GFIP2013 初日 (知的財産市場懐疑論)

ビジネストラック1

特許の買い手はどこにいるの?というセッション。インビジブル・エッジという本の著者が来ており、この本の原書をもらった。

インビジブル・エッジ
マーク・ブラキシル ラルフ・エッカート
文藝春秋
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AssetがPropertyになってCapitalになっていくプロセスのなかでIPはどこにあるんだろうみたいな話をしていた。それからReverse Engineeringを専門に行う会社も紹介されていた。もう一つ面白いと思ったのは、この人がシカゴで始まったIPXIには懐疑的だと明言していたところ。耳障りのいいことばかり言ってるけど、実際のとこどうなのときちんと水を差していてとてもいいと思った。シンガポール政府としては、とにかく香港との争いに勝って、IP hubになって、シカゴでやってる市場のアジア版をシンガポールに持ってきて、いい事尽くめみたいなプランを描いているみたいだけど、物事そんなに簡単じゃないでしょうにと明言する人がいるのはとても健全なことだと思う。
続いて話した人は、シンガポールの政府系研究機関A-starのなかのライセンシング部隊(その名もExploit Technologies)の偉い人。出願した特許をきちんと活用しているということがよくわかった。成功例として2つの会社を挙げていた。
http://www.histoindex.comhttp://www.nanoveu.com/
ここで興味深いと思ったのは、特許のライセンスというよりも技術ライセンスという形で提供しているということ。特許単体で売られても買った方が困ってしまうわけで、ノウハウであるとか実験データであるとかそういうものをセットで買った側がきちんとビジネスにつなげられるようにしていかないと誰も買ってくれないよという至極真っ当な話。特許単体で価値を持つとしたらそれは訴訟以外にありえず、技術をマーケットに持って行くのだとすれば、特許周辺のコンテキストも不可欠なんだいうことがよくわかった。
このセッションで最後に出てきた人は、Edison in the Boardroomの著者。もう出てから10年くらい経つのか。
役員室にエジソンがいたら-知的財産で勝つ経営戦略
一柳良雄 ジュリー・L.デービス スーザン・S.ハリソン
かんき出版
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特許の売り手にフォーカスすることが多いけれども、実際に買う人は誰なのかということに今回はフォーカスしてみたとのこと。特許を買う人のために買い方を教えるBuyer Bootcampなんてものがあるんだと初めって知った。あと買い手を考えるとき、この特許は誰にとって最も価値があるのかを考えるのが重要。当たり前のことだけどなんか忘れられてそう。使う人よりも転売屋さんや訴訟屋さんの方が高く買ってくれるわけで、経済合理性を考えるとまあそっちに流れるんだろうなあと思ったりした。
どのへんからパネルディスカッションになったか忘れたが、そのなかで2つのIPシステムという話が興味深かった。大会社が絡んで巨額のお金が動くIPの世界と、情熱、夢、希望のあふれる中小企業のIPの世界。アメリカのIPの世界と、その他の国のIPの世界とも言える。さらにいうとIPのマーケットとtechnologyマーケットは別物だし、そもそも今あるIPマーケットは市場と呼べるものなのか、spot marketじゃないかという指摘もあり、時期尚早感が漂うセッションだった。
いろんな立場からの率直な意見がまとめて聞ける機会というのはよいものだ。