パーニー(2019年7月20日の記録)

20年近く前、機動隊によるガサ入れが時折やってくる学生寮の談話室で勇午という漫画を読んだ。これを読んでいなかったら今こうして海外で働いていないかもしれないというくらいこの漫画の影響を受けていると思う。生まれ育った札幌を離れて京都に行ったが、まだパスポートを持っていなくて、海外なんて全く意識していなかった頃のことである。

平たくどんな話かと言えば、交渉人の主人公が世界各地で様々な拷問を受けながら超回復してそれなりに落とし所を見つけている物語である。その中にこんな場面がある。パキスタンの山賊に捕まって、灼熱の太陽の下で大きな石に縛り付けられて、つぶやくのだ。「パーニー」と。ウルドゥー語で水という意味である。

先日熱波で気温が50℃に達したジャイプールを経験してしまった自分としては、パキスタンではないけれどもあれが勇午的世界だと勝手に思っていた。そんなとき、職場でいろいろ細々手伝いをしてくれる少年に対して、同僚がこういった。「パーニー」と。ヒンディー語で水という意味である。

ヒンディー語ウルドゥー語といえば、ロティがウルドゥー語で、プラタがヒンディー語で、同じ意味で、シンガポールではなぜかくっつけてロティプラタと呼んでいる食べ物がある。水はどちらもパーニーなのだなと、ひょんなことからつながりを目の当たりにして興味深い気持ちになった。

今向かっているアムリトサル(アムリッツァといえば星域会戦が始まりそうだが多分同じつづりだ)からすぐ近くに、ワーガ国境というインドとパキスタンの間の有名な国境がある。閉門時に両国が互いに示威行為をするのであるが、動画を見る限り息がピッタリでお前ら仲良しだろと思ってしまう。ともかく現地であれを見たい。インドとパキスタンの関係を違った側面から見られたら良い。