特許の価値とIP score

夏休みなので特許の価値の算出をやることにする。といっても全然背景知識がないので調べ事から。PatentとかValuationとかいうキーワードで以前検索していて、欧州特許庁(EPO)がIP score(http://www.epo.org/searching/free/ipscore.html)という特許価値診断ツールを公開しているのは知っていたが、今回その中身を見てみることにした。プレゼンテーションの構成は、特許の価値と特許の管理の二本立て。

特許の価値

価値というのは状況によって変わる。同じ水でも家の中と砂漠とでは価値が違うように、特許も誰が持つかによって価値が変わってくる、と欧州特許庁は言う。

"The value of a patent is the future commercial utility of the patented invention"

特許された発明が将来どれだけ商業的に使えるかが特許の価値であり、特許がどれだけお金を生み出せるかが価値である。特許の所有者が独占して使う場合と、銀行のローンの担保になった場合では価値が違う。ライセンスを受けている人、特許によってブロックされている会社の人、それぞれにとって価値は違うとのこと。特許の価値とは特許された発明の価値であり、技術的な側面の価値と法的な側面の価値を足し合わせたものであり、潜在的なイノベーションの価値なのだそうだ。
ここだけ聞くと特許の価格を定めるとか不可能な気がするが、よく考えてみたら様々なものが様々な場面で別々の価値を持っていても、ちゃんと取引が成立して、物がちゃんと流通しているわけで、特許の価値も大した違いはないと思った。

欧州特許の調査結果

7000の欧州特許を調べたそうだ。その結果半分が30万ユーロ未満の価値しかないとのこと。しかも25%は10万ユーロの価値すらないとのこと。一方で企業内のポートフォリオの価値に占める割合として、20%の特許が全体の価値の80%を占めている。
30万ユーロ以上の価値を持つ特許が半分もあることに驚いた。算出方法を見ていく必要はあるけれども。大半の特許に価値はなく、一部の特許にだけ価値がある、すなわち金になるということ。

定量的評価と定性的評価

定量的評価は銀行が好むやり方。定性的評価は企業が強みや弱みを知るときに便利。定性的評価では(technology, Market, Finance, Legal)の各面で分析する。定性的評価の手法の例は

  • net present value(一番人気)
  • market value(ライセンスのアナロジー)
  • cost
  • real options(いろいろ仮定する)
  • computer generated estimations(たくさんあるとき便利)
  • legal economic methods(inventor compensation methodともいう)

という感じ。

Net present value (正味現在価値)

入ってくるキャッシュフローから出て行くキャッシュフローを差し引いて、見込まれる利子も差し引いたのが現在の価値。このあたり(http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/npv.html)に詳しく書いてある。

  • よいとこ

最も受け入れられている手法。特定のケースを考えている。シンプルに決定できる。

  • いまいちなとこ

キャッシュフローを予測、特定しなくてはいけない。一つのシナリオしか考えてないので柔軟性に欠ける。ブランド価値の向上のような間接的な利益を考えるのが困難。

特許の管理

ポートフォリオ管理ということでここからIP scoreの解説。40個の変数(legal status, technology, market conditions, finance, strategy)を入れるらしい。出力としてレーダーチャートやNPV、レポートが出てくる。管理のための定量的なツールで、コスト削減の機会などを分析するのに便利。OpportunityとRiskの二軸で切って特許をマッピングしているのは興味深い。EPOはそんなツールを提供するけどコンサルティングなどはしてませんよとのこと。
まとめとして、特許の価値は持つ人によって違うよってのと、ポートフォリオ管理にIP scoreが便利とのこと。

感想

表面的なことはなんとなくわかった。自分にとって興味があるのは特許の定量的な価値の算出なのでそこらへんの理解を深めていこうと思う。持ち手によって価値が変わるというのはそんなに重要なことなのかなと感じた。そんなの当たり前だし、だからこそ取引が成立するのではないかと思う。特許に限った話ではないし、いろんな価格があったとしても目安となる数値というのは出せるんじゃないのかなと考えている。
わざわざ40もの変数を入力するとは知らなかった。もっと特許の番号だけ入れてちゃりーんって金額が出てくればいいのに。公知技術も出願状況も公開されているんだからそこらへんなんとかならないかな。google patent searchの横に金額が出てきてもいいと思う。デューディリジェンスみたいなお金のかかる面倒なプロセスを飛ばしてできたらいい気がした.
とりあえずいろいろ定量評価の手法があるようなので、その辺りから見ていこうと思う。