特許審査とオープンアクセス

思いつきで何か書くと激しく突っ込まれそうだけど、
考えがこれ以上進展しそうにないので書くことにする。
とある出版社のCEOのインタビュー記事を読んでいて、
オープンアクセスって特許審査みたいだなと思っただけ。
ちょっと調べても同じこと書いてる人がいないので書こう。
Interview: Put Up or Shut Up
http://www.infotoday.com/it/sep04/poynder.shtml
2004年の記事なので、いまはまた違うのかも。
論文投稿したことも学会発表したこともないので、
あんまりわかってない、とあらかじめ断っておきます。

What we have tried to make clear in our new policy is that there is no principle difference between traditional publishing and open access―it is just a matter of who pays: the reader or the author. Personally, I couldn't care less. So the only thing we are going to change in our current process is whom we send the invoice to.

これまでは、投稿者は無料で投稿して、読者がお金を払ってたんだけど、
学術雑誌の値段がどんどん高くなってきている模様。
そもそもアカデミック論文だから、たくさんの人に読んでもらわないと
意味がないけど、高くて買えない図書館が増えて本末転倒な感じ。
そこで、投稿者がお金を払って、無料で公開しようということ。たぶん。

Copyright transfer is a very efficient way of making sure that we have the commercial rights to exploit the articles. However, this is not intended to stop authors from doing anything reasonable with their articles themselves, including putting them on their own Web sites.

この出版社は著作権を保有するけど、別に著者が自分のサイトにPDFファイルを
置いたりすることを妨げるわけじゃないよとか言ってるみたい。
英文を読みたくない人は、こっちの記事が良いかも。
WIRED VISION / ニュースアーカイブ / 急増する「オープンアクセス」方式の学術誌
http://wiredvision.jp/archives/200504/2005041503.html
で、投稿者が払うお金は、springerだと$3000, PLoSだと$1500, BioMedだと$525で
ちょっと強気な気もするけど、雑誌のブランドとかまあそういうものがあるらしい。


そこでなんとなく思ったのが特許の審査請求。特許はけっこうお金がかかる。
特許法195条別表に手数料一つ一つについて金額が出ているので紹介する。
特許出願:16000円(特許庁に出すだけでこれだけかかる。)
そのまま放っておいたら、3年後に勝手に取り下げられたものとみなされる。
ちゃんと審査してくださいと審査請求をする必要がある。
審査請求:約20万円(請求項の数で増減する。)
審査してもらって、拒絶されて、補正して、やっぱりダメで、審判にいって
とかまあいろいろとあるわけだけど、まあ特許査定されたとする。
特許料については107条に書いてある。請求項を10と仮定しよう。
1〜3年:2600+200×10=4600円/年
4〜6年:8000+600×10=14000円/年
7〜9年:24300+1900×10=43300円/年
10〜25年:81200+6400×10=145200円/年
わかりやすく値段が上がってる。
10年以上保有している特許ってのは、ライセンス料で
儲かってるんだからちゃんと払えよってことなのかな。
ちなみに67条に書いてるけど、特許の存続期間は出願日から20年。
やんごとなき事情で実施できなかったら5年まで延長可なので25年まで規定されてる。


両方のシステムの現状をざっくり書いたので、比較しよう。
学術雑誌は、出版社の経営的なものもあるだろうけど、
研究を発表することで、研究の更なる発展を目指してる気がする。
特許法は、1条に書いているが、産業の発展に寄与することを目的とする。
発明公開の代償として独占的な権利を付与するということになっている。
要するにどっちもたくさんの人が読めば読むほど良いわけである。
読者がお金を払うタイプだと読めない人が多くて問題ということ。


あと審査請求とpublication feeが対応してるのかな。
特許では、独占的権利を得るために、審査請求料を払う。
多少高くたって、それ以上稼げる特許ならいい。
公開は別に望んでないけど勝手にされてしまう。
オープンアクセスだと、公開するためにお金を払う。
従来の方式で名前を売ってから、自分のサイトで公開したくなる
という気持ちがわからなくもない。(単に)公開するコストは高くないから。
独占的権利じゃないけど、公開以外のインセンティブが欲しいところ。
そもそもなんでpublication feeと呼んでるか謎。
査読料ってことだったらまだしっくり来るんだけど。
その分野の専門家が論文を読んでくれるんだから
そこにお金をある程度払う方がしっくりくる。


うまくまとまらないけど、まとめてみよう。
オープンアクセスのように、読者ではなく投稿者が
お金を支払うというのは、良い傾向だと思う。
そもそも読まれないと意味がないと思うから。
まあ紙版だったら、ちゃんとお金をとっていいけど。


でも投稿者がお金を払うなら、それなりのメリットが必要。
無料にして誰でも読めますよってのは弱い気がする。
タイムスタンプというか、この人はこの日に論文を投稿しましたよ、と
権威あるところがお墨付きを与えるというのは必要だと思う。


あとは、ある程度現実的な値段まで下げるしかないかな。
グーグルアドセンスか。あと、yahooニュースみたいにやるか。
yahooは、新聞社にお金を払って、記事をyahooニュースに
載せているんだから。googleにお金を払ってもらって、
google scholarからの検索を許可してあげるとか。
論文と同じ著者や同じ分野の教科書のリンクを貼って
amazonアソシエイトという手もあるか。
あんまりお金にならない気もする。なかなか難しい。

追記

As always, I am very serious―$3,000 is a very competitive price. Even open-access advocates would have to acknowledge that. The Wellcome Trust report, for instance, estimated the true cost of publishing a paper at more like $3,500.

ということは書いてますね。$3500かかるのに、$3000なら安いとか。
まあ物が高いとか安いとかいう判断は、客観的なものじゃないんで
当事者がいろいろ天秤にかけて判断するものですから
需要と供給がつりあえば、存続していくでしょう、
とありきたりに締めくくります。