GFIP2013 初日(知的財産価値評価)

ビジネストラック2

知的財産とか無形資産とかの価値評価の専門家によるセッション。こんな本を出しているらしい。

Fundamentals of Intellectual Property Valuation: Everyday Business Issues And Questions On Value And Valuation
Weston Anson Donna P. Suchy Chaitali Ahya
Amer Bar Assn
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知的財産価値評価を4つのステップに分けてシンプルに説明していて非常にわかりやすかった。

  1. Identify all IP assets(関連する知的財産を全て特定せよ)
  2. Bundle them(全部まとめろ)
  3. Triage(優先順位をつけろ。評価する価値のないものは評価するな)
  4. Apply multiple methodology(適切な価値評価手法を使え)

ここで最も強調していたのは"Bundle"のところ。特許単体の価値なんてたかが知れてるんだから、まとめろまとめろと言っている。これもまあIPXIに対してどちらかというと否定的なんだろうな。
「価値とは期待される将来の利益」と言われると、非常にしっくりきた。基本的なことなんだけど。特許とは数ある無形資産のなかの氷山の一角にすぎず、ブランドイメージとかオンラインでのプレゼンスとか、テスト結果とか、ソフトウェアとかを洗い出し、取りまとめて、評価をしましょうとのこと。既にライセンス契約を済ませた特許なら、毎年いくらお金が入ってくるか計算できるのでそこから価値を算出し、お金が入ってこないタイプのものなら、これまでに費やしたコストベースの価値評価や、市場で似たようなものがどのような価格でやりとりされているかに基づくmarket approachを取るとのこと。
そういえばこっちの本の著者も来ていた。

知的財産と無形資産の価値評価
ゴードン・V. スミス ラッセル・L. パール
中央経済社
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重要なのは、この3つなんだとか。

  • Robust legal system
  • Strong accounting system
  • Unbiased evaluation

様々な分野が入り組んでいることを改めて実感した。価値評価のアプローチで面白いと思ったのは、時価総額から会社全体の価値を算出して、それから向上などの有形資産の分を差し引いて無形資産の価値を算出し、その中の割合から特許の価値を求めていたところ。いろんなものがつながっているのだなと思った。難しいなりにいろんなアプローチをしているのだなとも思う。やはり"Patents are but the tip of an iceberg floating in a sea of Trade Secrets"という表現がしっくり来る。
あとこのセッションにはデロイトの会計士の人も来ていた。無形資産と絡んで、どのように節税するのかという話が面白かった。
税金の高い国と安い国があるわけで、支出を税金の高い国で計上して節税し、収入を税金の安い国で計上して節税する。最大限にこういう技を活用するとかなり大きな違いになるんだろうな。
個人的に面白いと思ったのは"Number is not correct."となってしまった場合の話。それでも"Number is not wrong."と言えればよいんだとか。裁判所で自分の数字の論理付けを正当化できればよいんだとか。詭弁臭いけどなかなか面白い考え方である。数字があってないけど、間違っているわけでもない。
標準的なやりかたなどはなく、いつもケースバイケースとのこと。ケーススタディなど具体的な話も聞けて、非常に興味深いセッションだった。