「圧倒的に生産性の高い人」に共通すること、それがこの本のテーマである。そこで重要になってくるのが「イシュー」。「何に答えを出すべきなのか」についてブレることなく活動に取り組むことがカギとのこと。
- プロフェッショナルにとって、バリューのある仕事とは何か?
「自分のおかれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ」と「そのイシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合い」。
世の中で「問題かもしれない」と言われていることの総数を100とすれば、今、この局面で本当に白黒をはっきりさせるべき問題はせいぜい2つか3つくらいだ。
つまり、あれもこれもとがむしゃらにやるのではなく、本当に必要な部分に絞り込むことの重要さについて丁寧に説明している。
- 「一次情報を死守せよ」
- 現場で情報に接するときに、どこまで深みのある情報をつかむことができるか、それはその人のベースになっている力そのものだ。
- 対峙する問題を深いコンテキスト(文脈)に沿って理解できるか、それが最初の勝負どころとなる
答えを出すべきイシューを仮説を含めて明確にすることで、ムダな作業が大きく減る。つまり生産性が上がるのだ。
こんな感じで一言一言がクリティカルに書かれた本である。
- 何はともあれ「言葉」にする
- 言葉にするときに詰まる部分こそイシューとしても詰まっていない部分であり、仮説を持たずに作業を進めようとしている部分なのだ。
- 人間は言葉にしない限り概念をまとめることができない。「絵」や「図」はイメージをつかむためには有用だが、概念をきっちりと定義するのは言葉にしかできない技だ。
- 主語と同士を入れた文章にするとあいまいさが消え、仮説の制度がぐっと高まる。
これは翻訳をしていたのでよくわかる。理解があやふやだとうまく言葉に落とし込めない。特許の請求項なんて概念を言葉にする最たるものだと思う。日本語で明快な文章を書くというのは案外大変だということに気づかされる。
- よいイシュー
- 答えが出るとそこから先の検討方向性に大きく影響を与える
- 「常識を覆すような洞察」があったり、「新しい構造」で世の中を説明したりしている
- きっちりと答えを出せる
よくないイシューに関して取り組んでも時間と労力のムダなわけで、そこの見極めが重要。答えが出ない問題にずっと取り組み続けるのも、「圧倒的に生産性が高い人」というこの本のテーマとはずれてくる。ある人にとってイシューであっても他の人にとってはイシューではないことが往々にしてあるので厄介。
- 一般的に信じられていることを並べて、そのなかで否定できる、あるいは異なる視点で説明できるものがないか考える
というのが仮説を深める簡単な方法とのこと。
これでざっと最初の三分の一くらい。目から鱗という言葉はこの本のためにあるのではないかと感じるくらい洞察に満ちた本である。しかも問題提起で終わらず、具体的にどう取り組んでいくかについても詳しく言及してあり、一言一言が重かった。薄っぺらい中身の本をたくさん読むよりも、こういう本を一冊だけ読んで次につなげていくのが大切だと思う。
自分にとってのイシューとは何か。技術を進歩に関心があり、R&Dにcashが流れ込むようにすればよいと思い、そこからpatentに関心を持った。patent creationの仕事を4年やって、現在のlicensingによるcashingのモデルがsustainableなのか疑問に思った。patentをcashにする手段としてlicensing以外に何があるか。そんなことを考えながら今シンガポールでIP managementのコースにいる。
また技術の進歩に関心があり、権利関係やdataのinteroperabilityにボトルネックがあると思い、そこをどうにかしようと考えれば、science commons(creative commons in science)にたどり着く。そんな感じで自分のイシューを真剣に考えることが、次のステップへの第一歩なんだろう。じっくり読んでみる価値のある一冊。
- 作者: 安宅和人
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2010/11/24
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