Patent Secretaryの仕事

まあうちの会社での呼び方がPatent Secretaryであって、別にパラリーガルでもアシスタントでも特許事務員でも適当に読み替えてもらえばいいんだけど、どんな仕事をしているか記録しておくことにする。本当のところは本人たちに聞いてみないとわからないので自分の見た範囲で。ちなみにシンガポールでは肩書きが激しくインフレを起こしていて、基本的に誰でもExecutive。担当者レベルでもExecutive。secretaryがいて自分の部屋があるExecutiveの給料が日本の新卒以下という状況が割と平気であったりする。あとシンガポールのBig mac indexは日本の0.9倍である。で、本題としてそのSecretaryにどんな仕事を頼んでいるか書いてみることにする。

  • E-filing system

シンガポールの特許出願はほぼ全部電子出願。ファイルサイズが5MBを超えたり、発明者が20名を超えたりするようなシステム限界を越えた状況がない限りみんな電子出願。だってそっちの方が安いから。登録弁理士(ボス)のUSBトークンが差しこんであるPCを使って特許庁との手続きをしている。正確にはSecretaryに全部してもらっている。このフォームを使ってって指示を出して、手続きの確認画面のプリントアウトのチェックしてるだけなので自分ではできない。補正とか新規出願とかで方式審査の拒絶を受けないような書類作成もやってくれる。

  • 請求書の発行

社内システムを使って社内の料金表や見積書に基づいて発行してもらっている。自分がやっているのはその下書きのチェック。案件番号とかお客さんの整理番号があってるかとか金額があってるかとか既に請求済みじゃないかとか。

  • 定型メールの送信

期限管理というのは特許の仕事のうちのけっこうなウェートを占めている。審査請求期限の3ヶ月前ですとか、特許料支払い期限が来月ですとか、そんなメールの下書きをしてもらって、チェックして、出してもらっている。チェックは主に宛先とか期限とか既に指示を受け取ってないかとかそういうこと。あとお客さんからメールを受け取ったときに受領確認メールを返信してもらったりしている。そんなわけでうちのお客さんがこの記事を読んでるかどうか知らないけど、on behalf of Yosuke Tanakaって書いてあるメールは代わりにSecretaryが書いて送ったメールである。
あとは新しく入ったSecretaryの教育とか紙ファイルの管理とかやってるのかな。放棄案件の処理とか請求書を会計部門に送るとかもやっているんだろう、たぶん。

ちなみに、それにより浮いた時間で自分がしているのは以下の通り。

  • お客さんからの問い合わせへの対応
  • 拒絶理由応答
  • 特許調査案件

まあ特許調査は各国の担当者に頼んでいるだけだけど、お客さんに送る前に成果物のチェックはしている。まあそれは各国出願についても言えることか。これだけシステム関連のことを全部Secretaryに任せていると自分がなんかシステムに弱いおっさんになった気分になる。システムに弱いボスが作り上げたワークフローなんだなということを自分がその一部になって実感した。やればシステム系のことも自分でできるんだろうけど、大学大学院で学んだ技術系の専門知識と、4年の日本特許実務経験と、1年間学んだシンガポール知財法の知識を最大限に活かすのであればこういう形なんだろうな。余談だが、日本の職場では新卒はレアで4年間一番下っ端で後輩すらいたことがなかったので、Secretaryから休暇申請が来て承認を求められるとけっこう戸惑う。有休申請に理由なんていらないのに(会社が求めるから)書いてあるし。いつも数秒で承認してる。

自分の周りの人がどんな仕事をしているかを理解し、自分がちょっと先回りするだけで相手の手間が省けるのならぜひやった方がいいなと最近ようやく思うようになった。そんなわけでこんなふうにSecretaryの仕事を書きだしてみた。まあ余計なお世話は不要なんだけど。これは本社と支社にも当てはまると思う。日本で働いていたときは日本支社なので、いまいち本社の人の意図がわからないことがあった。今いるのはシンガポール本社なので見える範囲も入ってくる情報も大幅に増えている。でも各オフィスでは以前の自分と一緒できっと本社の意図があまり伝わってないのだろう。そんなわけで意識的に各国の代理人に自分の持っている情報を伝えて、判断材料として使ってもらえるようにしている。過去の経験を活かして少しずつ進歩していればいいな。