知的独占 40ページまで

数カ所で紹介されているのを見かけて面白そうだったのでダウンロードした。
http://www.nttpub.co.jp/pr/pdf_dl/
iPadに入れて非常にスムーズに読めた。注釈をクリックしてポップアップで表示してくれたりするともっとうれしかったが、さすがにそういう仕組みはなかった。でも制限なしのPDFで読めるのはありがたい。
この本では、主要な知的財産権である特許権、商標権、著作権のうち、商標権の価値は認めるけど、特許権と著作権はない方がいいんじゃないかという主張がなされている。ワットの蒸気機関の特許を例にとって、特許がない方がイノベーションが進んだのではないかという問題提起をしている。それからソフトウェアを例に挙げ、redhat linuxソースコードを独占しなくても発展しているではないかと主張したり、「9/11委員会報告書」が無料でダウンロードできるものなのに十分ペイしているではないかと主張したりしている。

イノベーターにはその取り組みに応じた対価が与えられるべきだという主張から、特許と著作権、つまり独占が報酬をもたらす最良かつ唯一の方法だという結論に飛びつくのは、あまりに飛躍が大きくて危険だ。

この部分には特に共感した。4年間patent creationの仕事をしながら、もっと他に方法があるんじゃないかとずっと思っていたのだから。サイエンスコモンズに関わっていることも、今こうしてIP managementを学びに留学していることも、独占と共有の間の落とし所を求めてやっているわけで、当然といえば当然かもしれない。ちなみにこの本は落とし所を求めてなくて、反独占である。
まだ最後まで読んでないけれど、ちょっと疑問に思ったことがいくつか。

  • ワットが特許を取得していなかったらワットの技術は公開されていなかったと思うが、車輪の再発明をしても(特許がある場合より)イノベーションが進んだと言えるのか

そもそも特許は発明を公開する代償として独占権を与えるものなので、特許がなければ非公開になるということも考えた方がよさそう。それに誰でも思いつくことに独占権を与えてしまったのであれば、特許制度が悪いのではなく特許の審査基準が緩すぎると言える。

日本のソフトウェア特許の審査基準には「ソフトウェアとハードウェア資源とが協働」という項目があり、極めて権利取得が困難になっている。基本的に工場の機械をソフトウェア制御するみたいなソフトウェアを対象としている感じ。なので違う国に適用するときは注意が必要。
ジェット族はjet setterの訳みたいだけど初めて見た。そんな単語があるらしい。不必要悪という言葉は、意味は通じるけど、非常に違和感があった。見慣れないだけでそういう言葉があるのかな。続きも読みたくなった。その感想はまたいずれ。
英語版(PDFで全文公開)
http://www.dklevine.com/general/intellectual/againstfinal.htm
日本語版(そろそろ発売)

〈反〉知的独占 ―特許と著作権の経済学

〈反〉知的独占 ―特許と著作権の経済学