数学ガール

わかりやすくすると浅くなり、深く掘り下げると難解で取っつきにくくなる。
概して何かを学ぶときは、そういう傾向にあるような気がする。
しかしながら、これは難解な事柄をわくわく読み進められる稀有な本だった。

数学ガール
数学ガール結城 浩

おすすめ平均
stars本書の主人公が数学を学ぶ心構えは実にイイッ!
starswのワルツ
stars読者の努力をまちたいと思う
stars数学を勉強したくなる一冊
stars紙とペンを用意して

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きみには、ωのワルツが見えているかな?

ミルカさんかっこよすぎる。

もしきみがそう思うんだったら、これからきっちりやればいい。過去はもう過ぎた。きみは現在に生きている。いま気づいたことを、未来に生かせばいい

ありきたりかもしれないけど、こういうのもけっこう好き。

数式の背後には歴史がある。数式を読むとき、僕たちは無数の数学者の仕事と格闘しているんだ。理解するのに時間がかかるのは当然だ。一つの式展開のあいだに、僕たちは何百年もの時を駆け抜ける。数式に向かうとき、僕たちは誰でも小さな数学者だ。

歴史を辿ることができるのは、非常にありがたいことだと思う。
先人の知恵を借り、巨人の肩の上に登って、ほんの少し遠くに行くことができる。
先人と同じプロセスを辿ることで、思考を追体験し、そして自分の思考に取り入れるわけだ。
なんといっても圧巻だったのは、バーゼル問題。

「あ、ああああああああっ!」
テトラちゃんが大きな声を上げる。だから、ここは図書室だというのに。でも叫びたくなる気持ちはよくわかる。
「解けてる。解けてるっ!バーゼル問題が解けてますよっ!」
テトラちゃんはミルカさんを見て、それから僕を見る。
ミルカさんは頷いて、詠唱するように言う。
「解けた。バーゼル問題が解けた。18世紀の数学者を悩ませた難問、バーゼル問題が解けた。なんて楽しい解き方だろう」

思いがけないルートからのエレガントな解法に、正直ふるえが止まらなかった。
絡まった糸がほどけていくような、あざやかな解法。数学ってそういえばそうだった。


数列とその母関数を使って、フィボナッチ数列の一般項を求めていると
自分が高校生だった頃のことを思い出した。数学が楽しかったあの頃のこと。
sinxのテイラー展開をグラフにしたら、少しずつsinxに近づいていく。
忘れていた何か大切なこと思い出させてくれたような気がする。
大学の頃には数学を道具としてしか使わなかったし、工学系の勉強とかビジネス書を読むとか
いわゆる「役に立つ」ことばかりしてた気がする。それはそれでいいんだけど、
世の中には「役に立つ」かどうかに関わらず、素晴らしいことがたくさんある。
そういう当たり前のことを思い出させてくれた人々に感謝したいと思う。