取りやすい特許

なぜかよくわからないけれどもオーストラリアの特許出願を2、3件扱っていて、本日現地代理人からメールをもらった。4月15日に法改正があって特許が取りにくくなるから、審査請求するなら早く連絡してね!みたいな感じのメール。お前、半年前に審査官から指示がないと審査請求できないって言ってただろって思った。よくわからないけど審査官からの指示がなくても出せる模様。最初の年金支払いが出願から5年だったのが4年に短縮されたり、修正実体審査がなくなるなどなかなか変化している。来週オーストラリアからお客さんが来るので聞いてみよう。
そんなわけで、そうらしいっすよーとアメリカのお客さんに送ったわけだが、そこでふと疑問に思った。特許が取りやすいと何がうれしいんだろう、と。特許出願だけ請け負っている人なら簡単に特許が取れた方がうれしいんだろうけど、訴訟でその特許が取り消されたら元も子もないわけで、ろくに審査もされずに特許が取れるのは良い事なんだろうかなどと感じてしまった。特許が取り消されたときに、その特許の出願を請け負った代理人は罪に問われないんだろうか。先行技術文献を見落としていた審査官は、減給とか降格とかされたりしないんだろうか。そんなことになったら誰もやらなくなるか。
東南アジアの特許審査を見ていて面白いのは、そのやる気のなさ。インドネシアやフィリピンで審査官からの通知を受け取るのだが、全力でやる気ないし、しかも開き直っている。見たところ問題なさそうだが、この特許は出されてから随分と時間が経っているので、きっと他国の審査が進んでいるに違いない。他国の審査結果を提出して、その国の請求項に合わせるように補正したら審査を早めてあげよう、みたいなのばっかり。自分で白黒つけたくないから、他国の結果をコピペして、他の国ではそうなんだもんという言い訳をしたがっているようにしか見えない。ハーモナイゼーションと言えば聞こえはいいけれども、まあそういうことなんだろう。日本に居たときは、ヨーロッパで特許になってるよと言っても、あちらはあちら、こちらはこちらといって全然相手にされなかったと記憶している。これも審査官によるわけだが。
でもこれだけ他国の審査結果のまねばかりすると、特許でもマドプロのセントラルアタックみたいなことが起こりそうな気がしてならない。米国で通ってますと言っていろんな国で特許になった後で米国のものが取り消されたら、ドミノ倒しのように収拾がつかなくなりそうである。そんなわけで、取りやすく、取り消されやすい特許ってのは、どうなんだろうと思う。20年先のことまで見越して何かをするなんてのは不可能だけれども。