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転職して5ヶ月

知財

シンガポール国内で特許事務所から特許事務所への移動なのだが、業務内容はけっこう変わった。外内から内外に変わったといえば、この業界の人にはわかりやすいかもしれない。

前の会社には名ばかりの弁理士しかおらず(それが転職理由なのだが)、外国のお客さんから受けた仕事を東南アジア各国に転送するのが仕事だった。技術分野の専門性を使うことは一部例外を除けばほぼなかったので、お客さんは基本的に頭文字のアルファベットで分けられており、このアルファベットで始まるお客さんはこの人が担当みたいな感じで医薬品とか遺伝子とかの特許も担当した。

700件くらいの生きてる案件をお手玉のように期限管理する仕事は、大して頭を使わないものだけれども、全然気が抜けなかった。一応Executiveという肩書がついてたので、誰かがミスをしたら全部自分のせいになる。これはなかなかのプレッシャーだった。幸い自分が社長に直接怒鳴られるようなことはなかったが。

今の会社でもそういう仕事をしてる人の方が多いみたいだけど、直属の上司がそういう仕事をしていないのでそういう仕事はまだ回ってきていない。その代わり、シンガポールのお客さんがシンガポール、アメリカ、中国に特許を出すのを手伝っている。所属チーム名は最近まで電機&機械だったが、Engineering & Infomation Communication Technology (E&ICT)になった。そんなわけで、医薬品や遺伝子の特許を扱うことはない。

具体的に今やっている仕事は大きく分けて3種類。明細書書き、中間処理、調査。

これまで7年間特許の仕事をやっていて特許明細書というものを一切書いたことがなかったが転職して既に9件書いた。半分くらいは発明者と会ってから書いた。ゼロから書くわけではなく発明者が用意した発明開示書に基づいて書く。発明開示書にもうほとんど書いてるじゃんと思ってフォーマットだけ変えて上司に出したらすげー怒られた。Value addしろと。マレーシアで明細書を書くトレーニングに参加したり、上司のフィードバックをじっくり読み返したりしてかなり改善したと思う。やるべきことはシンプルで、発明をきちんと理解して、自分の言葉でストーリーを書いていくということだ。発明の理解が浅いと臆病になって自分の言葉で何も書けなくなる。結局ここでも発明の理解であり、技術をきちんと理解することが根幹にあるのである。図面に番号をふって、どの部分がどういうふうに機能して、どういうふうに連携して、どんなにすごいことを起こしているのかとストーリーを書いていくのが今のところやりやすい。

中間処理は審査官に発明が新しくないから特許なんてやらんと言われたときに、反論して発明が新しいと主張する仕事。日本に居た頃もやってたし、前の会社でも月1回くらいやっていた。そして、今の会社で11件くらいやった。基本的なところは一緒だけど、日本でやってたのは日本やり方だし、前の会社ではシンガポールのやり方(ヨーロッパに近い)だし、今の会社でやってるのはアメリカ出願の中間処理なのでアメリカのやり方である。主張するときのロジックがちょっと違うのでまだ慣れない。この仕事は日本でみっちり教わったことが非常に役に立っている。前の会社では自分に教えられる人がいなかった。そもそも技術内容に突っ込んだことを話せる人が居なかったのでこの仕事は全部一人でやっていた。ある程度基礎はできているつもりだが、まだまだ粗いので、その道何十年の上司が的確なアドバイスをくれるのは非常に非常にありがたい。

調査は先行技術調査もあれば、妥当性判断、ざっくりとした分野にどんな特許があるかを調べたりもする。自分の仕事が研究者の役に立つならこんなに嬉しいことはないし、こんなにやりがいのあることもない。早く未来が見たいと思ってこの仕事をしているわけで、未来をつくる人に貢献できるならもう言うことはない。

つくづく早く一人前になってもっとお客さんに貢献できるようになりたいと感じる。上司と一緒に参加したミーティングの後でお客さんの満足そうな顔を見ると、早くこんなことができるようになりたいと思う。

毎日新しい技術分野の文献を読み込んで、その分野で常識とされていることは何か、何がすごいのかを明確にするのが仕事である。日々世の中が進歩しているのを感じられるのですごく楽しい。世界中でいろんな人が問題を解決して、次の一歩を踏み出しているんだから、未来に対して単純に希望しか湧いてこない。そんな当たり前のことを思い出させてくれた今の職場と今の仕事に感謝しているので、自分にできることをどんどんやっていくつもりである。