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GFIP2013 2日目(3Dプリンタからみた知的財産)

ビジネストラック6

最後のセッションがこれ。3Dプリンタをネタに境界領域にある知的財産についていろいろ話すセッション。大学の先生がいろいろ話していた。
先日行われたシンガポール首相の演説でも取り上げられるくらいメジャーになってきた3Dプリンタ。「第三次産業革命?」とエコノミストの言葉を引用してる人もいた。一人目はObjetの3Dプリンタを例にいろいろ話していた。ここはMakerbotを買ったとこ。
今後キーになりそうなのは、スピード、材料の種類とコスト、マシンの精度。プリンタにとってインクが重要であるように、3Dプリンタにとって材料が重要になるであろうとのこと。で、当然向いている産業とそうでもない産業はあるので、他の技術と使い分けるべし。
知的財産の観点から言うと、この技術は別にそんなに新しくなくて、第一世代のコア技術に関する特許保護期間はみな満了しているらしい。第二世代の特許として問題になりそうのがあるとすればこれらしい。
http://www.google.com/patents/US8286236
そういえばEFFが3Dプリンタの発展を妨げそうな特許リストみたいなのをいくつか紹介していたな。みんなで潰そうぜみたいな感じで。でもこの講演者によると、特許よりも重要なのはトレードシークレットではなかろうかという。とりわけ材料に関するトレードシックレット。材料として使われる化合物の化学式など一部を特許出願するかもしれないが、あとは機密情報として外に出さないであろうから。そういう視点はなかったので非常に興味深かった。主戦場がどこなのかを見極めるのはとても重要。
2人目はもう少し著作権寄りの話をしていた。3Dプリンタで作られるものはusefulなものが多いが、そもそも著作権はusefulなものを保護対象としていないとのこと。著作権の保護対象となると、問題になりそうなのはThingiverseのようなサイト。
http://www.thingiverse.com/
P2Pみたいにsecondary liabilityが発生するかも。でもDMCAのセーフハーバーディフェンスが使えそう。それから4Dプリンティングを紹介していた。スタートレックの世界なんだそうだが、スタートレックを見たことがないのでよくわからなかった。

最後の人は、RepRapを紹介していた。Fab@Homeとかその系統の話。
http://www.fabathome.org/
法律に関しては、侵害をモニタリングするにも数が多過ぎて不可能だし、実際に訴訟を起こしたとしてもフェアユースなど様々なディフェンスがあり得るという。例としてペンローズの三角形を挙げていた。オランダ人のデザイナーがペンローズの三角形を3Dプリンタで印刷するデータをShapewaysで販売。(この会社がフィリップスのスピンアウトだとは知らなかった)
http://www.shapeways.com/
これを見た3Dモデレータが自分でもやってみて上述のThingiverseにやり方を公開。最初のデザイナーがそれをみてThingiverseに著作権侵害だから公開するなと要求し、Thingiverseがそれに応じたところ、炎上。結局最初のデザイナーが要求を撤回して、自分の作品をパブリックドメインにして終了。
自分の作品を保護しようとした場合、実質的に非侵害使用に適する一般商品だから侵害にならない(Staple article of commerce defense)とか、訴訟を起こした側が故意の侵害であることを証明する必要がある(Knowledge defense)とかあるわけだし、意匠権はなかなかハードルが高いのでMicro Patentの提案を紹介していた。

Fabricated: The New World of 3D Printing
Hod Lipson Melba Kurman
Wiley
売り上げランキング: 5,793

この本に詳しく書いてあるそうだが、要するに簡単に取れて、短期間だけ保護されて、使ってないと権利が失効するようなそんなやつ。
最後にまとめのような感じで知的財産権全般の話もしていた。よく言われるように知的財産権はdysfunctional(機能障害)となっている。標準化みたいな形で主要技術を独占し、ナノテク分野に見られるように基本的要素も保護し、スペアパーツでもわかるように販売後の市場をカバーしようとする。みんなクリエイティブで自分でいろいろ作る人ばかりなら、特許はなくてもいい。
Adrian Bowyerという人はこんなことを言っているそうだ。誰もが何でも作れるようになったら知的財産法は時代遅れの産物になるので、特許法は経済への影響力を最小限にしなければならないと。
市民が製造したりイノベーションを起こしたりする自由の方が、知的財産法よりもずっと重要だ。技術の進歩によってビジネスモデルが変わっているときに、知的財産がそれを邪魔してはならない。知的財産法は公共財に関する問題があるときに使われるものであり、バリューチェーンの再構築に干渉するものであってはならないし、富の再分配をするものでもない。
こういう原則論というのは非常に大切だと思う。進む道がわからなくなったときに立ち返るための指針として非常に役に立つ。社会のために働いているかどうかは別にして、突き詰めていくとブレないPrincipleというのがあってしかるべきだし、それがないと人間として非常に薄っぺらくなってしまうんだろうな。
延々とこのイベントの記録を書いてきたが、これが最後。自分の今後を考える上で非常にためになるイベントだったので参加して良かったと心から思う。