答え合わせとアーカイブ
長年気になっていたキトラ古墳と高松塚古墳に行ってきた。教科書やニュースで見ていたものを、現地で見ることの楽しさは何物にも変え難いものがある。こういう答え合わせをやりたいから旅をしていると言っても過言ではない。別に何かすごいものである必要はなくて、現地で情報が付加されて解像度が上がるだけで十分楽しい。旅先で美味しいお酒を飲んだり、現地の食べ物を食べたりするのも好きだけど、それは二の次で、「名前だけ聞いたことあるアレ」を「現地で見たことあるアレ」にしていくプロセスをこれまでずっとやってきたし、今後もずっとやっていくのだろう。
まさに教科書で見たアレである(レプリカだけど)。
キトラ古墳の方は外に乾拓板があった。乾拓ってあんまり聞き慣れなかったけど、要は魚拓みたいなやつだなと理解した。
最も興味深かったのは、いかにして壁画を残すのかというところ。
20年前にフランスのラスコーの壁画を見に行ったとき、実際に入ったのは隣に作られたラスコーIIというレプリカだった。実際の壁画のところに人間が入ると、光も入るし湿気もあるだろうし保存環境としてよくないということだろう。
ここでもまずはファイバースコープとかを使って、壁画をなるべく元の状態に近い状態で維持することを優先している。しかし、高松塚古墳の方は地震で石室に多少隙間ができて、ムカデが入り込んで、その死骸からカビが繁殖するような状態になっていたらしい。そこで一旦石室を解体し、壁画を剥がして別の場所で3Dパズルのように組み立てて、クリーニングして保存するというアプローチになったそうである。
人の手が入らないことでうまく保存されるものもあれば、人の手が入ることにより保存されるものもある。長期的な視点で未来に物を残していくアーカイブについて理解を深められてよかった。自分が時を経て答え合わせができるのも、こうやってちゃんと残しておいてくれる人がいるおかげである。