天国のキャディ

しばらく読書自体してなかったので本の感想も止まってたけど
本棚に読みたい本はたくさんあるので、再開していこうと思う。
今日は、30年に渡ってプロゴルファーのトム・ワトソンの
専属キャディーを務めたブルース・エドワーズの本を紹介する。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)が発病しても死の直前までバッグを担ぎ続けた人。

天国のキャディ―世界で一番美しいゴルフの物語
天国のキャディ―世界で一番美しいゴルフの物語John Feinstein 小川 敏子


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小さい頃テレビでよくゴルフを見ていた自分にとって、
トム・ワトソン、グレッグ・ノーマン、ジャック・ニクラウスなど
名前に聞き覚えのある選手がたくさん出てきて楽しめた。
そして、このキャディを知ることができて良かった。

「彼は速く歩いた。それは重要だったね。わたしはいつもさっさと歩くから、キャディには息を切らさないでついてきてもらいたい。彼は最初からそれができた。いまでもそうだ。おまけに賢いし頭の回転が速い。すぐに気に入ったね。それにいっさい不平を漏らさなかった。練習場にどれだけ長くいても、いつまでも仕事が終わらなくても、一度として愚痴をこぼしたことがない。車のキーを渡してモントリオールに火曜日までに車を移動してくれといっても、眉ひとつ動かさなかった。遠いだのなんだのいわず、ただひとこと「間に合わせます」といったんだ」

プロとしての意識がある人は、最初からそうなんだな。
実力はどうにもならないけど、気持ちは心がけ次第。

「彼はわたしを臆病者だ、腰抜けだといったんだ」ワトソンは笑いながらそのときの言葉を繰り返した。「確かにいった」ブルースは認める。「それから3番ウッドと6番アイアンをバッグから取り出して放り投げた。そしてこういったんだ。『したいようにすればいい。ピンまでの距離は247ヤード。それを打たなかったら、正真正銘の臆病者の腰抜けだと証明することになる』」
それだけいうと、ブルースはすたすたとフェアウェイを歩いて行ってしまった。

ここまでできるキャディは半端じゃないな。

何が起きたとしてもワトソンが自分をクビにすることはない、とわかっていた。ただ自分がついているプレイヤーに発奮してもらいたい、自信を回復してもらいたい、覇気を失っているワトソンに気合いを入れたい一心だった。

信頼関係ができあがってるからここまでできるのか。
全力でサポートするというのはこういうことなのかもしれない。

人間の人生を友人というものさしで判断するとしたら、私の人生は素晴らしい人生でした。それだけは間違いありません。

ありきたりだけど、ストーリーと併せると深い言葉だ。

おそらく多くのALSの患者さんは診断を受けた時、自分に見切りをつけてしまうのではないだろうか。つらい事実をつきつけられて、生きることを放棄してしまうのではないだろうか。
だが、あなたはまったくあきらめたりしていない。いまでもゴルフコースに出て、これまで通り仕事をこなしている。今日のあなたには皆が勇気づけられた。

自分にはそんなことができるかな、となんとなく考えた。

しばらくは大丈夫だった。充実した時間、楽しかった想い出に浸っていた。でも、そこで考え始めてしまった。自分はもう二度と彼のあの元気な笑い声がきけないのだと……

当たり前のことが当たり前ではなくなるときが来る。
それはとても悲しいことだけど、受け入れないといけない現実。
少しは、ほんの少しくらいは、時間が解決してくれるはず。
ブルースのように、前向きでありたいと思う。

ゴルフはミスショットのゲームだ。その後どうするかが重要なのだ。