第7回ニコ技深圳観察会(insta360)

今回の深圳ツアーはどれも面白かったし、この日の朝のAsh Cloudも強烈な印象を残してくれたが、自分としてはこのinsta360が最も楽しみにしていた会社である。

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一年半くらい前にGOROmanさんのtwitterの影響でRicoh Theta Sを買っていろいろと遊んでいたが、HMDで見たときにHDの360度映像では全然物足りない画質だと感じて、Xiaomiのカメラを6台つないで4K 360度映像で遊んでたりした。詳細については1年前に書いたまとめを参照されたい。

現状、ハイエンドなオプションはいくつかあるけれども、大きく2つに分けられる。複数のカメラの映像をつなぎ合わせて、AutoPano Video Proのようなソフトウェアでつないで全天球にするものと、筐体の中に複数のカメラを含んで専用のソフトウェアで自動的につないで全天球にするもの。

- GoProのカメラを6台使ったGoPro Omniが75万円(以前は60万だったと思うけど、為替レートの影響か値上がりしてた)。これが現状の360度撮影の定番で最も普及していると理解している。

- NokiaのOZOという全部おまかせなのが450万円。ディズニーみたいなお金持ちな会社が映画を撮るために使ったりする。

そんなところに出てきたArashi Vision。今はinsta360と呼ぶのか。2014年に創立したばかりの会社だというのに、既にinsta360 4K, nano, airといくつかの製品を世界に送り出していて、360度カメラの先駆けとなったRicohの人たちが口を揃えてあの会社は信頼できるという。

そんなinsta360が全部おまかせなOZOみたいなカメラをGoPro omniより安い価格で出してきた。日本の代理店はハコスコがやっている。

Insta360 Pro - Insta360, the leader in 360 cameras

insta360 Pro | ハコスコ

3Dの4K動画をリアルタイムスティッチして配信できるとか、去年せっせと手動で普通の4K動画をスティッチしてたのはなんだったのかと言いたくなってくる。写真は8Kだし、文句なしのクオリティ。サンプル動画も見てみたが、最初はいまいちでもソフトウェアアップデートでどんどんよくなる。まずこのスピード感がやばいとしか思えなかった。

とりあえず買おう。でもその前に実物と会社を見たい。そんなニーズに応えてくれるニコ技深圳観察会は最高だ。

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360度動画を撮影するときは、取っ手がはみ出ていると映像の邪魔になるので、こういう三脚いいな。ちゃんと考えていると思った。

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ガチャガチャと試作機を組み立てている。こういうのを見ているだけで、この会社に対する好感度はガンガン上がる。

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見たことない360度カメラがたくさん。JK Liu社長自らが案内してくれた。

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社内を360度で撮影してた。こんなに公開しちゃっていいのかなと思ったけど、たぶんこの分野でこの会社より早く動ける会社はこの世に存在しないので、真似されたところで次のフェーズに行ってるから無問題なのだろう。

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優秀な人間が集まって一生懸命作った製品は圧倒的に強いという印象をこの会社から受けた。

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大きな会議室はないので近くのカフェに行きましょうということで、移動してから会社の説明を聞いた。会社の成長速度が早すぎて、会議室よりも新しい人の机の方が優先順位が高そうだ。

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こう言っては失礼だが、全然プレゼンの印象が残らなかった。サンプルの3D写真をHMDで体験したデモの方が圧倒的に印象深いし、最後に記念写真をリアルタイムスティッチしてた方が圧倒的にインパクト強い。口先で何か頑張るよりも、デモンストレーションが大事。

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この会社にはしっかりとしたプロダクトがあり、それを貪欲に改善している。ハードウェア・ソフトウェアともに改良して全速力で突っ走っていて、とても深圳を象徴している。

ちなみにこの実写360度映像の世界は、奥行き情報を含んだ方向にシフトし始めている。ポジショントラックをして、動き回れるようになっていくのかもしれない。

Adobeが平面の360度映像から奥行き情報を抽出したりしている。

そのあたりの今後の展開を見たいと思ったので、来月はウィーンのこのカンファレンスに行く予定である。

Vienna 2017 – VR Photography & 360° Video Conference Announcement :: IVRPA

帰ってきた頃には、insta360 proが届いていることだろう。

なぜこの分野に自分がここまで力を入れているかというと、従来の写真やビデオの概念を打ち壊したこの技術が面白いというのもあるが、変わっていく今の世界を残しておきたいと思うからだ。10年後に今の景色を見たかったとしても、過去には戻れないから見られない。でもきちんと360度の映像をアーカイブとして残しておけばVRで見返すことができる。

シンガポールとか深圳とか動きが早いところにいると、目まぐるしく移り変わっていくので、物事がいつまでも同じじゃないってことを日々痛感する。自分が生まれ育った場所、自分が生活してた場所、通っていた建物、馴染みの風景、断片的な写真や動画だけじゃなくて、まるごと空間を保存しておいてVRでいつでも再現できるようにしておきたい。

10年後にVRが当たり前になってもっと使い勝手がよくなったときに、10年後の自分のためのコンテンツの素材となる映像を残したい。そのときになって10年前の360度映像を撮影することはできないのである。売れるとか流行るとかはメーカーが存続するために必要なことだけど、自分は10年後100年後のために今できることをしようと思っている。