GFIP2011に参加してきた

長くなりそうなのでいくつかピックアップして書いておこう。Global Forum on Intellectual Property 2011なるイベントがシンガポールで開催されていたので行ってきた。今年で3回目らしい。裁判官や弁護士、知財部門の人、などなどいろいろ。知的財産(特に特許)の分野というのは、もともと法律屋さんと技術屋さんが互いに好き勝手なことをいっていたところ、近頃金融屋さんも入り込んでますますカオスな分野になりつつある印象を受けた。アメリカで特許弁護士になるには、理学か工学の学部を出て、3年間ロースクールに行くのが条件となっているように、2つの分野にまたがる人もけっこう多いかもしれない。
法律屋さんの仕事はルールを決めることだと思う。判例が重要となるコモンローの国では特に。インドのcompulsoly license(強制的なライセンス)の話が面白かった。インドにはまだまだ貧しい人が多く、HIVの薬などは高すぎて全然手が届かないんだとか。それは薬の特許によるものであり、製薬会社はライセンスするけれどもインドの庶民にとって高過ぎるとのこと。そこで政府がreasonableな価格でライセンスしたまえと強制的にライセンスさせるかどうかが議論になっているそうだ。このcompusoly licenseを乱用してしまうと、企業側にとって悪影響があるのでさじ加減が難しいとのこと。大切なのはいつもどこに線を引くかなんだな。
金融屋さんの仕事は、特許の価値評価ではないかと感じた。金融商品の一つとして投資家のポートフォリオに組み込んでもらうため、またはM&Aにおけるintangible assetの評価のため、なんらかの形で価値を評価する必要がある。古典的な手法は依然として有効といっていたのが印象的。値段がつけられないものは、取引ができないから流動性も低く、良くも悪くも産業がうまれないなあと思った。流動性が上がって、R&Dが活性化するとよいなあと思った。
技術屋さんの仕事は、正直よくわからなかった。技術の目利き的なことなのかな。そもそもR&Dもっと頑張れってことなのかな。もっと他の仕事をしている人を理解しやがれってことなのかな。どうなんだろう。役割によって必要なスキルは違うけど、一人で全部できるようになる必要はないわけで、協力しながらうまい具合に物事が進めばいいと思う。
特許があるのが前提になっているけれども、「反知的独占」を読むとその考えも根底から揺さぶられる。今特許法を教えにきているGerald Dworkin教授は、legal philosophyが専門なので、そこらへんの根っこの部分にも自分の関心が行くようになった。
いろんな側面が複雑に入り組んでいてなかなか面白い。各分野の人がそれぞれの分野でよりよい(?)社会のために頑張っているのがよくわかった。アメリカのCAFC(Court of Appeals for the Federal Circuit、日本で言う知財高裁みたいなとこ)のchief justiceがステージ上でいきなり歌いだしたりして、日本の裁判官ではあり得ないなと思った。あとEUがいかに各国の意思を尊重しながら統合を進めているかも感じることができて良かった。まだ消化しきれていないけど、とりあえず自分が見ている方向、自分がやってきたことはそんなに間違ってない気がした。