不安や劣等感を煽る商売

商売と詐欺の境界線ってどこにあるんだろうかとふと考えた。人間誰しもできないことはたくさんあるので、不安や劣等感の種になるようなことはたくさんある。世の中には不測の事態というのもたくさんあるし、杞憂という言葉もある。何らかの形で備えたいと考えるのは自然であり、保険的な側面を持つ仕事というのは多い。

やりかた次第で簡単に一線を越えてしまう気がする。健康に対する不安を煽って健康食品や健康器具を買わせたり、自分が死んだ後の遺族の生活の不安を煽って生命保険を契約させたり、将来の金銭的な不安を煽って金融商品を買わせたり、英語力に対する劣等感を煽って英語教材や英会話スクールを契約させたり、容姿に対する劣等感を煽って美容に関する契約をさせたり、転職とか海外就職を煽ったり。一対一の場合もあれば、一対多の場合もある。煽った方が注目を集められるとかいう考え方は完全に一線を越えている。

今の自分の仕事もやりかた次第でいくらでも煽れる。新商品を出す人に対して、真似されるリスクがあるから特許を出した方がいいですよとか。誰かの特許を侵害しているかもしれないから、調査した方がいいですよとか。本当にそういうことが必要なケースもあるけれども、全然そういうことが必要じゃないケースもたくさんある。リスクの大きさと備えるためのコストの大きさを冷静に比較しないと結論なんて出せないものなのに、情報差を利用して不安を煽って金を搾り取るようなことをし始めたら、人間としておしまいだなと常々感じている。

冷静に判断した上でどうしても何かが必要な人に対して、自分の専門知識や経験に基づくアドバイスを提供し、その対価をもらう。そうありたいと思っている。そうすると境界線は「相手に冷静な判断をさせないものは、全て詐欺である」と言い切っても良さそうだ。クーリングオフというのはとても良い制度だと思う。そもそも冷静になったところで判断能力がない人間が少なくないという現実もあるが、そこまでいくと手に負えないし人間であれば判断能力があって欲しいと思いたいところ。

ありとあらゆる煽りに対して、一歩引いてまたやってると冷ややかに見たり、脳内から削除してそもそもなかったことにするのがいいと思う。