開墾して特許にするということ

土地所有と聞いていつも思い出すのは、劇場版ドラえもんの「のび太の日本誕生」である。ほとんど忘れてしまったが、タイムマシンで7万年前の日本に行って、のび太が木の枝で地面に線を引き、「ここまで僕の土地」と宣言した場面が非常に印象的だった。その後皆がこぞって線を引き、最後にドラえもんが「そんなみみっちいことするなよ、これ全部僕らの土地(記憶があやふや)」みたいなことを言う場面だ。のび太はほんと頭の回転が速いなあと改めて感心するわけだが、それはまあ置いておこう。
ここでノウアスフィアの開墾という視点で考えてみる。開墾すること自体は、土地であれ、観念であれ、行われるものだ。ただ、開墾されたものに対して何らかの権利を与えるかどうかが争点となる。小難しい議論はいろいろとできそうだが、線を引いて所有権を明確にすることがみみっちいことなのかどうかに尽きる気がする。どんな場合にそれがみみっちく見えて、どんなときにそうでもなく見えるのかという見え方の問題に過ぎない。そんなことを書いているうちに、7年前にシリコンバレーで聞いた話を思い出した。

パテントというのは独占排他権であるが、イノベーションの妨げにならないのかという質問があったが、それに対する答えも興味深い。スタートアップ企業はイノベーションにより成り立っているためパテントは障害にはならないそうだ。既にあるアイデアを守るパテントがあるからこそ、圧倒的に違うものを作るインセンティブが生まれてきて、イノベーションが起きるという。

雇用の流動化と技術流出 - technophobia

広大な土地があるんだから、どんどん次に行こうということだ。こういう考え方もそれはそれで興味深い。でもまたこういう考え方もある。

技術的な進歩より、自分の人生にどれだけ自由があるかが重要だ。強力なソフトができたって、それを使うときに鎖でしばられるんじゃ意味はないんだ。だからそんな独占ソフトが書かれなくったって、僕は別にかまわない。

<反>知的独占 - technophobia

きっとこの御大は、ソフトウェアの広大な共有地に勝手に線を引いて権利主張をするなんてけしからんと考えているのだろう。USPTOがソフトウェアコミュニティに対してアドバイスを求めているのがどこまで本気なのか知らないけれども、ソフトウェアというのは、ノウアスフィアの線の引き方が変わりそうな分野ということだ。どんな形であれ、ノウアスフィアが開墾されて、いろいろと面白いものが出てくればいいなと思う。そんなことを考えながら、日々いろんな分野のノウアスフィアに線を引く。