アフリカ 苦悩する大陸

アフリカの現状が気になったので読んでみた。非常に面白かった。
アフリカ 苦悩する大陸 (単行本)
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著者はThe Economistの元アフリカ担当編集長。南アフリカを拠点に7年取材したらしい。

富を手にする最も確実な道が「権力」だとなれば、人々は権力を求めて殺し合う。アフリカはしばしば内戦に悩まされ、おかげで開発もままならない。安全な環境のもとで暮らしていると、人はしばしば安全に慣れてしまうものだ。

自分はぬくぬくと生活しているんだと改めて思い知らされる。

元兵士らは田舎道に検問所を設置した。バスが通るたびに停車を命じ、ZANU-PFの党員証を提示できない乗客を発見すると殴りつけた。教師、看護士など、読み書きができる人々は野党支持者とみなされ、身分証明書を破り捨てられ、家を焼かれ、鍬で殴られたり溶かしたプラスチックで火傷を負わされたりした。

こんなのまともな選挙ができるわけない。これが現在進行形なのが悲しい。

ツチ族の特徴だとされる細い顔や長い鼻の持ち主は狙われる危険性が高かった。何十年にもわたってツチ族は他の部族の人々と結婚してきたため、実際は鼻が長いことは何の指標にもならなかったが、多くの人々が命を奪われた。若者の髪に埃がついていれば、茂みを進軍した証拠だとして、反乱軍兵士と断定された。

どこかに敵をつくりたがるんだな。

その気になれば、欧米諸国は格段に優れた自国の軍隊を派遣するだけで、アフリカの戦争の大半を終わらせることができるだろう。しかしそんなことはしない。なぜなら冷戦終結以来、どの国もアフリカに重大な戦略的利害を持たないからだ。
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欧米諸国はアフリカ大陸内の抗争を解決するために、一兵たりとも進んで犠牲にしたくはないのだ。だからアフリカの人々は自分たちで解決するしかないだろう。

悲しい現実。どこか遠いところの出来事であって欲しいということか。

アフリカの貧困の一つの原因は、人々が自分の資産を流動資本として活用できないことにある・・・家を持っていても、たいてい権利証書がないから証明できない。証明できなければ家を担保に銀行から金を借りることもできない。・・・人々はたいてい両親から耕地を受け継ぐ。境界をめぐってもめれば村の長が裁決する。部族の決まりに著しく違反する家族があれば、土地を取り上げて別の家族に与えることができる。

自分が当たり前と思っていることが、どこでも通用するわけじゃない。

寄付金で支えられた少額融資組織であるマラウイ農村金融公社から小口の融資を受ける手もある。だがこの公社から金を借りるには、グループを組んで相互に保証人になることが条件で、そうしたグループにはなかなか入れてもらえない。最も生産性の高い農家がメンバーとなっているから、能力のない隣人たちと組んで信用を損ないたくないのだ。

マイクロクレジットもダメなのか。これは厳しいものがある。

貧困はある意味であきらめを生む。貧しければ生きていくのが困難で、いつ死に直面するかわからない。夜にはマラリア蚊がうようよしているが、抗マラリア剤を買う金はない。通勤には最も安く、最も混雑するミニバスを利用するだろうが、古くてブレーキが怪しいから安いのだ。毎日がその日暮らしで、チャンスがあれば束の間の楽しみに浸る。

だからエイズはなかなか根絶されない。でもウガンダセネガルは頑張ってる模様。

地元の武装勢力の手の者たちが路傍でカラシニコフ自動小銃を振り回し、通りがかるトラックに停止を命じる。どのトラックにも積み荷の材木やドラム缶の上に「乗客」たちがへばりついている。検問所の男たちは、五歳以下の子供たち全員を降ろすよう命じ、近くの木陰に連れていった。そこで、書類ばさみを持った外国人に引き渡す。すると外国人たちは子供たちの口を順にこじ開けては、ポリオワクチンを一滴ずつ飲ませていった。
ポリオ根絶を目指す世界保健機構(WHO)の活動だったが、場所がソマリアだけに、これほど勇気ある援助活動を私は見たことがない。
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乗り越えるべき壁は無数にあるが、やってできないことはない。

なんか前向きにさせられる。現場でできる限りのことをする姿勢が素晴らしい。

独立後まもなく、ボツワナの砂漠の地下にダイヤモンドが発見された。
ザンビアの歴代政権とは異なり、ボツワナ政府はこの棚ぼたを無駄にしなかった。ダイヤモンドで潤った国庫収入は、インフラ整備、教育、保健医療に使われた。民間企業はお役人に邪魔だてされずに自由に成長できたし、海外からの投資も歓迎された。南アフリカ人たちがやってきて、オカバンゴ・デルタにサファリ客の宿泊施設を開設した。

うまくやっている国もある。だからアフリカといってもひとくくりにしてはいけない。

ガンビアの僻地の村で治療に当たる看護士たちは、デジタルカメラで患者の症状を撮影し、パソコンに取り込み、電子メールと一緒に首都にいる医師へ送って診断を仰いでいる。

うまくやれば、今後ますます技術の進歩の恩恵を受けていくのだろう。

アフリカの携帯電話会社はたいてい民間企業で、激しい競争にさらされている。それだけにサービスはすばらしい。ナイジェリアのラゴスでも、ケニアのナイロビでも、ショップへ行って携帯電話を買い、実際に通話ができるようになるまでものの五分とかからない。

インフラがない方が、既得権益も存在しなくていろいろ普及は早そうだ。
いろいろな分野で先進国をあっさり追い抜いていくと非常に面白くなりそう。

素朴なアイデアでも、きっちり実行すれば劇的な効果をあげることができる。アフリカの目の前にある問題はとてつもなく大きいが、合理的に取り組めば解決できないことはない。

なんとなく自分も頑張らないとなって思った。ずっと恵まれた環境にいるんだから
まだまだできることはたくさんあるんだし、やらない理由なんてないんだから。
世の中は全然公平にできていないけれど、それを嘆いていたってしょうがないし、
自分の手持ちのカードで最善を尽くせばいいだけのこと。一度にたくさんのことは
できないけれど、少しずつ自分が良いと思う方向に進んでいけばいい。
非常に厳しい現実を突きつけられる一冊だが、そんな気分にさせられた。