新入社員向け:年末年始に読めるおすすめ本

この記事が楽しそうだったのでまねをしてみることにする。対象は、理学部とか工学部とかで研究してたのに何かを間違えて知的財産なんてところに流れ着いてしまった人。うちの部門には長らく新入社員なんていないので完全に妄想だが、そんなことを気にしてはいけない。とりあえず四冊選んでみた。

一冊目:日本語の作文技術

日本語の作文技術 (朝日文庫) (文庫)
4022608080
これまでまともに日本語を読んだり書いたりしてない人には、定番だけどこの本がいい。読みやすい文章、誤解を招かない文章を書くために、読点をどう打つか、修飾語の順序をどうするかといったことをわかりやすく解説している本である。政治的にちょっとアレなことを書いているが、それを無視すれば非常に良い日本語の参考書になると思う。
以前書いた感想:http://d.hatena.ne.jp/pho/20060506/1146874956

二冊目:理系のための法学入門―知的財産法を理解するために

理系のための法学入門―知的財産法を理解するために (単行本)
4587034371
法学部の人には当たり前の言い回しかもしれないけど、初めて接するとけっこう戸惑う表現が少なくない。その辺りの意味の違いがわかりやすく解説されているのがこの本。ある人には当たり前だけど、他の人には当たり前じゃないというケースは案外多く、そのギャップを意識することが大切だなとあんまり関係ないけど思った。理解の溝を埋めるツールとしてきっと役に立つ一冊。

三冊目:フリーソフトウェアと自由な社会

フリーソフトウェアと自由な社会 ―Richard M. Stallmanエッセイ集 (単行本)
4756142818
何かの間違いで知的財産なんてものと深く関わることになってしまったら、この本を読んでGNUについて知っておいてもよいと思う。会社でやっていることと正反対の思想が書かれているからといって戸惑ってしまうほど素直な人っているのかな。まあオープンという思想について考える上で外せない本だと思う。
以前書いた感想:http://d.hatena.ne.jp/pho/20080413/1208065589

四冊目:オープンビジネスモデル 知財競争時代のイノベーション

オープンビジネスモデル 知財競争時代のイノベーション (Harvard Business School Press) (ハードカバー)
4798115010
権利を振りかざして、これは俺のもんだと主張する時代は徐々に終わりつつある。他の企業、他の組織と協力することが大切になってくるわけだが、この本にはその例がいろいろ書いてある。単に協力するといっても、技術を盗まれてしまったーとかいうことがあるわけで、いろいろ工夫が必要なのである。ここで紹介されている豊富な具体例を眺めて、openとclosedの境界線を考えてみるといいかもしれない。
以前書いた感想その1:http://d.hatena.ne.jp/pho/20080119/1200756340
以前書いた感想その2:http://d.hatena.ne.jp/pho/20080120/1200823565

じゃあお前はどうなんだよ

他人に宿題出しといてお前だけぬくぬくとすごそう、っていうのはちょっと虫がよすぎないかい?とツッコまれてないけど、自分にも宿題を出しておこう。
Burning the Ships: Intellectual Property and the Transformation of Microsoft (ハードカバー)
0470432152
この本をkindleで半分くらいまで読んだけど、これを最後まで読もう。
IBM知財部門に28年いて、ルイ・ガースナーに年間20億ドル稼いでやるから邪魔するんじゃねえと言って、実際にそれだけ稼いだ人が著者。その後マイクロソフトから「お金は別にいいから、マイクロソフトの知的財産戦略を大幅に変えてくれ」と依頼されて、マイクロソフト知財のトップとなった。マイクロソフトが、ガチガチに権利を守る方針から、他社と協力していく方針に変わっていく過程が詳細に描かれていて非常に面白い。特許ポートフォリオがあまり強くないのに、がんばって東芝とのクロスライセンスにこぎつける場面、ベンチャーキャピタリストを介して、シリコンバレーとの良好な関係を築き挙げていくプロセスなどなど、読んでいて非常に楽しい。オープンイノベーションという言葉は、いろいろなところで耳にするが、大切なのはこういう具体的なアクションなんだと思う。マイクロソフトに昔のイメージしかない人には特にお勧めの一冊。kindleなら読みたいときにすぐに手に入るので、そっちもお勧め。

まとめ

そんなわけで、日本語、法律に慣れるところから、オープンという思想、実践に関する本を紹介した。自己啓発本やハウツー本、薄っぺらい新書を何冊も読むより、この5冊を読んだ方が個人的に楽しいと思う。楽しいと思えない人はそういう人なので別にいいと思う。オープンにしても短期的に見て儲かるわけではないのだが、(特に根拠はないけど)今後その方向が大切になってくるだろうし、総合的に長期的に見ればプラスになる面は少なくないと思っている。そういうわけで説得力のある数字を出したり、論理を考えたり、結果を出したりすることが、ますます必要になるだろう。情報をうまく活用して、オープンとクローズドの間の落としどころを見極めながら、次のアクションに移ろう。