ゲイツ財団

ビルゲイツがマイクロソフトの日常業務から事実上引退して
財団の仕事に専念すると発表したのは、去年の夏頃である。
その後、バフェットが資産の大半をこの財団に寄付すると発表した。
そのへんのことは、この記事に詳しく書いてある。
ビル・ゲイツが第2の人生を賭ける巨大財団の実態:ITpro
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060713/243377/
これ以来気になっていたんだけど、特に調べてなかった。
あんまりニュースにもなってない。そんなものかもしれない。


でも自分が何をしたいかと改めて考えたときに、やっぱり
ソーシャルアントレプレナー周辺のことは外せないテーマなので
この財団のことをもうちょっと知りたくなった。
ビル&メリンダ・ゲイツ財団
http://www.gatesfoundation.org/default.htm
とりあえずざっくり知りたかったので、wikipediaを見た。
Bill & Melinda Gates Foundation - Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Bill_%26_Melinda_Gates_Foundation
資産330億ドルの財団で、テーマとして

  • 世界保健プログラム(Global Health Program)
  • 世界開発プログラム(Global Development Program)
  • アメリカ合衆国のプログラム(United States Program)

この三つに分類している。
財団として存続するために、少なくとも資産の5%を毎年寄付しなければならない。
最低でも15億ドルは寄付するが、運用してるから、資産は減らずに増えるくらい。
この財団の終え方には驚かされた。

"... spend all of [the Trust's] resources within 50 years after Bill's and Melinda's deaths."
Warren Buffett "... has stipulated that the proceeds from the Berkshire Hathaway shares he still owns at death are to be used for philanthropic purposes within 10 years after his estate has been settled."

死後50年以内に使い果たすらしい。どれだけのペースで使うんだろうか。


もうちょっと実績を具体的に書くと、

健康プログラム

  • ワクチン、予防接種(The Global Alliance for Vaccines and Immunization)
  • 内臓リーシュマニア症の薬(The Institute for OneWorld Health)
  • 日本脳炎用のワクチン(Children's Vaccine Program)
  • ワシントン大学のグローバルヘルス学部
  • HIV研究

直接は関係ないけど、日本もがんばってるとこのサイトで知った。
http://kiyoshikurokawa.weblogs.jp/jp/2007/08/post_3692.html

開発プログラム

  • 貧困層への経済的支援
  • 農業開発
    • 米の研究(フィリピンの研究機関)
    • アフリカの緑の革命(Alliance for a Green Revolution in Africa (AGRA))
  • 図書館
    • 毎年100万ドル、アメリカ国外の図書館へ
  • 特別なもの(Global Special Initiatives)
    • インド洋地震
    • インド地震(カシミール)
    • 水、衛生学、公衆衛生(国際復興開発銀行)

米国プログラム

  • 図書館
    • 図書館に行けば、ネットにアクセスできるというのが目標らしい。
    • ハリケーンにやられたところもけっこう支援してる模様
  • 教育
    • charter school(税補助を受けるが従来の公的教育規制を受けない学校)
    • マイノリティ(ここでは黒人)の学生を支援するスカラシップ
    • ケンブリッジ大学に行く留学生を支援
    • コロンビア州の貧しい学生を支援
    • ワシントン州の学術的な成果を出した人向け
    • テキサス高校プロジェクト
    • Strong American Schools (キャンペーン?よくわかんない)
  • 太平洋側
    • Discovery Institute

「交通の便のよくないオレゴン、ワシントン、ブリティッシュコロンビア(カナダ)州を通る高速鉄道を作ると言うディスカバリー研究所の「カスケイディア計画」に資しているのであって、IDのことなんか知らなかったしそんなものに金を出してはいない」

http://www.asyura2.com/0505/cult2/msg/196.html

いろいろとややこしいらしい。IDってのはたぶん遺伝子操作かと。(全然違った。「知性ある設計者によって生命や宇宙の精妙なシステムが設計されたとする説。」らしい)

    • コンピュータ歴史博物館(1500万ドル寄付したらしい)

批判

  • 多様性
    • マイノリティばっかりで、白人が排除されてる(別にいいと思うけどな)
  • 妊娠中絶、避妊を促進してる
    • 宗教が絡むとややこしいな
  • 石油会社、製薬会社に投資している
    • 環境によろしくない石油会社と、発展途上国に薬を売って金を巻き上げている製薬会社はけしからんってことなのかな。よくわかんないけど。そもそもバフェットがペトロチャイナの株を持っていて、それをそのまま寄付したのを指摘している模様。ペトロチャイナの関連会社がスーダンの石油採掘に激しく投資しているとか書いてあるけど、よくわかんない。仲悪いのかな。
  • ヘルスケアのリソースの移転
    • エイズ関連に寄付してて、その分野の研究者の給料が上がったから、他の重要な分野から人が流れて大変らしい。これは意外とけっこう大きな問題かも。お金を寄付するというのも大変なんだな。

感想

アメリカに投資してるというのは、今回調べて初めて知った。
世界をフラットに見るんじゃなくて、母国に傾斜してるんだな。
あと、当然と言えば当然かもしれないけど、直接関与するのではなく
どの団体に寄付するのかを検討するのが主な仕事という印象を受けた。

This is truly an exciting time in history: Improving the lives of billions of people is within reach. The more deeply we get involved in these issues and see what’s possible, the more all of us want to do.

http://www.gatesfoundation.org/nr/public/media/annualreports/annualreport06/AR2006CEOLetter.html

何十億人もの生活を改善する。世界を変えるというのは、こういうことだろうか。
これが、カンボジアやインドで漠然と感じていたもどかしさへの答えなのかもしれない。
テクノロジーが本来何のためにあるのかを改めて考えさせられた。
書きたかったこといろいろ - technophobia
http://d.hatena.ne.jp/pho/20070117/1169041780
やっぱりここに戻ってくるのか。2006年のレポートから引用して終える。

We want results in this lifetime. Children dying of malaria and AIDS can’t wait. People struggling to feed their families can’t wait. And young Americans who drop out of high school without the skills to survive in today’s economy can’t wait. We’re willing to take big risks with our partners to make sure they don’t have to.

http://www.gatesfoundation.org/nr/public/media/annualreports/annualreport06/AR2006CEOLetter.html