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リバース・イノベーション(前編)

以前紹介した本だが、読み終わったので改めて紹介する。
http://d.hatena.ne.jp/pho/20130202/p2

「GEがアメリカで勝つためには、インドと中国で勝たなければならない」と、イメルトは語っていた。

多国籍企業が新興国や発展途上国で成果を出すためにはどうしたら良いのか、という本である。そのためには先進国の製品の焼き直しではなく、ゼロからターゲットを明確にして製品やサービスを開発することが必要だとして、様々な例を挙げている。問題を異なる視点から見るものとして、ゲータレードの例がわかりやすい。

イギリスの医学情報誌「ランセット」がその治療法の有効性について取り上げると、フロリダ大学のある医師がさっそく目をつけた。彼は、コレラ患者とフットボール選手に共通する問題は、急速な水分補給の必要性だと理解し、そうした治療法がコレラ患者に効くなら、きっと健康なフットボール選手にも有効だろうと考えたのである。

これは伝統的な手法にいろいろなヒントが転がっているという例だが、この本はそこにとどまらない。逆輸入の例として、ウォルマートの小型店舗が挙げられている。

巨大な大規模小売業者のウォルマートが、中央アフリカと南米の新興国市場に進出したとき、既存の小売り手法をただ輸出するだけでは通用しないことを悟った。同社にはイノベーションが求められていた。具体的には急いで店舗を小型化する必要があった。そこで、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンでよく見かける「こじんまりとした」小売店に似た形態の、ウォルマート・ストアを創り出した。
・・・
ウォルマートは2011年までに、ほんの2,3年前には想像もつかなかったようなことを行うようになった。「小型ストア」の概念をアメリカに逆輸入したのだ。背景の一つには、大規模小売店市場が飽和していたことがある。多くのアメリカの消費者は大型店での買い物に疲れていた。

これも先進国だけの相手にしていた場合には、思いつかなかったか、思いついたとしても採算が合わずに実行できなかったことが、新興国で実績をつくることで先進国でも可能になった例だ。
このように先進国と新興国とは著しくニーズが異なる。概ね共通している違いとして、価格が挙げられるのかもしれない。

途上国の人々はむしろ、超割安なのにそこそこ良い性能を持つ画期的な新技術を待ち望んでいる。つまり、わずか15%の価格で、50%のソリューションを望んでいるのである。これを実現するほど大きな設計変更は、既存品からスタートしたのでは不可能である。まったく新しい価格性能曲線に行きつく唯一の方法は、一から始めることだ。

ここでいう15や50という数字には特に意味はない。要するに、それくらい大胆な変更が必要だということだ。そうすることで、先進国のこれまでとは違ったセグメントも視野に入ってくる。

富裕国には、無視されたり、サービスが不十分だったりする「取り残された市場」がある。そうした市場でイノベーションが起きなかったのは、それが必要ないからではなく、市場が小さすぎて多額のイノベーション投資を正当化できないからだ。しかし、富裕国で取り残された潜在顧客一人が、途上国の似たような顧客50人に相当するなら、どうだろう。取り残された市場に50を掛けると、ぐっと興味深いものに見えてくるだろう。

欲しているのは、解決策ではなく問題なんだと思った。ある程度満たされている先進国だけを見ていても、従来とは異なる問題なんて見えてこない。

医療用画像技術はいまや、すべての医師が白衣のポケットに超音波診断装置を入れて持ち運べるところまで進歩してきた。

こんな大きな進歩は、問題の発見がない限り当分起こらなかっただろう。

ソニーは中国で、型落ちの製品や技術を販売した結果、サムスンに追い抜かれた。インドの地方に住む貧困者は、安い白黒テレビを買うために列をなして待ったりしない。絶版になった教科書に飛びつくこともない。その代わりに途上国の人々は、eラーニング産業が急発展している事実をうまく活かしている。

そもそも根本的なところから考えを変える必要があるということだ。そのためにどうしたらいいか、ということがいろいろと書かれている。まずは現状認識から。

世界地図を広げて、自社にとって大きな成長機会があると思う国に大きなステッカーを、成長機会はそれほどないと思われる国に小さなステッカーを置いてみる。次に、力をもつ経営幹部50人が物理的にいる場所に、別のステッカーを置く。
はたして、人材と機会は同じ場所にあるだろうか。まったく違うという企業がほとんどだろう。機会は新興国市場にあり、人材は本拠に近くにいる。
重心を移すとは、人材、権限、資金、注意を、成長している場所に移すことを意味する。

続きは後編で。

リバース・イノベーション
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