年寄りがダメな世界で頑張ること

ウェブ時代をゆく』という本で、養老孟司氏のこんな言葉が紹介されている。

『時代というものがあって、いまの時代は年寄りが威張る。そのつもりはなくても、生きている以上、ジャマになるのは仕方ない。そんな時代に若い人はどうすればいいか。いちばんまともな生き方は、年寄りがダメな世界で頑張ること。ならばウェブは格好の分野ではないか』(『フォーサイト』誌、2007年2月号)

 この一節を読んだ頃、まだ社会人になって1、2年くらいだった。そのみち30年、40年の人たちと同じ道を進んでも追いつける日は来ないと感じていた頃なので、非常に強く自分に響いた。

一般に年寄りがダメな分野とは何だろうかと考えたとき、2つの分野が思い浮かんだ。ひとつは英語を含めた外国に関すること。もうひとつはインターネットを含めた新しい分野。フットワーク軽く、そして全力でコミットしていくことが必要だと思った。30年の差を数年で一気に縮めるとしたら、それはルールを変えるしかない。それが『年寄りがダメな世界で頑張ること』だ。

そして数年経った。新興国に全力でコミットしている。誰もが得体のしれない生き物を見るような目で見て、頑張ってくださいとだけ言う。どんな場所かまったく想像できないから何も言えなくなるのだな。先輩面をして他人のキャリアに口を出してくる人間が一人もいないというのは非常に気持ちが良い。これが『年寄りがダメな分野』に違いない。

仕事でうまくいくというのは、必ずしも「自分の力」だけではないのですよ。必ず「時代の力」というのがそこに重なっている。

「自分の力と時代の力」講演録(JTPAシリコンバレー・カンファレンス2009年3月21日) - My Life Between Silicon Valley and Japan

正直ここまでなんとかやってこれたのは、ある種の「時代の力」のおかげだと思う。タイミングというべきかもしれない。in the right time at the right placeという言葉の重みが少しずつわかってきた。

今の会社はオーストラリアやアメリカ、ドイツから、ここに何か面白いものがありそうだと思ってやってきた人が多い。将来は未知数だけど、そんなふうに未来を創っていけたらいいなと思う。