Aarogya Setuというアプリの話

インドの電子情報技術省(MeitY)は、42日にCOVID19の感染拡大を防止すべくAarogya Setuヒンディー語a bridge to healthcareという意味らしい)というアプリをリリースした。自覚症状に関する問診結果と電話番号をユーザーが入力し、GPSによる位置情報とBluetoothによる近接端末との通信を利用することにより、現在位置のリスクを知り、陽性反応が出た場合にもクラスター特定を容易にするものと理解している。ちなみにこのアプリはリリースして13日で5000万ダウンロードを記録し、ポケモンGOの世界記録を塗り替えたそうである。

https://www.mygov.in/aarogya-setu-app/
51日にMinistry of Home Affairsより出されたガイドラインでは以下のように規定された。

15. Use of Arogya Setu(原文ママ) app shall be made mandatory for  all employees, both private and public. It shall be the responsibility of the Head of the respective Organizations to ensure 100% coverage of this app among the employees.

つまりこのアプリのインストールが推奨ではなく義務付けられることとなった。しかしながら、インド人の大半はスマートフォンを利用していないことは無視できない。51日の時点で8000万人がこのアプリをインストールしているが、5.5億人いると言われるフィーチャーフォンユーザーにはまだリーチできていない。政府としてもこの点は認識しているらしく、フィーチャーフォン用にも何かしら用意すると述べている。

https://economictimes.indiatimes.com/tech/software/aarogya-setu-coming-on-feature-phones-to-cover-the-entire-country/articleshow/75493148.cms

このアプリに対して野党の党首であるRahul Gandhi氏がどうせ外注だろう、データセキュリティ・プライバシーは大丈夫か、とつぶやいているのに対し、MeitYのトップであるRavi Shankar prasad氏が外注なんてしていないと回答するやりとりがtwitter上で見られてちょっと面白い。

https://twitter.com/rsprasad/status/1256599550627741697

そんなAarogya Setuというアプリ、技術的には消費電力の低減の工夫やBluetoothの端末間通信のトリガーがどうなっているのか気になるところだが、パーソナルデータの観点でも収集した個人情報をどのように匿名化し、どのように線引きをして他の人と共有しているのか気になるところである。ソースコードが開示されていないので、実際のところどのようにデータ処理されているのかわかっていない。

最後にこのアプリの詳細について紹介しておこう。わりと細かくバージョンアップしていて、これは2020年5月2日時点のV1.1.1である。

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BluetoothGPSのアクティブタイムが追加されたのと、半径何kmと範囲を選択することにより近くのユーザーの問診結果や陽性反応が出た人の人数を知ることができるようになったのが最近のアップデート内容である。

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自分の住んでいる州とインド全土に関して感染者数と回復者数がすぐに見られて便利である。

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まだ申請したことがないのでよくわからないが、外出許可証を申請するとe-passという形でアプリ上で表示されて、印刷することなくアプリを警察に見せることで通行止めを突破できるのではないかと推測している。

Aarogya Setuの他にもたくさんこのようなアプリがあるらしいが、詳細は確認できていない。

https://theprint.in/tech/india-is-using-at-least-19-apps-to-track-and-trace-covid-19-including-aarogya-setu/401459/

このような感染症拡大防止という課題をインド政府がテクノロジーを用いてどう乗り切っていくのかは、非常に興味があるので今後の展開が楽しみである。