独占禁止法

アメリカだとantitrust law(反トラスト法)と呼び、他の国だとcompetition law(競争法)と呼ぶけど中身は似たようなものだ。シャーマン法というのがアメリカにあって、そのときにトラストという言葉を使ったから、その名残りとして反トラストと呼ぶみたい。特許というのは一時的な独占を認めるものだけど、独占というのは競争を阻害し、世の中によろしくない影響を与えることもあるので、状況によっては排除しましょうという話。特許法に続いてこの競争法を学んでいる。
シンガポールの競争法は英国がベースになっているが、自由貿易協定(FTA)の関係で米国の影響も受けている。英国版と米国版で使う言葉が違って、中身も微妙に違うところがあるけど、本質的なところは大体同じ。複数の企業が絡む場合と独占的な立場の1社の場合で分けて考えるとわかりやすい。

複数の企業が絡む場合(Section34)

例としてカルテル(cartel)がわかりやすい。複数の企業が競争しないように協定を結んで、価格を横並びにしたり、供給を調整したりすること。シンガポールからマレーシア、タイにいくバスで、バス会社が同時期に同額のサーチャージ(燃料、ピーク時期)を要求したのが問題になったそうだ。あと豪州のQantas航空と英国のBritish Airwaysが、(シンガポールを経由して)豪州と英国を移動する顧客のために、シンガポール豪州間とシンガポール英国間のそれぞれの料金を2社で横並びにして、乗り換えを容易にしたのが問題になったらしい。

独占的な1社の場合(Section47)

小売りとサプライヤなどの垂直な関係にある企業のうちの1社が独占的な立場を利用して競争を阻害する状況。例えば大口の顧客が、うちはたくさん注文するから他のところには供給しないでくれと要求するのは、競合を減らして競争が阻害されるのでよろしくない。あとコストを下回る価格で商品を売るケース(predatory pricing)。競合を排除してしまうため、競争が阻害される。

M&A(Section54)

もう一つ禁止しているのがあって、それはM&A。市場でプレイヤーが減って競争が少なくなるから、著しく競争を減らすようなM&Aは禁止されている。
シンガポールにはCompetition Commission of Singapore(CCS)という機関があって、これが公正取引委員会に相当するんだと思う。独占権を与える著作権法や特許法の中にも過度の独占を防止する規定があって、著作権法にはフェアユース(Fair Dealing)規定があり、特許法にはCompulsory License(強制的ライセンス)の規定があるわけだが、それとは別に上記のような独占禁止法が設けられている。知的財産法の中だけで独占を与えるものと過度の独占を禁止する項目を設けるやり方と、過度の独占を禁止するのは別の法律にするというやり方と、その両方を使うというやり方があって、現在は3つ目の選択肢である両方を使って過度の独占を防止しようとしているが、それがベストなのかはまだなんともという状況らしい。
こうして知らない分野に首を突っ込んでみると、その分野で真剣に頭をひねりながら議論をしている人たちの存在がわかる。大切なのはどこに線を引くかなんだろうな。政治の独占はOKで経済の独占はNGというのはなかなか興味深いけど、そこに線を引いたということか。