すばらしい数学者たち

読書感想文1つ目。24人の数学者の説明が簡潔にまとまっているこの本が面白かった。

すばらしい数学者たち 改版 (新潮文庫 や 10-3)
矢野 健太郎
新潮社
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著者は、数学の参考書でもよく知られている矢野健太郎氏。

「卓越した数学者であるとともにすぐれた教育者」

矢野健太郎 (数学者) - Wikipedia

というのも納得のわかりやすさだった。先人の偉業の概略が文庫でさらっとわかる。「棒きれ一本でピラミッドの高さを測る」とか、「山の両側の二つの地点間の距離を測る」とか、ターレスの頃の数学は、具体的な問題解決の手段だったんだな、と改めて知る。
あと、アルキメデスのところで円周率が取り上げられていて、当たり前のことに気づかされた。l(円周の長さ)=2πr(半径)という公式が与えられて、半径がわかれば、その円周の長さもわかるよ、という感じの理解だったけど、それってけっこう飛躍がある気がしたのである。
そもそも半径の長さの異なる円がたくさんあって、これらの円を見ていた人が、もしかしてこれらの円の円周の長さと直径の長さの比ってどの円でも同じじゃないか?って思って、どうやらそうらしい、その比をπとしようかって話だと思う。そういう前提があって初めて、半径の長さから円周の長さを導出できますよってことかと。当たり前のことだけど、いきなり公式を見てもなんでなんでって思うわけで、歴史的背景を考えてみるのは大事だと思った。
メナイクモス、アポロニュウスのところで出てきた円錐曲線も興味深かった。楕円(elipse)、放物線(parabola)、双曲線(hyperbola)って円錐の切り口だったのか。メナイクモスが、2つの放物線の交点を用いて、立方体の体積を二倍にする問題(2の三重根を求める問題)を解いているのだが、非常にエレガントだった。

Using this information it was now possible to find a solution to the problem of the duplication of the cube by solving for the points at which two parabolas intersect, a solution equivalent to solving a cubic equation

Menaechmus - Wikipedia, the free encyclopedia

あと昨日も書いたけど、パスカルの定理が変態的。そこに円を持ってくるなんて思いつかない。アーベル、ガロア、カントル、ヒルベルトも面白そうだが、手に負えそうにないので今回は概要だけにしておく。今後別の本で知識を深めていきながら、楽しませてもらうつもり。
最後にユークリッドの言葉で締めくくろう。

「先生、こんな面倒なことを習って一体どんな得があるのでしょうか」
・・・
ユークリッドは、これには答えないで、下男をよんで次のように言ったということです。
「この男にお金をおやり、この男は、学問をしたら何か現実的に得をしなければならないと思っているようだから」

好きだから、やりたいからやっているのである。それでいいじゃないか。