第7回ニコ技深圳観察会に参加してきた(概要)

シンガポール在住の高須さんとtwitter上のGOROmanさんには、このところ多大なる影響を受けてきた。高須さんに会わなければ成都に行ってないし、シンガポールメイカーフェアにも出展していない。GOROmanさんのtweetを見ていなければRicho Theta S360度動画に興味を持っておらず、VRにも関心を持たなかったと思う。そんな2人があの深圳に行くと知り、これはどう考えても面白いので参加するしかないなと思い、一週間休んで航空券を取った。2年ぶりの深圳である。

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前回はMaker Faire Shenzhenの後の1日だけだったが、今回はみっちり3日間のバスツアー。30名近い参加者とともにAccerelator, スタートアップ、工場などを回った。これについてはあとで一つ一つ丁寧に書く予定。とにかくずっと楽しかったし、ずっと何かしら高揚した気持ちだった。誰もが何かしら思うところがあって自発的に参加しており、食事の際の話もとても面白かった。

今回で7回目となるこのツアーから派生してできた本「メイカーズのエコシステム」について、高須さんはよく、みんなで書いた本なのに自分の名前で出てしまって申し訳ないみたいなことを言う。きっとこのツアーについても、誰よりも時間を書けて自らあらゆる手配をして声がかれるほど頑張っていたのに、みんなでつくりあげたツアーというのだろう。それが高須さんの所属するチームラボのカルチャーなのかもしれないが、高須さんはそんな人だと理解している。

深圳という土地と高須さんのいつも何かを期待させる力に引き寄せられた30名近い今回のチームはなかなか濃く、一癖ある人々が集まり、新しいもの・見慣れぬものに興奮し、子供のようにはしゃぎまわっていた。他の人が何を面白がるのかというのはとても興味深く、それによって深圳の様々な面を見ることができる。wechat paymentの活用例やVRの現状、小米之家など、参加者の関心によって視野を広げることができる。想像していなかった視点に気付かされることも多い。

自分について言えば、2年前に初中国で深圳に来たとき、中国自体に対して多かれ少なかれあった偏見は消滅した。そして電気街の圧倒的なスケールと人々の勢いを目の当たりにして、製造業の都としての深圳の認識を新たにした。昨年2度目の中国で四川省成都に来たとき、街中にあふれるAlipayWechat paymentQRコードを目の当たりにして、個人決済最先端の中国を実感した。そして、今回3度目の中国、2度目の深圳を訪れ、ここがライフスタイルや価値観を大きく変える場所であると強く感じた。技術の力で社会の問題を解決し、技術の力で倫理の問題をも解決する事例がここでたくさん見られるようになる気がした。

技術の力で倫理の問題を解決する具体例を挙げると、Amazon Goみたいなものと考えるとわかりやすいかもしれない。万引きという概念をなくして、レジなんてものはなくてよかったんだと既存の概念を気持ちよく壊してくれる。セキュリティの隙間を突いて何かしら悪いことはできるかもしれないけれども、基本的に万引犯罪という社会の問題が技術的に解決されることになる。深圳からはそんなAmazon Goのような倫理の問題を解決するサービスが、勢いある人々と最先端の個人決済手段によって次から次へと出てくるような気がした。

深圳で見たofoというどこにでも停められるレンタサイクルサービスは、安価な自転車の盗難を消滅させるかもしれない。転売目的の高価な自転車の盗難と違って、安価な自転車の盗難は倫理観のない人間による一時的な移動手段の確保に過ぎないように思う。逆に言えば、一時的な移動手段の確保が手間なく安価で手に入るのであれば、犯罪に手を染める必要は全然ない。身の回りの至る所に少額で利用可能な自転車があって、どこで借りてもどこで返しても良いのであれば、自転車の盗難という概念がなくなる。

また、どこにでも返却できるモバイルバッテリサービスをみて、盗電だのマナー違反だの言うくだらない話が消滅する気がした。電源が足りなくなったので出先で充電したいという欲求を満たすサービスにより誰もがハッピーになれる。インフラとしてのwechat paymentという個人決済手段と十分な数のバッテリを市場に投入できるほどハードウェアが安価になったこと、そして熱心に働きビジネスチャンスを伺う人々により完成されたシステムなんだと思う。とにかくなんでも早く進むこの地では試行錯誤の回数も圧倒的に多く、そこでうまくいったものが生き残っているのだろうなと感じた。

街中で新しいサービス、新しいものを見るだけでなく、急成長するスタートアップやそれを支援する人々、慢心しない貪欲な大企業、貪欲に新しい試みを続ける工場などを見学することにより、目先の新しさではなく本質的なこの地の強さを日々実感した。急激な変化を続けるので、最低でも年に一回は来ないといけない場所だと思った。そして、日頃から深圳スピードまで自分を加速させて決断・行動しないとどんどん差をつけられると痛感した。自分にとって深圳とは、そんなとにかくやる気が溢れてくる場所なのである。

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