっていないと明確に表示した場合、消費者が間違う可能性は低い。別の問題点としては、アーセナルのロゴが付いていて、正規品と無許可のものが出まわってしまうとロゴが出所を表示しないことになるということ。お店で「許可を取っていません」とわざわざ書かないとわからないということは、売れた後に区別がつかないわけで、それってどうなの?という話。
講義で出てきた意見としては

  • ファンは、自分が買うことによって少しでもチームや選手にお金が行って欲しいと思っているのでは?
  • 自分は中国の出身で、たぶん無許可だけどグッズを売る店が近くにあって、そこで買ったものを身につけて応援していた。たとえ模倣品だとしても、自分はそれを身につけて応援できてうれしかったので、全面的に否定することはできない。

という感じ。ちなみに結果は、アーセナルの主張が支持されている。
Arsenal wins landmark trade mark ruling
http://www.out-law.com/page-3594
でも、England's Court of AppealとEuropean Court of Justiceで意見が分かれていてなかなか興味深い。これは、被告自身がアーセナルのファンなのがややこしいところ。身近に模倣品があるところで育った人の意見を聞けるというのは、なかなか興味深いと思った。物事を多面的にとらえるように意識しよう。