非公開にするという選択肢

IKEAの記事を読んでいて2006年の記事を思い出したので、読み返しながら比較してみた。この5年間で店舗数が235から284に増えている。ロシアのサンクトペテルブルグ店で電力供給を確保するために賄賂を贈ったとして、ロシアの2人の重役を首にしたのは2年前の出来事か。グリーンでクリーンなイメージを打ち出そうとしているけれども、経営に関しては相変わらず不透明なまま。1月にスウェーデンのドキュメンタリー番組が明らかにしたことによると、インターIKEAホールディングとカンプラード一族の間にInterogoというリヒテンシュタインの財団が噛んでいるとのこと。カンプラード氏は税金を節約するのは当然じゃないかと語るが、2009年にCEO職を引き継いだOhlsson氏は鎮火に必死で、財務状況を公開することで不透明だという批判をかわそうとしている。昨年初めて売り上げ、利益、資産、負債が公開された。Ohlsson氏は、非上場企業だから四半期の目標にとらわれずに長期的な成長に集中することができるともいっている。
別にIKEAは違法なことをしているわけではないし、ちゃんと利益を上げている。単に不透明なだけだ。他に非公開になっているものに何があるかと考えて思い出したのは、以前授業でやった裁判外紛争解決(ADR:Alternative Dispute Resolution)である。シンガポールにはシンガポール調停センター(Singapore Mediation Center)やシンガポール国際仲裁センター(Singapore International Arbitration Center)があり、そこで裁判所を利用せずに紛争を解決している。Arbitrationの方はほとんど裁判と同じで、その後の執行も規定する法律があるからとりっぱぐれることもない。一方Mediationの方は、両者の溝がそれほど深くないケースに利用され、和解を促すものである。裁判をするのはお金がかかりすぎるから、Mediationを利用するというケースはあるけれどもArbitrationには当てはまらない。仲裁する人(引退した裁判官や弁護士など)を1時間いくらで雇わないといけないので、通常の裁判よりも高いくらいだ。そこで守られるのは秘密なんだろう。裁判は全て公開されてしまうけれども、Arbitrationを使えばその争いがあったこと自体を秘密にできる。裁判でイメージダウンしてものが売れなくなるのを防ぎたいのかもしれないし、非公開の技術に関する争いなのかもしれない。裁判というおおごとにしたくないだけかもしれない。
公開になっているものに目を向けがちであるけれども、その背後にある非公開なものの存在を想像してもいいと思った。