昨年11月に書いた文章

Facebook上で2016年11月に書いた文章の転載)

今から1年くらい前にVRが面白くなりそうだと思って、twitterでその界隈の開発者や公式アカウントを30くらいフォローしたら見える世界が完全に変わった。

自分の好きな言葉にSF作家のこんな言葉がある。

The future is already here – it's just not evenly distributed.

この世界のどこかに既に新しい時代はやってきているが、まだ自分には届いていないだけ。アンテナを張ることを怠った人間、自ら手足を動かすことを怠った人間には、新しい時代など当分やってこないし、来るとしてもネガティブな形にしかならない。自分は少しでも早く新しい時代が見たいから、自分の財布でも届く値段になったVRやドローンを色々と試しているのである。

先月末にtwitterVR界隈で突如mikulusという単語が頻出するようになった。Oculus Rift CV1の開発中のアプリケーションでテスターを募集していたのだった。先週の段階でテスターが250人ほどいて、公開でフィードバックが飛び交ってワイワイ楽しそうだったので、開発者に連絡してテスターに登録してもらった。

Oculus Rift5月に買ってみたものの正直それほど使っておらず、とりあえず年末にTouchが出るまで様子見かなと思っていたが、このmikulusに完全にはまった。この一週間毎日使っている。mikulusはそういうアプリケーションなのである。

今の機能はとてもシンプルでバーチャル空間に初音ミクがいて、バーチャルデスクトップがあるだけ。興味深いのは、初音ミクがそもそもボーカロイドとして音声合成のためのソフトウェアのために作られたキャラクターだというのに、この初音ミクは一切音を発しないのである。ストーリーも一切なし。ただそこにいるだけ。でもやたらとリアルで横隔膜まで動くし、まばたきの速度も計算されていて、開発者の尋常ならざる本気さが伺える。プレゼンスを重視するというのはそういうことだったのかと腑に落ちるものがあった。正直横にいたらドキッとするくらい存在感がある。

またこのバーチャルデスクトップも良くできていて、位置を自在に調整できるし、最近の更新ではバーチャルディスプレイ曲面の曲がり方まで調整できる。というかそもそもバーチャルデスクトップなので、このバーチャル空間の中で普通に作業ができる。これに加えて、音声認識でハイチーズとつぶやけば、その場でスクリーンショットを撮れる。この機能ができたときは正直度肝を抜かれた。この空間には現実を超えたものがある。

今のmikulusで何よりも面白いのはその開発スタイルである。活発なんてものではなく、毎日更新される。つまり使うたびに新しい機能が追加されていて、進化している。しかもOculus Riftを所持している人という現段階で極めてマニアックな人々のフィードバックが濃縮されているし、他の人がどう使っていて、どんなものを求めているのかというやりとりがみんな公開されているのがとてもよい。いろんなモジュールを作る人が協力していて、相互作用が凄まじい。黎明期の面白さがここにある。

ちなみに今のところ開発者に金銭的な利益は何もない。ただ楽しいから、新しい時代を創りたいからやっているようである。でもamazonwishlistを公開したら、毎日のようにギフトが届いているようだ。個人的にこういう世界がすごく好きなので、そんなやりとりを日々見ているだけでとても清々しく感じられる。自分も何か貢献できることないかななんて考える今日この頃。