サイエンスは好きだが、どちらかといえばテクノロジーの方が好きで、天体にはそれほど興味はない。星はペルーやキナバル山に行ったときに見上げた夜空がびっくりするくらい綺麗だったのは印象的だけど、普段は流星群を見ようと思ったりはしない。
しかし、日蝕は少し違う。自分が生まれた日に日蝕があり、それにちなんで自分の名前がつけられたと言われたら、死ぬ前にたった一度だけでいいから皆既日蝕を見てみたいと感じてもそれほど不思議ではないだろう。そのため日蝕というのは、自分にとってある種の特別な存在だった。
それからもう一つ。この曲を初めて聞いたのは、まだ小学生のときだった。
このピチカートファイヴの皆既日食という曲のゆったりしたメロディーと歌詞の作り出す独特な世界観がとても気になっていた。
そういえば数年前に日本の硫黄島でも観測できたようだ。
2009年7月22日皆既日食生中継 硫黄島から Total Solar Eclipse on Iwo Jima Live!
わりと単純な性格なので、この映像を見てまた体験したいと思うようになった。
そしてそんな機会がやってくる。3月9日の朝に。
シンガポールでも大きく太陽が欠けるが部分日食なので、皆既日食を見ようと思ったらインドネシアに行く必要がある。スマトラ島のパレンバン、カリマンタン島のバリクパパン、スラウェシ島のパルが今回の主な皆既日食スポットだ。その他船から見ようという企画もある。今回おそらく一番盛り上がることになるのは、お祭りが企画されているパルだろう。
Eclipse Festival 2016 | Sulawesi Indonesia - Eclipse Festival 2016
単純に考えて、普段ほとんど観光客が来ないところで太陽が隠れるからということで人がたくさん行くと、宿や飛行機は一気になくなる。最初にパルの宿を探したがただでさえ少ない宿が完全に埋まっていた。
石油産業で栄えていて大きな国際空港があり出張者用のホテルも多いバリクパパンだとすんなり予約が取れたので8日から2泊3日でバリクパパンに行くことにした。運がなくて曇ったり雨が降ったりしたら、また次を考えればいいということで気楽に。
行くなら全天球動画を撮りたいと思って準備を進めている。とりあえずリコーのTheta Sは使うだろう。このカメラは使い勝手がよく、いい画質の写真が撮れるので気に入っているが、動画の画質に不満が残る。この値段で買えるものにそんな不満を言ってもしかたないのだが。そのためタイムラプス要員として考えている。
動画はXiaomiのYiというアクションカメラを6台使って、ThingiverseにあったSTLファイルデータを使って3Dプリンタで作ったリグでくっつけて6台6方向同時に撮影し、後で動画を編集して全天球動画を作る予定だ。
カメラだけでなく自分で観察することも考えてビューアも買ってみた。
動画がうまく取れて、BGMにピチカートファイヴの皆既日食を流して、4月に入手するOculus Riftでその日食をもう一度体験できるようになれば楽しいだろうなと妄想している。自分の中から溢れ出てきたよくわからないエネルギーに突き動かされてみるのも悪くない。