ヤバい経済学

思いもよらないものに相関関係があるよと言って、いろいろ例示してくれる本。

ヤバい経済学 [増補改訂版]

ヤバい経済学 [増補改訂版]

「専門家」は―犯罪学者から不動産屋さんまで―自分の情報優位性を自分の目的のために利用する。しかし、彼らを彼らの土俵の上で打ち負かせることがある。とくにインターネットのおかげで彼らの情報優位はどんどん小さくなっている。それが他にも増して強く現れているのが棺桶と生命保険料の値下がりだ。
何をどうやって測るべきかを知っていれば混み入った世界もずっとわかりやすくなる。データの正しい見方を知れば、解けそうになかった難題が解決できるようになる。折り重なった混乱と矛盾を拭い去るには数学の力を駆使するのが一番だからだ。

情報優位性のお陰で甘い汁を吸ってきた人々が右往左往するのを見るのは痛快だが、さて自分は何を武器にしていこうかと考えるとちょっと大変だなと思ってしまう。フラットな方向へ推し進めながら、本当に価値があるのは何なのかを考えていけば答えは見つかるだろうけど。

1984年、研究所の経営陣が変わったのを機に、フェルドマンは自分の仕事を顧みて顔を曇らせた。退職してベイグルを売って暮らすことに決めた。エコノミストの友人たちには正気を失ったと思われたが、妻は賛成してくれた。子供は3人いたが、末っ子がそろそろ大学を出るころだったし、住宅ローンの返済も終わっていた。
ワシントン周辺のオフィス街を来るまで売り込みに回った。彼の売り文句は単純だ。朝早く、彼がベイグルと代金入れを会社のカフェテリアに届ける。ランチタイムの前にまたやってきて代金と売れ残りを回収する。支払いは自己申告に頼った商売だったがうまくいった。
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フェルドマンは初めから商売の詳しいデータを取っていた。だから、回収できたお金の額と持って行かれたベイグルの数を比べれば、お客がどれだけ正直か1セント単位で測れることに気づいた。お客は彼のベイグルを盗んでいるのだろうか。もし盗んでいるなら、盗む人がいる会社といない会社はどんな特徴をもっているだろう。盗みが増えるのはどんなときで、減るのはどんなときだろう。

こういう副産物は面白い。ベイグルはきっかけにすぎず、客となった会社の人ですら把握していない情報を知らず知らずのうちに手にしているわけだ。実際にやってみることは現場に行かずに考えることよりもずっと大変なことだけど、全然予想もしなかったことが起きたりして楽しいと思う。

ケネディはとても頭にきて、そのおかげか、閃きが舞い降りた。ある日、男の子たちがスパイごっこみたいなことをしていて、たわいのない秘密の合言葉を言い合っているのを見かけて思った。KKKの合言葉やなんかの秘密を国中の子供たちにばら撒いたらすごくないか?秘密結社の牙を抜くのに、結社の最高機密をガキ扱いする―さらに公にする―よりもうまいやり方なんてあるだろうか。
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ケネディはスーパーマンのプロデューサーたちに最高のKKK情報を流した。
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スーパーマンの番組が放送されていき、ジョン・ブラウンが手に入れたKKKの秘密をケネディが他のラジオ番組や記者に流すにつれて、うれしいことが起きた:KKKの集会にやってくる人は急に減り、入団希望者も激減した。

これも発想が面白いな。メディアとはこういうふうに使うのかと思った。「殺菌には日の光に晒すのが一番だそうだ」という言葉が印象的。

あなたが賢くてよく働いてよく勉強してお給料も高くて、同じぐらいよくできた人と結婚したなら、あなたのお子さんも成功する可能性が高いでしょう(そしてもちろん、正直で、思いやりがあって、子供を愛し、いろんなことに興味を持てる人であるのも決して邪魔にはならないでしょう)。でも、あなたが親として何をするかはあんまり大事じゃない―大事なのは、あなたがどんな人かなのだ。そういう意味で、あれこれ手を出す親は、お金があれば選挙に勝てると思い込んでる候補者みたいなものだ。本当は、そもそも有権者がその候補を嫌いだったら、世界中のお金があっても当選なんかできるわけないのに。

データからこういう身も蓋もない話が出てくるのも良かった。続編も出ていてけっこう人気のようなので読むつもり。