泡のサイエンス

ジュンク堂池袋店に1万円札をもって買い出しに行ったときに
背表紙が気になって、中身も具体例豊富で楽しそうだから買った本。
「泡ほど謎に満ちて不思議なものはない。」という帯のコピーにあるように
これでもかと言うくらい、いろいろな泡を取り上げている本。紀伊國屋書店発行。

泡のサイエンス―シャボン玉から宇宙の泡へ
泡のサイエンス―シャボン玉から宇宙の泡へシドニー パーコウィツ Sidney Perkowitz はやし はじめ

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stars地表面の泡の面積は米国(1.6%)よりも広い!!
stars身近な泡から宇宙の泡まで分かりやすく解説

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雑多な印象は拭えず、「てにをは」に?な部分も多少あるが、面白かった。

  • シャボン玉、カプチーノ、発泡プラスチック、コルク、軽石、海の波頭の泡、量子の泡、泡宇宙、・・・どこまでいっても泡なのだ。
  • 現実の世界には、粘土、木、その他、結晶でない複雑な固体がおびただしく存在している。だが、最も複雑なのは固体、液体、気体が組み合わさったものだ。泡はまさにそのようなものである。
  • この特異な構造の解明にはじめて取り組んだのは、最初の泡科学者として抜きんでた19世紀のベルギーの物理学者ジョゼフ・アントワーヌ・フェルディナン・プラトーだった。プラトーが導き出した泡の幾何学的構造の法則は、今日でも通用する。
  1. 泡に稜ができるのは、3つの膜が出会ったときだけである。
  2. 3つの膜のうち、隣り合ったどの2つも、常に120度の角度で交わる
  3. 何本かの稜が一点で交わるのは、稜の数がちょうど4本(それ以上でも、以下でもない)の場合にかぎる。

という感じで、泡そのものについて理解を深めてくれる。

  • 泡ができるのは分子間に働く引力がつくりだす表面張力のおかげだ。
  • この力のため、水滴はピンと張られた弾力性のある皮膜に包まれているかのようだ。
  • 水滴の形を保つにはエネルギーが要り、表面積が大きいほど必要なエネルギーも大きくなる。だから最小化原理によって、表面張力は常に面積を最小にするように働く。液体の量が一定であるとき、その表面積が最小になるのは球形なので、表面張力は水滴を完全な球形に保とうとする。

なんとなくわかっていたけれども、こうしてまとめられるとすっきりする。
視点が切り替わると言うのはなかなか楽しいものである。
この性質を利用して、最小面積問題を解くというのが興味深い

  • いくつかの町を結ぶ道路網を建設するのだが、どの2つの町もつながっており、しかも必要な道路の長さを最も短くしたい。それにはどんな形にすればいいのか、という問題がそれだ。
  • 任意の位置に散らばった任意の数の町の場合には、答えを見いだすのは至難だ。

これをシャボン玉で解こうというのが面白い。

町の位置を示すミニチュアモデルに張られた石鹸の膜が自動的に正しいルートを指示しているのである。この本にはほかにも、たとえば立方体のすべての稜に触れていなければならないという複雑な三次元の制約のもとで、膜がどのようにして自然に最小面積をとるかを示す写真も載っている。

という感じで紹介されているこの本が非常に面白そう。googleブック検索便利だな。
The Science of Soap Films and Soap Bubbles
http://books.google.co.jp/books?id=Ep7nQUz7RPMC
緻密なロジックもいいけど、こういう「実験でできちゃいました」系の
結果オーライないい加減さも、わりと自分の性格に合ってるかもしれない。


こういうサイエンスな話ばかりではなく、パンやエスプレッソ、ホイップクリームの歴史とか
泡が果たす役割等が具体的に書かれている。なんかスフレを食べたくなってくる。
スポンジとかコルクとか発泡スチロールとか、泡はいろいろ役立ってるよー、という
話一つ一つが興味深いわけだが、やっぱりエアロゲルが面白い。(エーロゲルと訳されてるけど)

大部分が空気というこの風変わりな超軽量素材は、1000度もの熱に耐え、負荷が均等に分散された場合は、自重の何倍もの重さを十分に支えられる強度があるという。

驚異の素材『エアロゲル』、その用途は? « WIRED.jp

去年科学未来館の企画展で見てきたけど、面白い素材である。
98%以上が空気であり、防音性に優れ、熱を遮断し、
人間ほどの大きさで、0.5トンの重さを支えることができる。
知れば知るほど知らないことが増えて楽しい。